アンフェア

NADIA 川上

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オークション

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  ふわぁ~~~~ …………。(=o=;)
  ――くそっ、だりぃ、ねみぃ……
  やっぱ三十路越えて2連チャンの徹夜は
  かなりしんどい……。

  羽柴は、もう上下の瞼がすぐくっついてしまう位の
  猛烈な睡魔と戦い欠伸を必死に噛み殺して、
  手にしている紙コップの冷め切ったブラックコーヒーを
  一気飲みした。

  親父の代理でイヤイヤ来たが、
  やはり生理的にどうしても受け付けない物事には
  まるで興味を惹かれない。

    
  ここは、旧市街地・豊島区の外れに位置する
  市民ホール。

  関西へその本拠を構える組織の中では、
  比較的最近起ち上がった指定暴力団・河本組が
  財源(シノギ)のひとつとして不定期ではあるが
  大体月2のペースで開催している競売会場だ。
    
  扱われている商品は骨董品系のアンティークと
  美術系の絵画がほとんどだが、
  基本的に換金価値のある物(つまり金目の物)
  なら何でも売買が可能だ。


  本日の締めの商品としてステージ上へ現れた
  ソレを見た途端、
  場内の顧客(バイヤー)達が大きくどよめいた。

  それまで前の座席の背もたれへ足を投げ出して
  座っていた羽柴も椅子から滑り落ちんばかりの
  勢いで座り直し。
  ステージの方へ身を乗り出して出品されたソレを
  食い入るようにじっと見つめた。
  そして、隣に座るべっ甲ぶちのメガネをかけた男・
  八木へ。


「由伸、なるべく早く集められるだけ金かき集めろ」


  いきなりそう言われた八木は驚きと戸惑いを
  隠せない。


「はっ?? そう言われましても、若――」

「今出てるヤツ、何がなんでも競り落としたい」


  さて、羽柴にそうまで熱く語らせた、
  ステージ中央、スポットライトに照らされている、
  注目の的は――。
    
  全裸の体へ犬みたいに首輪だけを付けられた恰好の
  実桜だった。

  もう、散々泣いたであろう目は充血しまくりだが、
  その涙で潤んだ瞳も、
  薄っすら紅色に上気している顔と体も。
  何とも言えず艶っぽい。
  前の座席の背もたれをギュッと鷲掴みにして、
  歯ぎしりせんばかりの悔しがりようの羽柴。


「なんぞクスリ盛られたか……」


  司会進行役の男が商品の説明を始めた。


「――さて、こちらの商品が本日最後の逸品と
 なります。年令は15才と多少高めでは御座います
 がご覧下さい ―― パールホワイトのキメ細かい
 艶肌、この容貌、そして ―― 」


  実桜をこのステージ上へ連れてきた黒服男と、
  司会進行役が実桜の両脇へ立ち。
  客席へずらっと居並ぶバイヤー達へ良く見えるよう
  実桜の足を掴み、思い切り両側へ開いた。
  「イヤ――っ!」とか細い声の実桜の抵抗は、
  再び起こった場内のどよめきでかき消された。
  クスリで体の自由が奪われている実桜の醜態は、
  ビデオカメラで捉えられステージ両側の
  巨大スクリーンへ映し出される。


「くっそ、えげつねぇ真似しくさって……由伸、
 金はどうや??」


  隣の八木は携帯電話で誰かとの通話を終えて。


「は。とりあえず2億、こちらへ向かってます」

「よっしゃー、しかし、それで足りればええけどな」

   
  進行役が前説を続ける。


「――前(フロント)も後ろ(バック)も正真正銘の処女で
 御座います」


  (嘘こけ。ま、確かに締まりはごっついい塩梅
   やったが)


「―― では、こちらの商品5千万からどうぞ」


  その声に次いでバイヤー達から様々な声が飛ぶ。

  『5300』 『5600』 『6000』 
  『7000』

  次々に高値が更新されていく。

  羽柴はその金額がある程度の天井を突くまで
  辛抱強く待って、ソレ以上の高値で一気に
  競り落とす考えだった。


  ”待ってろよ、マイハニー、必ずこのオレが
   助けてやる”


  『―― 1億』

  一気に跳ね上がった更新額に皆がざわめく。


「ご静粛に――ご静粛に願います!
 さぁ、1億というお声がかかりました。
 他のお声は御座いませんか?――」


  1億という高値をつけた和装の親父は、
  もう自分が競り落としたものと思い込み
  満足気な笑みを浮かべふんぞり返っている。


「――御座いませんか? ないようでしたら
 こちらの商品1億にて――」

 
  満を持してという感じで、羽柴が金額を更新する。


「1億4千万」

  
  先ほどにも増してどよめく会場内。

  ふんぞり返っていた親父は羽柴の方を振り向いて、
  憎々し気に睨みつけた。

  この競売は羽柴がつけた1億4千万と言う金額で
  更新ストップと思いきや!


「―― 1億6千」


  という声が、羽柴の座っている反対端の席から
  飛んだ。
  その声に眉をひそめ声の主を見る。
  その妖艶な美丈夫は羽柴に向かってニッコリ微笑み
  会釈した。


「ん~? あんまし見ねぇ顔だな……知ってるか?
 由伸」

「いえ、あいにく存じません」

「だよな―― 風俗業者には見えねぇし、一体
 どこのどいつだ……?」


  結局実桜は、その後も更新記録を次々に塗り替え
  2億という最高値で社会福祉法人”聡明会”とか
  いうNGO団体へ落札された。

 
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