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九条組長と真琴さん
しおりを挟むそれから数日が経って。
私もようやく柊二との新しい生活に慣れた、
という事で。
柊二は同じマンションにある会の事務所へ
仕事に出るが、よほどスケジュールが詰まっている
時でもなければ、昼と夜は一緒に御飯を食べる。
あの牢獄のような施設にいた時とは違って、
ここで出されるお料理は本当に凄く美味しい。
それを毎日作ってくれるのが、私専属の護衛にも
なった若衆の蒼汰さんだと聞き、2度びっくりした
なんでも蒼汰さんには小さな弟や妹さんがたくさん
いて、柊二付きの舎弟になる前は、その子たちの
面倒も蒼汰さんが見ていたんだそう。
私が『その子たちと友達になりたい』って言ったら
嬉しそうに相好を崩し『はい、喜んで!』って
言ってくれた。
いつものように昼食が終わると ――
「組長(おやじ)に連絡してくるから、ちょっと
待ってろ」
そう言い残し柊二がLDKを出た。
しばらくして戻った柊二が口を開く。
「もうすぐ組長と姐さんがみえる。大丈夫か?
辛くないか?」
そう聞いてくれる柊二はやっぱり優しい。
祐太、とドアの外に声を掛けると、
ひょこっと顔を出す柊二の甥っ子の祐太くん。
「ちょっと飲み物買ってきてくれないか」
そう言って1万円のピン札を取り出した。
「内臓にゃ損傷がなくてよかった。ちゃんと飯も
食べられる。しっかり食べないと治らないぞ」
そう言い私の顔にかかった遅れ髪を指でそっと
かきあげてくれる。
祐太くんが色々な種類の飲み物を袋いっぱい
買ってきてくれた。
若、と声を掛けレシートと釣りを差し出したが、
柊二が受け取ったのは飲み物の袋だけだ。
祐太くんは’ありがとうございます」と
頭を下げた。
祐太くんにとって柊二は父方の叔父であるが、
彼が煌竜会へ正式に入会してからは、
”主(あるじ)と子分”という主従関係になった
そう。
「何から飲む?」
イチゴ牛乳と答える私にクスッと笑い、
テトラパックのイチゴ牛乳を差し出してくれる。
ひと口飲み、久しぶりの甘酸っぱい飲み口に
生き返った気がした。そしてまた口をつける。
その時、コンコンとドアが鳴る。
「おやっさんと姐さんです」
そう言い祐太くんが頭を下げた。
「おぅ、どうや嬢ちゃん」
柊二は飲み物を置き立ち上がる。
「申し訳ありませんおやっさん、姐さんも」
と深く頭を下げ傍らのソファーを勧めた。
60才位の初老の男性と和装のきれいな男の人が
私の座っている側に来た。
「えらい難儀な事やったな。ま、怪我はちゃんと治さな
あかん。それまではこの柊二が面倒みるからな。
まあ、こいつも付きっきりとはいかへんが。
夜はきっちりここに帰らせるから。お前を預かった
のは柊二や。せやからこいつには思いっきりわがまま
言うていいのやで」
そう、組長・九条さんが言ってくれた。
「どうもありがとう」
「せやけど珍しいね。柊二さんがこんなに1人の子の
面倒見るなんて。意外だったな、僕」
きれいな男性が言った。
「あぁ、嬢ちゃん。こいつは俺の嫁の真琴や。
俺も週に1度は真琴と一緒に顔を出すようにする。
昼間はこいつか舎弟の蒼汰が嬢ちゃんの面倒を見る。
頼れるぞマコは。なんでも聞いたらええ。料理も旨い
から期待しとけよ」
男性なのに嫁……どういうこと?
きょとんとしている私に真琴さんが話しかける。
「びっくりしてるでしょ、男が嫁って。あのね
実桜ちゃん、僕、男だけと嫁なんだよ、戸籍上は
”九条”の息子だけど。だから安心してね。
あ、そうそう、それに、元気になったらうちにも
遊びに来て? でっかいわんこもいるから」
なんて優しい顔をして話しかけてくれるんだろう、
と安堵した。
涙を溢れさせる私の頬を柊二がハンカチで
優しく拭ってくれた。
「姐さん、申し訳ありません。ご迷惑をおかけします」
「気にしないで。僕ね、こうゆう事は持ち回りだと
思ってるんだ。僕も時継さんに助けられて初めて人の
本当の温かさを感じる事が出来たから、実桜ちゃん
にもそうなって欲しいって思うし」
笑いながら真琴さんが言った。
「柊二。今日はお前もうええぞ、嬢ちゃんについてて
やれ。後でデリバリーが届くから、ゆっくり飯でも
食うて話を聞いてやれ、曰くありやろからな」
ありがとうございます、と頭を下げる柊二。
”それじゃまたね” と、九条さんと真琴さんが
マンションから出て行った。
見送りに行ってくると柊二が後を追い部屋を出た。
なぜ、ごく最近会ったばかりの私に、皆んな、
親切にしてくれるんだろう?
はっきり言って、どこの馬の骨ともわからない
こんな私に。
あんな人達は見たことがない。
涙が止まらなかった。
薬のせいだろうか、そのまま私は眠っていた。
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