オオカミは淫らな仔羊に欲情する

NADIA 川上

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東京編

迷い仔羊、危機一髪! ―― 2

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「何ボサッとしてやがんだ。構うこたぁねぇ、
 2人まとめて片付けちまえ」


  自分達の意思で、というより、佐渡山の剣幕に
  気圧されて仕方なく、という感じで仲間の男達が
  一斉に竜二と絢音へ殴りかかってゆく。

  それを、竜二は絢音を庇いながら余裕で応戦。

  絢音は自分も竜二の助けになりたいのに、
  竜二がそうはさせないのでイラつく。


「ちょっと! 私にも少しはやらせてよ」

「アホ、こいつら性根は腐ってても本職のヤクザだ、
 下手に手ぇ出して怪我でもさせたらオレは親御さんに
 呪い殺される」

「! 竜二……」

「いいから、お前は大人しく守られてろ」


  そうして、男達は竜二1人にあっという間に
  KOされた。

  追い詰められた佐渡山は仲間へのメンツもあって
  今さら引くに引けず、懐から黒光りする38口径の
  拳銃を取り出した。


「マジ、腐っとんな……それ撃ったらお前、
 前科モンやぞ。親分も道連れにしてな」


   ※注略~改正・暴対法では”使用者責任”
     というモノで、実際悪事を働いた組員の他、
     その組員が属する組織の兄貴分や親分も
     刑罰の対象となる。


  竜二は絢音を自分の後ろへ下がらせた。


「懲役怖くて極道なんぞやってられんわっ。
 死に晒せ、悪徳教師っ!」


  佐渡山の持っている拳銃をめぐって、
  竜二・絢音・佐渡山の3人で
  揉み合っているうちに、銃が暴発(誤発射)
  
  たまたま運悪く、その弾丸は竜二の腕を掠め、
  鮮血が!


「りゅ、竜二ぃっ!」


  竜二は傷ついた腕を手で押さえてその場に
  へたり込んだ。

  まさか、本当に撃つ事になろうとは
  思いもしなかった佐渡山は、
  その痛みに震えながらも自分を睨みつける
  竜二に怯え立ち尽くす。

  仲間達も同じく複雑な表情で動けずにいる。


「―― あんたら、よくも……ただじゃおかない」


  まるで人が変わったように
  憎悪のこもった目つきで佐渡山を殴り倒し、
  その上へ馬乗りに跨って、佐渡山の顔めがけて
  何度も何度も、固く握りしめた渾身の拳を
  打ち付ける絢音。

  佐渡山は、さすがにその筋の男だけあって、
  絢音の拳がクリーンヒットしても、
  うめき声ひとつ上げないが、
  もともとごっついその顔は、あっという間に
  番町皿屋敷のお菊さんのような
  物凄い容貌に変えられていく。

  さすがにこのままじゃ、騒ぎがデカくなると
  危惧した竜二が絢音を止めに行く。


「絢音……絢っ! もうええ、止めろ」


  絢音は竜二の声も聞こえぬほど我を忘れ、
  ブチ切れている。


「絢音っ、もうええて。ええ加減にせい!」


  放っておけば本当に佐渡山を半殺しにでも
  してしまいそうな絢音を鎮める為、
  竜二は仕方なく一本背負いで絢音を投げ飛ばした。


「っっ、てててて……何すんのよっ?!」

「これで少しは頭冷えたやろ、このばかチン」


  そして竜二は呆然と佇む佐渡山と男Aの顔写真を
  写メで撮り、スマホでそのまま送信。


「お前らの処罰は大河内組の若頭と親分に任せる。
 ただし、2度目はねぇぞ。わかってんな」


  2人は声もなく、カクカクと頷いた。


「失せろ」


  佐渡山他その仲間達は、ほうほうの体で逃げ去り。

  竜二、絢音の傍らへしゃがんで大きくため息を
  つき。


「喧嘩する時ゃ相手選べよ」


  絢音、竜二の傷ついた腕へそっと手を触れたが、
  その手はプルプル震えている。


「!! お前……」

「……死なない?」


  いつもの様子と全く違う絢音に竜二は戸惑い、
  おまけにそんな絢音から発せられた
  問いかけがあまりに意外で。


「あ?」

「……だから、死なない?」

「こんなかすり傷じゃ死なんよ。けど、心配してくれて
 ありがとな」


  そう言って、竜二は絢音の震えている手を
  優しく包み込んだ。


「さ、帰ろか」

「……ん」  
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