夜の街で

ドルドレオン

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第5章 — 記憶の扉

映画館の夜から数日後、僕らは街の外れにある古い洋館を訪れた。ミカが言うには、そこに彼女の失われた記憶の鍵があるかもしれないという。

扉は重く、錆びた鉄のノブを回すと、きしむ音が廊下に響いた。中は薄暗く、窓から差し込む月明かりが家具の影を長く伸ばしている。壁には過去の写真や、古い手紙が無造作に飾られていた。

ミカは一枚の写真に目を止めた。そこには若い男女が写っていて、彼女はその女性だと気づいた。

「この人が、私…?」

僕はその写真をじっと見つめた。彼女の表情は静かで、でもどこか遠くを見つめているようだった。

「忘れたくなかったんだ、きっと。」

ミカの声は震えていた。

その時、奥の部屋からかすかなメロディーが聞こえた。古い蓄音機が不意に動き出し、レコード盤が回り始めたのだ。音楽は昔懐かしいジャズの調べで、まるで時間が一瞬だけ戻ったかのようだった。

ミカは目を閉じて音楽に身を任せた。

「これが、私の記憶の扉。」

彼女がそう言った瞬間、僕も胸の奥にある何かがゆっくりと動き出すのを感じた。僕らはただ過去を取り戻すだけじゃない。未来に向けて新しい一歩を踏み出そうとしているのかもしれない。

夜明けが近づくころ、僕らは静かに洋館を後にした。街はまだ眠っているけど、僕たちの心は確かに動いていた。
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