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東京編

たび重なる偶然

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「―― う~ん、まいったなぁ~……」


 賑わう通りをキョロキョロ見回す絢音は、
 眉をひそめて呟いた。

 利沙や途中から合流したあつし・勇人・理玖と
 歩いていたのだが、
 ふと耳に入った泣き声に足を止めた。

 人の流れに逆らうようにして泣き声に向かう。

 そこには浴衣を着た小さな女の子が母親と
 はぐれたのか?
 心細げに泣いていた。


「ほ~ら、もう泣いちゃだめ。私も一緒にお母さん
 探すから」


 どうしたもんだか……と、考えあぐね。

 とりあえず、この祭りを主催している実行委員会の
 本部へ向かった。
 そこには救護センターと迷子センターも設けられて
 いるのだ。

 女の子はそこへ到着した数十分後、
 無事両親と再会した。
  
 が、今度は絢音が利沙やとあつしらを見失って
 しまった。


 この人混みの中ではそう簡単に皆を見つけられ
 そうにない。

 こういう時、頼りになるハズの携帯電話は
 この祭りに着いてすぐ、バッテリーが切れて
 しまった。

 自分自身に呆れて、乾いた笑いしか出てこない。

 ココに、じっとしていても埒があかない。

 きっと利沙達も自分を探してくれているだろうと、
 絢音は来た時に潜った大鳥居まで戻って
 皆を待つ事にした。

 そこで待つ事数分……

 ド~ンと、大きな音がして花火が打ち上がった。

 この祭りに来ているほとんどが花火目当て
 なのだろう。

 誰もが足を止め夜空を見上げている。

 すぐに二発目・三発目と夜空に大輪の花が咲き、
 利沙達と見られてたらもっと楽しかっただろうなぁ
 と思った。

 そして、数ヶ月前、
 竜二さんともこの花火を見に行こうと
 約束していた事も、不意に思い出した。


「りゅうじさ……」

「―― 呼んだか?」

「えっ?!」


 すぐ隣から聞こえてきた懐かしい声に驚いて
 隣を見る。

 四発~五発と次々に打ち上げられる
 花火の明かりに照らされ、浮かび上がる竜二の顔。

 竜二はまた逃げ出される前に絢音の腕を掴んだ。


「離して」

「嫌だ、離したら絢音はまた逃げる」

「もう、あなたには会わないって決めたんだもん」


 竜二は絢音の腕を掴んだまま、人気のない場所を
 探す。


 しかし、こんな祭りの夜に、
 人気のない場所なんかあるハズもなく。

 結局竜二は自分の車へ向かった。


 ***  ***  ***


 俺は逸る気持ちを必死に抑え
 絢音に「少し話さないか?」と、問いかけた。
   
 話してしまったら……怖かった。
 自分を制御出来なくなりそうで…… 
 全てを投げ出してしまいそうで……

 けど、俺はもっと強くなると心に誓った。
 
 今よりもっと強くなって、
 愛しい人は自分の力で守り抜くと決めたんだ。


「……あや?」

 
 絢音は促されるまま助手席に乗った。
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