人喰いの森の話

iwashi0404

文字の大きさ
2 / 2
1章

1話 いつもの朝。

しおりを挟む
いつもの朝。
眠そうな目の少年。
仕事明けのあくびひとつ。
朝日のわずかに差し込む森を歩く少年の行先は、
森の外れにある花畑。
一面の花畑に小鳥が歌い蝶がう。
天国のような光景。
少年「母さん、ピンクの花が咲き始めたよ。」
き母へ手向たむけける花を探してしゃがみ込む少年。

この森は、人喰ひとくいのもりと呼ばれている。
恐ろしいうわさえず、
本来ほんらい人の寄り付かないこの森に、夜、
どう言う訳か時折人が迷い込む。
このまじないのかかった生きた森は、まよひとを離さんとばかりに道がうごめく。
前に通った道でも、次に通れば違う場所に着いてしまう。
夜に迷い込めば、二度と外の世界を見ることは出来ない。
そんな得体の知れないあやしい森で、人の魂に反応して燃える不思議なランプを片手に、迷い人を森の奥で待つ悪魔の元へ誘うのが、悪魔から任を受けたこの小ヤギ仕事なのである。

少年は小さな花を2.3本摘みとり、帰ろうときびすを返した。
??「ひゃ…」
そこで小さな声がした。
驚いて声の聞こえた方を向く。
そこには角もなく、獣の耳もない、人間の若い女性が木の陰から口を塞ぎこちらを見ていた。
その瞬間、少年に緊張が走った。
心臓が嫌な脈打ち方をする。
見られた。
どうする。
もう日も高い。
仕事はどうなる。
迷い人とは接触せっしょくはするなと言われていたのに。
通常、昼の森は入って来る人間を森の奥には入れず、すぐに外へ追い出してしまう。
昼の森で迷うことはない。
なぜ彼女はこの場所へ辿り着けたのか。
じわりと汗をかいた手に握り締められた花は、元気なくこうべをたれた。
思考停止し硬直していると彼女に声をかけられた。
女性「ぼうや、人間じゃないの?」
少年はハッとして問いかけを消化する。
少年「あ、、あの…」
素直に答えるのはまずいかもしれない。
少年「お姉さん、ここが人喰いの森って知ってますか?どうしてここに?」
質問を質問で聞き返してしまった。

彼女の顔がくもる。
女性「ぼうやが…この森の悪魔様?」
彼女まで質問を質問で聞き返す。
今度は自分の顔が曇る。
少年は困惑こんわくしながらも口を開いた。
少年「ぼくじゃありません…あの悪魔は今はいません。」
彼女は心なしかホッとした様子だった。
そこで思い出したようにハッとして飛び出して来た。
女性「ぼうやは大丈夫なの?この森で迷ってるの?」
ひざをついて心配そうに顔をのぞまれる。
そこで一気に罪悪感ざいあくかんおそって来た。
自分はまよえるがわではない。まよわすがわだ。
少年「あ…う、」
彼女は少年の肩を持って言った。
女性「大丈夫。私は出られないけれど、あなたはなんとかこの森から出られるように悪魔様にお願いしましょう!」
胸がぎゅっと苦しくなる。
少年「ち、ちがう。んです。ぼく。」
彼女が心配そうに少年のほほに手を触れる。
女性「こんなに痩せて…ぼうや、何日も食べてないの?」
少年は贖罪しょくざいの気持ちに耐えきれず言葉があふれた。
少年「ぼくは!悪魔の!手先です!迷い人を悪魔の元へ導くのがぼくの仕事です!」
突然の大声に驚く彼女、目を大きく見開き口をぽかりと開けている。
しかし顔は直ぐにけわしく変わり、それからこちらを真っ直ぐと見た。
女性「じゃあ、悪魔様に会わせて下さい。お願いします。」
風が二人の間を通り花びらを舞い上げた。


。。。

いいのだろうか。
女性「なんだか随分ずいぶん遠回りしてる気がするわね…」
少年の一歩後ろを歩きながら、きょろきょろと周りを見回す彼女。
昼間なのにわずかしか日光が差し込まない、薄暗い森の中を二人で歩く。
迷い人に接触すること自体禁じられているのに、その迷い人を家に連れて行くなんて…
ましてやあいつに会わせてこの人は大丈夫なのか…
少年「ぼくは平気ですが、お姉さんは決まった道を通らないと迷うだけで目的地に着かないので…」
真っ直ぐ前を見て、淡々と歩きながら少年が言う。
女性「へぇ~、これが迷いの森パワーね…」
彼女はさっきからよく喋る。
やたらぼくの私生活も聞いてくる。
食事はちゃんと摂っているのかとか
いつからこの仕事をしているのかとか
悪魔はどんなやつかとか。
未だに正直に答えていいのか分からず誤魔化ごまか誤魔化ごまかし流している。
女性「なぜこんな仕事をしているの?」
少年「…好きでやってるんじゃないです。」
少年は少し顔が曇ったが、前を見たまま、少し間を開けて答える。
女性「…悪魔様とはどういう関係?」
一番答えたくない質問が来てしまった。
少年「…言いたくありません。」
いっそ正直に答えた。
女性「そう…」
そう一言言うと、彼女は急に静かになった。
片肘かたひじを持ちあごに手を当てて黙り込み、何か考えている様子だ。
そこで少年はハタと足を止める。
着いてしまった…
土壁つちかべ茅葺かわぶきき屋根、平屋ひらや一軒家いっけんや
家に着いた。
しかしあいつの影はない。
やはり放浪中ほうろうちゅうだ…
現れるのは来週か再来週か
はたまた1ヶ月後か…
女性「まあ!なかなか立派なお家ね。」
彼女は物珍ものめずらしそうに辺りを見回している。
連れて来てしまったものはしょうがない。
訳も分からぬまましばらく彼女を泊めることになった。
少年(食べ物を集めなきゃ…)

つづく。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

騎士団長のお抱え薬師

衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。 聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。 後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。 なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。 そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。 場所は隣国。 しかもハノンの隣。 迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。 大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。 イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。 ※84話「再訪のランス」~画像生成AIで挿絵挿入しています。 気分転換での画像生成なので不定期(今後あるかは不明ですが)挿絵の注意をしてます。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

処理中です...