オオカミは淫らな仔羊に欲情する

NADIA 川上

文字の大きさ
31 / 80
東京編

港南台の悪魔

しおりを挟む

 何となく知ってはいた、うちの学校に時代錯誤の
 ヤンキー集団がいると……。


「―― えっ、それはつまり、俺にその生徒達を
 更正させろって事、ですか?」

「いいやぁ、そこまでは期待していませんよ各務先生。
 まさか、あなたに? アハ、アハハハ~ ――」

「ハハハ……」

「ただ、もう少~しあの問題児達をきつーく
 取り締まって欲しいって事です。
 あいつらを野放しにするとロクな事しませんから
 ねぇ。父兄や近隣住民達からの苦情が絶えないん
 ですよ。私も教頭として頭が痛い……幸い先生は
 クラス担任はしてないからお暇でしょ? 
 それに戴いているお給料分くらいは、しっかり働いて
 頂かないと!」

「そーですよ、普段ラクしてるんですから」


 俺と教頭・山ノ内の話しに割り込んできたのは
 数学の迫田だ。

 生徒達からは”ご機嫌取り”だの”腰巾着”
 だのと言われ、この男に好感を持っている
 生徒はいないと思う。

 かく言う俺もこの男は大の苦手だ。


「あ、でも、迫田先生……」

「いいじゃないですかぁ~、あなたPTAにも人気絶大
 ですしねぇ、竜二先生。その調子であいつらも
 手懐けて下さいよ」

「手懐けろって言われましても……」

「お若いんですから、体力だけは無駄に有り余ってる
 でしょうし」

「ア、ハハハ……」

「じゃ、頼みましたよ、各務先生」

「お愛想振りまくだけじゃなく、たまには役に立つ処も
 見せて下さいねぇ」

「あぁ! でも、絶対生徒には手を上げないで下さいね。
 教育委員会やマスコミが煩いですから」 



 !! …… じゃあ、どうしろってんだよっ?!

 学生時代、大きな借りを作ってしまった
 教育委員会の教育長から泣き落とされ、
 この春の新学期から産休に入る化学教師の
 代打として、渋々赴任したが ――。

 ”産休の代替教師”非常勤講師だとは言っても、
 嫌味な上司&先輩、生意気な生徒、面倒なPTA ――。
 いい事なんかありゃしねぇ。

 あ~ぁ、なんかないもんか……
 この殺伐とした毎日に僅かでもいいから潤いは。


 ***  ***


「―― これで美人の女性教諭でもいりゃあ、
 少しはヤり甲斐も湧くってもんだが、既に女を捨てた
 ようなオバサンしかいねぇし、保険医まで男ときてる
 ……あり得ねぇ、最悪」

「いいじゃないの、高校教師。ちょっと若いってだけで
 女子生徒にモテモテだぜぇ。大体お前はいつも贅沢
 なんだよ」


 こいつは物心ついた頃からの腐れ縁で、かれこれ
 30年越しの付き合いになる、日向 英之ひゅうが ひでゆき

 この星蘭大学附属私立港南台高校の養護教諭。


「あんな小煩いのにモテても嬉しくない」

「だからお前は贅沢だっての。この広い世の中にゃな、
 生まれてこのかた女っ気ゼロって侘びしい男も山と
 いるんだぞ~」

「引く手も数多のお前がそれを言うか?」

「……けど、山ノ内達が言ってるヤンキー集団、
 あいつらそんなややこしい連中でもないぞ」

「知ってるのか?」

「まぁな。喧嘩の怪我で割りとよくココに来るから。
 手ぇかかるとしたら、和泉くらいじゃないかな」

「ちょっと待て、それって、3-Sの和泉絢音か?」

「おっ。さすが学年主席の可愛い女子はインプット
 済みか。
 何を隠そう彼女が連中のリーダー格だ。
 ”港南台の悪魔”って有名だぜぇ。
 彼女が1度暴れ出すと ―― 辺りは一面、
 血の海と化す! なぁんてな」


 ……マジかよ。

 ってか、和泉はこの4月に転校して来たばかりだろ。
 で、もう”港南台の悪魔”か?
 こりゃ、えらい問題児押し付けられたもんだ……。

 とりあえず、そいつらに当たりをつけない事には
 始まらんかぁ……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...