アンフェア

NADIA 川上

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自宅マンションにて

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  自宅マンションの地下駐車場につくと、
  控えていた舎弟達が順番に頭を下げるが、
  しかしその腕に抱かれている人物がいる事に
  驚きをかくせないようで、みな固まっている。

  柊二はさして気にした様子もなく、
  地下駐車場から最上階までの直通のエレベーターに
  乗り込む、その間も実桜を抱き上げたままだ。
  実桜は? というと安心しきった様に柊二の
  胸の中で眠っている。


「社長、お疲れ様です」
「お疲れ様です」


  戸室玄関前に先回りし控えていた若頭補佐の
  佐竹と陣内がドアを開け、その腕に抱かれている
  実桜の姿に驚く。


「日向のじーさんは?」

「あ、はい、若頭の指示でもう来られています」

「そうか、じゃぁ寝室まで呼んでくれ」


  そう言うと、実桜を抱いたまま柊二は寝室へと
  向かう。
  これには若頭補佐の2人も再び驚く。
  寝室にその子供を入れるというのだ、
  今までの柊二からは考えられない行動なのだ。
  余りの衝撃に一瞬動きが止まるが、
  柊二のする事に逆らう理由もなく、指示に従う。

  柊二は寝室のドアを開けさせると中に入り込み、
  大きなキングサイズのベッドに実桜をそうっと
  下ろした。
  真夏と言えどその躰は夜露で冷え切っており
  冷たい。
  しかも傷を負っている為か表情が苦しそうに
  見える。


「まったく……こんな夜中に年寄りを呼び出すなんぞ、
 お前も偉くなったのう」

「四の五の言わずに早う仕事せい」


  入口のドアから黒い鞄をさげて、
  眼鏡をかけた老人が入ってくる。
  彼は日向医院という煌竜会が懇意にしている
  病院の医院長で柊二も子供の頃から何度も
  世話になっているのだ。


「ん? この子か? まだおぼこじゃの……」

「あぁ、いきなり車の目に飛び出してきてな、
 怪我をしたようだ」

「ふうむ……診察するから、お前は外に出てろ」


  日向のじーさんはギロリと柊二を睨むと
  部屋から追い出す。
  柊二がリビングに向かうとそれに気付いた
  八木が近寄ってくる。


「あの子供、調べますか?」
「あぁ、そうだな……例の件と合わせて調べろ」
「分かりました、では、佐竹と陣内にすぐ調べ
 させます」


  補佐達は若頭の言葉を受けマンションを後にする。
  八木は実桜の状態が判明するまでマンションに
  残った。



  柊二はリビングで火照った躰を冷やすように、
  冷えたビールをグビグビ飲んでいると、
  寝室へ様子をうかがいに行っていた八木が
  戻ってきた。


「社長、日向先生がお呼びです」

「あぁ」


  柊二は寝室へ向かい部屋に入ると、
  穏やかな顔でベットで眠る実桜をまず確認。
  腕や足に巻かれた包帯が痛々しいが、
  点滴を受け眠るその顔は落ち着いているようだ。


「おい、じーさん彼女の状態は?」

「ふんっ、まず車にぶつかった所だが、幸いにも骨折は
 してない。打ち身だけじゃ、ぶつかった時に
 傷が出来たようで出血していたようだがさしたる
 問題はない。後はかすり傷程度じゃ、しかし……」


  じーさんが途端に渋い顔になる。


「なんだ?」

「この嬢ちゃん恐らくだが、ずっと虐待を受けてきた
 可能性が高い。躰中に古い傷や新しいものまである。
 満足に食事も与えてもらってないのだろう、
 極度の栄養失調だ、見て見ろこの躰、今にも
 折れそうじゃろ、酷い有様じゃ、けったくそ悪い」

「……」

「明日も様子を見に来るでの、暫くは絶対安静じゃ」

「あぁ……」


  じーさんが部屋を出て行ったあと、
  柊二はベッドのふちに腰かけ実桜をじっと
  見つめていた。
  真っ青だった顔色は点滴のおかげだろうか
  色が戻り頬に赤みが差し、
  閉じられた瞼を縁取る睫毛は濃く長い影を
  作っている。
  閉じられた唇も桜色でみずみずしい。

  何気なく伸ばした腕で実桜の髪をかき上げる
  ように撫でると、今まで感じた事のない感情が
  湧き上がってくる。
  柊二自身も己らしくない行動をしている
  自覚はあった、しかしそうせずにはいられない
  何かがあり、だがその感情について柊二は
  納得のいく答えを自分の中で見つけられなかった。


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