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Chapter 5: 「影のカタログ」
グラント・G・グリーベンは、地図に記された17の×印のうち、5つ目の地点に到達していた。
廃業したガソリンスタンド。古いポンプにはガソリンの代わりに「数字の抜け殻」とでもいうべきものが詰められている、という噂を聞いていた。実際に立ってみると、そこには数字のない看板が揺れているだけだった。
その看板の裏に、古いステッカーが貼られていた。
「K・S・S」
「コレクティブ17」
「ドリームノート社」
「F.A.P.O.S.T. 内務局特別課」
それらはまるで、世界の裏側に同時に存在する組織の名刺のようだった。
その瞬間、古いスピーカーから微かなノイズ混じりの声が流れてきた。
「……聞こえるか、グラント。君はいま、**“影のカタログ”**を覗いた。」
振り向くと、誰もいない。
声だけが続く。
「君が見つけたのはただのリストじゃない。世界の“設計図”を動かす四つの機関の、たったひとつの共通部分だ。」
「誰だ、あんたは?」
「名前を名乗ることはできない。私は“あるはずの記録”の欠片にすぎない。だが、君が探している“裏で操っている存在”は、組織を超えた、もっと大きなものだ。」
グラントは額に汗を感じた。
「もっと大きなもの?」
「“オーバーライター”。記録そのものを書き換える“記述者”。K・S・Sも、コレクティブ17も、ドリームノート社も、すべてはその“記述者”のために動く歯車だ。」
「記述者……だと?」
声は笑ったようなノイズを発し、こう続けた。
「君はその存在を確認しつつある。だが覚えておけ。“確認”した瞬間に、君は彼らのシナリオに書き込まれる。観測する者は観測される。」
—
グラントはガソリンスタンドの裏手に回った。そこに小さな扉があり、ハンドルには“17”という番号が刻まれている……はずだった。だが、見た瞬間に番号は消えた。ハンドルだけが残る。
扉の奥は薄暗い地下室。壁一面に、さまざまな組織のロゴが投影されている:
K.S.S.(Key Sequence Suppressors):消された数列と記録を保護・監視する。
コレクティブ17:消された情報の断片を集め、元に戻すための反組織。
ドリームノート社:人の夢を収集し、夢の中に情報を隠す民間業者。
オーバーライター:世界の全記録を書き換える“記述者”本体。
グラントは、自分がただの目撃者ではなく、**すでに組織間戦争の“コマ”**として使われていることを理解し始めた。
—
Chapter 6: 「オーバーライターの影」
地下室の奥にある古びた端末に、白い文字が現れた。
WELCOME, G.G.GRIEBEN
STATUS: OBSERVER CONFIRMED
ACCESS: 17%
画面に次々と文章が表示される。
「あなたは“記録の外”を観測しました。
以後の行動はすべて監視・記録され、あなたの意思に基づいていない可能性があります。」
グラントはそのメッセージを読み、頭がくらくらした。
自分の動作ひとつひとつが、誰かに“書かれている”ような感覚。
突然、背後に気配があった。
黒いスーツの女。F.A.P.O.S.T.の捜査官だったナディーン・クーパー。
だが彼女の胸元のバッジには、見慣れないロゴが輝いている。
「コレクティブ17の潜入員……?」
彼女はにやりと笑った。
「潜入員というより、読者の代弁者かしらね。あなたが何を知ろうとしているか、私たちはずっと観測してきた。」
「俺を操っていたのはお前か?」
「いいえ、あなたはもっと大きな物語の筆先。組織は全部、そのために用意された伏線にすぎない。」
グラントは息を呑む。
「じゃあ、俺はいったい何者なんだ?」
ナディーンはグラントの目をまっすぐ見て、低く呟いた。
「あなたは**“17番目の観測者”**よ。そして、あなたが真実に触れた瞬間、この物語は次の段階に進む。」
—
画面の文字が最後にこう変わった。
NEXT PHASE: OVERWRITE
BEGIN? Y/N
グラント・G・グリーベンは、地図に記された17の×印のうち、5つ目の地点に到達していた。
廃業したガソリンスタンド。古いポンプにはガソリンの代わりに「数字の抜け殻」とでもいうべきものが詰められている、という噂を聞いていた。実際に立ってみると、そこには数字のない看板が揺れているだけだった。
その看板の裏に、古いステッカーが貼られていた。
「K・S・S」
「コレクティブ17」
「ドリームノート社」
「F.A.P.O.S.T. 内務局特別課」
それらはまるで、世界の裏側に同時に存在する組織の名刺のようだった。
その瞬間、古いスピーカーから微かなノイズ混じりの声が流れてきた。
「……聞こえるか、グラント。君はいま、**“影のカタログ”**を覗いた。」
振り向くと、誰もいない。
声だけが続く。
「君が見つけたのはただのリストじゃない。世界の“設計図”を動かす四つの機関の、たったひとつの共通部分だ。」
「誰だ、あんたは?」
「名前を名乗ることはできない。私は“あるはずの記録”の欠片にすぎない。だが、君が探している“裏で操っている存在”は、組織を超えた、もっと大きなものだ。」
グラントは額に汗を感じた。
「もっと大きなもの?」
「“オーバーライター”。記録そのものを書き換える“記述者”。K・S・Sも、コレクティブ17も、ドリームノート社も、すべてはその“記述者”のために動く歯車だ。」
「記述者……だと?」
声は笑ったようなノイズを発し、こう続けた。
「君はその存在を確認しつつある。だが覚えておけ。“確認”した瞬間に、君は彼らのシナリオに書き込まれる。観測する者は観測される。」
—
グラントはガソリンスタンドの裏手に回った。そこに小さな扉があり、ハンドルには“17”という番号が刻まれている……はずだった。だが、見た瞬間に番号は消えた。ハンドルだけが残る。
扉の奥は薄暗い地下室。壁一面に、さまざまな組織のロゴが投影されている:
K.S.S.(Key Sequence Suppressors):消された数列と記録を保護・監視する。
コレクティブ17:消された情報の断片を集め、元に戻すための反組織。
ドリームノート社:人の夢を収集し、夢の中に情報を隠す民間業者。
オーバーライター:世界の全記録を書き換える“記述者”本体。
グラントは、自分がただの目撃者ではなく、**すでに組織間戦争の“コマ”**として使われていることを理解し始めた。
—
Chapter 6: 「オーバーライターの影」
地下室の奥にある古びた端末に、白い文字が現れた。
WELCOME, G.G.GRIEBEN
STATUS: OBSERVER CONFIRMED
ACCESS: 17%
画面に次々と文章が表示される。
「あなたは“記録の外”を観測しました。
以後の行動はすべて監視・記録され、あなたの意思に基づいていない可能性があります。」
グラントはそのメッセージを読み、頭がくらくらした。
自分の動作ひとつひとつが、誰かに“書かれている”ような感覚。
突然、背後に気配があった。
黒いスーツの女。F.A.P.O.S.T.の捜査官だったナディーン・クーパー。
だが彼女の胸元のバッジには、見慣れないロゴが輝いている。
「コレクティブ17の潜入員……?」
彼女はにやりと笑った。
「潜入員というより、読者の代弁者かしらね。あなたが何を知ろうとしているか、私たちはずっと観測してきた。」
「俺を操っていたのはお前か?」
「いいえ、あなたはもっと大きな物語の筆先。組織は全部、そのために用意された伏線にすぎない。」
グラントは息を呑む。
「じゃあ、俺はいったい何者なんだ?」
ナディーンはグラントの目をまっすぐ見て、低く呟いた。
「あなたは**“17番目の観測者”**よ。そして、あなたが真実に触れた瞬間、この物語は次の段階に進む。」
—
画面の文字が最後にこう変わった。
NEXT PHASE: OVERWRITE
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