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東京編
目まぐるしい1日
しおりを挟む明日に退院を控えた日の午後。
病室で絢音の卒業式が行われた。
学校にとっても神宮寺は毎年多額の寄付を
してくれる貴重な後援者で。
その神宮寺が目の敵にしていると言っても過言でない
女生徒と神宮寺の愛娘を同じ卒業式の席へ参列させる
のは、神宮寺を敵に回すようなものなのだ。
そうは言っても ”都立高校としての体面”も
保ちたいので、この卒業証書授与式には
忙しい時間を縫って東京都の教育委員会の教育長、
大林校長 ―― そして、神宮寺以外に
絢音を目の敵にしていた教頭と学年主任の迫田も
顔を揃え。
病院からは担当医の**と看護師長の刑部が。
絢音側の関係者としては姉の初音と親友・森下利沙
が参列した。
『―― 3年S組 和泉絢音殿。あなたは本校所定の
普通科及び商業科の過程を修了した事を証す。
2022年3月**日、東京都立港南台高等学校、
校長・大林則夫』
紆余曲折はあったにせよ、
これで絢音の高校生活は終わったのだ……。
皆が引き払ったあと、
大林校長がもう1度病室にやって来た。
「あら、校長先生……何かお忘れ物でも?」
「あぁ、そうなんだ。実はね……キミが先日入学を
辞退した祠堂学院大学からまた連絡があってね。
お話ししたら、是非とももう1度考え直して
欲しいって言うんだ」
話しって……この人は一体何の話しをしたんだ?
「善は急げ。早速明日の約束を取り付けておいたから、
必要書類持参で行きなさい。
あぁ、学校の場所は分かるね。
担当は学生課の支倉さん。ちゃんとスーツを着て
行くんだよー」
校長は自分の言いたい事だけ言うと、
足早に病室を後にした。
残された絢音は一体どうゆう反応をすべきなのか?
さえ、分からず、ただ ただ 呆然とするばかりで
嬉しい知らせのハズなのに、
絢音の表情は何故か曇ったままだ。
和美と神宮寺愛奈が自分に対しあれ程までに
敵愾心を持っていると気付く前までは、
東京で就職するつもりでいたが、竜二の気持ちが
どうであれ、このまま東京にいたら自分はずっと
竜二から離れられないと悟った。
会社経営の事なんてさっぱり分からないけど、
2人の ―― 各務竜二と神宮寺愛奈のお見合いと
事実上の婚約は皆んなもそう言っている通り
政略的な事が多分に含まれていると思う。
だから、もし竜二が愛奈との婚約を白紙に戻そう
ものなら ―― 平成のフィクサーと言われている
愛奈の父親がどんな汚い手を使って竜二潰しに
出てくるか分からない。
竜二にはいち企業の代表取締役幹部として組織を、
そこで働く従業員達を守る義務があるのだ。
自分の感情だけで行動は出来ない。
夕食が終わってから、
担当医の**が退院前診察をしに病室へやって来た。
「うん ―― 脈拍も血圧も正常。退院しても無理は
禁物だよ。それに、なるべくお酒は控えて、
規則正しい生活を心がけてね」
「はい」
「悩み事は内へ溜め込まず、誰でもいいから聞いて
貰うこと。たったそれだけだって、かなり精神的
には楽になるハズだから」
「はい……」
最後に医師は絢音の手の甲へ親愛のキスを落とし
「キミに神の御加護があらん事を――」と
祈りの言葉を呟いた。
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