オオカミは淫らな仔羊に欲情する

NADIA 川上

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東京編

迷い仔羊、危機一髪!

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  ハァ ハァ……ハァ ハァ……

  別に……何、逃げてんだろ? 私。

  何かあそこにいたら、
  いけないような気がしちゃって。

  すごく……ドキドキしてた。

  何しに行ったんだか……

  だってあのケガ私のせいだろうし。

  だから、謝りたくて……。

  なのに、何だかわざわざ、2人の邪魔しに
  行ったみたいになっちゃった気がして……。

  余計気分的に、なんか……。

  なに? これ……。



  何だかそのまま戻る気になれなくて、
  遠回りをするように学校の周りを歩いていた。

  あまり人気のない裏道に入ったあたりで、
  後ろから声を掛けられた。


「あれ~? こんな所で誰かと思えば和泉絢音ちゃん」

「え……」


  振り返って見ると、知らない顔だ。

  でも、上京してそろそろ1年。

  例の部活のせいか?

  私の顔と名前は、自分で思ってる以上に
  他校の生徒達の間へ広まっていたようで……。


「裸足でどうしたの? ん?」

「あ……」


  競技終了と同時に保健室へ向かってて。

  そう言えば私、裸足だった。

  そう思ったら、急に足の裏が痛くなった。


「足、痛いんじゃない?」

「え ―― いえ。大丈夫ですから」

「オレが姫抱っこして連れて行ってあげるよ。
 何処へでも」


  そう言いながら、ギラついた欲望むき出しの
  素顔でこちらへにじり寄ってくる。


「え? いえ、結構です」

「遠慮はいらないよ?」


  げっ。ちょちょちょ……ちょっと!
  冗談やめて。


「や、いや。ホントに結構ですから」


  歩き出そうとしたら、手首を掴まれた。


「?!」

「そんなこと言わないでさ。オレら、絢音ちゃんが
 入ってきた時から、ずっと可愛いって思ってたん
 だよねー」

「離してっ!」


  き ―― 気持ち悪っ!
  掴まれた手首を振りほどこうとするのに、
  強く掴まれて、離せない。


「離してください! 大声出しますよ」

「じゃ、俺は絢ちゃんの可愛い唇をあつ~いキッスで
 塞いじゃおーかなぁ。デヘヘ ――」


  マジ、気持ち、わ・る・いっ!!

  最初から喧嘩になると身構えた時と違って、
  今の私は完全に油断しおまけにいつもの
  冷静さを大きく欠いていた。


「早いとこそこいらの空き教室に連れ込んで
 味見させて貰お-ぜ?」

「おぉ、そうだな」


  冗談じゃないっ!!

  あんたらに弄ばれるくらいなら、
  一生男断ちした方がなんぼかマシだわ。


  その時 ――!


  後ろの方で『オイッ!』と、男の声がした。

  一同一斉にその声がした方へ振り返った。

  やって来たのは、室内着にサンダル履きという
  軽装の竜二だった。

  コンビニからの買い物帰りなのか? 
  片手に小さなビニール袋を下げている。


「せ、先生 ――?!」

「おぉ! 化学のぐうたら教師も来おったか。
 こりゃ手間が省けてちょうどええわ」

「だぁれが、ぐうたらだってぇ?」


  (あぁ、もうっ ―― ひとりでカタつけようと
   思ってたのに……っ)
  

「帰るぞ絢音」


  と、絢音の手を引いて、竜二が数十歩進んだ所で、
  やっと男達は我に返り、ザザッと2人を
  取り囲んだ。

  兄貴分の男は茹でダコの如く顔を真っ赤にさせ
  怒鳴り散らす。


「てめっ、いきなり横っちょからしゃしゃり
 出てきおって、人のもんかっさらっていくたぁ、
 とうゆう了見や?!」


  力ずくで絢音を奪還しようとするが、
  その数秒後には竜二の投技によって、
  綺麗に空を切り兄貴分の男の体は無様に
  地面へ叩きつけられた。


「あ、兄貴ぃ?!」

「さ、さどやまさんッ!」

「いたたたたた ―― てめぇ! よくもヤり
 やがったな」


  したたかに打ち付けられて、かなり痛むだろう
  腰の辺りを手で擦りながら立ち上がり、
  竜二と対峙する。

  竜二は先ほどまでの、のほほ~んとした
  雰囲気からは口調も態度も、ガラリ変わった。


「サドだかマゾだか知らねぇが、この和泉絢音は
 オレの女だ。気易く手出しする野郎には地獄を
 見てもらう」


  ”佐渡山”と呼ばれた、兄貴分の男は
  仲間達を見渡し声を荒げる。


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