夜の記録

ドルドレオン

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二人は草原に寝転び、空を見上げていた。草の匂いが鼻を突き、少し湿った土の感触が背中に伝わる。夏の光がまぶしく、太陽の温かさが肌を照らしている。その下、草の葉は風に揺れ、やさしく音を立てる。音楽のように、草のざわめきが静かなリズムで心に響く。

空は深い青で、雲はどこまでも白く、柔らかな羊のように流れていく。空気の中には少し湿気があり、まるで時間がゆっくりと流れているように感じられる。雲は速く動いていて、風に押されるように次々と形を変えながら、広がる空を舞っていた。ときどき、雲が太陽を隠して、あたりがひんやりと冷たくなる。そしてすぐに、また雲が流れていき、太陽の熱が肌に戻ってくる。

二人は無言で、ただ空を見上げていた。彼女は目を閉じ、まぶたの裏に広がる青い空の映像を感じ取っているようだった。彼は横たわりながら、空の広さに圧倒されるような気持ちを抱いていた。喧騒から離れ、この広い草原で過ごす静かな時間が、心の中で溶け込んでいく。今はただ、ここにいることだけが確かで、何も考えずに、何も求めずに、ただ夏の一日を感じていた。

風が少し強くなり、彼女の髪の毛がふわりと揺れた。彼の顔に、彼女の髪が優しく触れ、その柔らかさが心地よかった。風に揺れる草の音と、遠くで鳴る鳥の声が、ひとつのメロディーのように混ざり合い、周囲の世界がひとつになったかのように思える。

しばらくして、彼女が目を開け、隣の彼を見た。その目には何も言葉にできない穏やかな表情が浮かんでいる。それに気づいて、彼もまた彼女を見つめ返す。何も話さなくても、二人の心は通じ合っているような気がした。

雲は次第に形を崩しながら、さらに速く流れていく。空の色は、昼と夜の間の一瞬の境界を漂うように変わり、太陽はもう少しで西の空に沈むところだ。草原に吹く風の中に、夏の終わりが少しずつ感じられるような気がした。けれど、その瞬間はまだ続き、二人はその中で、ただひとときを味わっていた。

誰かが声をかけてきても、今はそれに応える必要はない。ただ空を見上げて、この大きな世界の中で小さな自分がこうして生きていることを感じていた。雲がふわりと流れる空の下、草原の中でただあおむけに寝転びながら、二人はそのまま、時間に任せて静かに過ごしていた。




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