異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜

文字の大きさ
8 / 176

第8話 入学式

 全く記憶にない冒険者育成学園の高等部に入学することになったが、いったん様々な疑問は棚上げして入学式が行われる多目的ホールに移動することにした。ちなみに妹の瑠璃は冒険者育成学園の中等部に通っているらしいので校門のところで別れている。

 入学式が開始するまで多少の時間があるので、とりあえず現状について整理をしよう。ホール内に並べられていた席のうちの1つに座り考えこむ。

 僕はもともとこの地域で頭が良くも悪くもない人が通う、言うなれば平均的な頭の子が通う高校に入学するはずであった。そもそも冒険者育成学園なんてものは僕が知る限りでは存在していなかったはずである。

 冒険者と聞くと異世界で冒険者ギルドという扶助ふじょ組織に集められた依頼をこなしたり、ダンジョン探索で財宝を求めていた人たちのことが思い浮かぶ。

 しかし魔物もダンジョンもない現代社会で冒険者といわれると、某密林などの人類未踏の地などを探索する人たちのイメージしか出てこない。

(しかし、どちらかというと探検家という言い方のほうがしっくりくるな)

 未知を求める人たちの呼び方に悩んでいると、近くに来ていた5人組の男子生徒に突然声をかけられる。

「おい、お前見ない顔だな。外部生はこんなところに座っていないで後ろの席に移動しろ」

「あれ、もしかして座る席って決まってた?」

 声をかけてきた男子学生を確認すると特に見知った顔ではなく、初対面の人に対してとは思えない高圧的な態度に少し驚く。僕の周りには5人が並んで座れる席は空いているため、自分が席を間違えてしまったのかもしれないと考え確認する。

「知らねーのか?前の席は内部生のものなんだよ」

「こんなことも外部生はしらねーのかよ」

「だから外部生はさっさと後ろのほうの席に移動しな」

 席を間違っていたわけではないようだが、5人組にまるでヤンキーのような絡まれ方をされ、面倒だと思い席を移動することにする。面倒な人物の顔を覚えておくため、頭の中で彼らをヤンキーAと愉快な仲間たちと仮に名付けることにする。

「ごめんごめん、そうだったとは知らなかったよ。じゃあ後ろの席に移動させてもらうね」

「お前さっきからナマイキだな、俺が誰だかわからないのか?」

 面倒ごとを避けるためにもさっさと席を移動しようと立ち上がるが、ヤンキーAが席を移動しようする僕の道を塞いでくる。もう一度目の前にいるヤンキーAの顔を見てみるが、やはり知り合いではなさそうだ。そうとなると実は有名人なのであろうか?残念ながら僕はテレビをあまりみないから有名人はわからない。

「う~ん、悪いけど君のことはわからないや。ごめんね」

 少し考えても彼のことはわからなかったので正直に答える。僕の答えを聞いたヤンキーAはショックを受けたような顔で動かなくなってしまった。

「お前、この人は内部生序列30位の御子柴満仁みこしばみつひとさんだぞ!」

「冒険者チャンネルでも登録者が1000人越えの配信者なんだからな!」

 動かなくなったヤンキーA、もとい御子柴君の横をすり抜け席を移動する。僕の背後から聞き覚えのない単語が沢山聞こえてくるが、これ以上彼らと一緒の場所にいると本格的に面倒な事になりそうなので振り返らずに足早にその場を離脱する。

 後ろのほうの席はすでに多くの人が座っていたが、運よく並びで空いている席を見つけられたのでそこに着席をする。

 先ほど変に絡まれ疲弊してしまったため誰かと話す元気が出ない僕は、自分の周りに誰も座らないことを祈りつつ入学式が始まるのを待つ。しかし僕の祈りは天に届かず隣の席に女子生徒が座ってきた。

 その女子生徒は綺麗な銀色の髪を背中まで伸ばしていて、白い星型のような花を象ったヘアピンをつけている。銀色の髪が珍しくてまじまじと見てしまったためか、その女子生徒は少し不機嫌そうにこちらをちらりと一瞥してきた。

「……ジロジロとみてるけど何か用?」

「ごめん。綺麗な銀色の髪だなと思って見すぎちゃった」

「……そう」

 焦ってしまった結果、謝罪と同時に率直な感想が出てしまう。僕は純粋に綺麗な髪だと思ったが初対面の人にいうようなセリフではないと思う。彼女の返事にも呆れというか軽蔑のニュアンスが含まれているような気がする。

(初対面の人の髪色が綺麗ですね、なんて見方によっては変態だな……。まずったなぁ……)

 髪色が綺麗だと思ったことは事実ではあるが、伝え方が良くなかったと脳内で猛反省する。しかしドン引きしたと思われる彼女は席を離れることもなく前を向いている。ひとまず席を離れるほどの好感度低下にならなかったことに安堵し、次に会話の機会があったときは失敗しないようにしようと心に誓う。

「……霜月美銀しもつきみかね。あなたは?」

「えっ?ああ、僕は小鳥遊優人っていうんだ。よろしくね霜月さん」

「うん、よろしく。……小鳥遊君」

 最初は僕に対して話しかけてきているとは思わず、唐突に始まった自己紹介に慌てて返事を返す。霜月さんの表情にあまり変化は見られないが心なしか満足げに見える。次の会話を失敗しないようしようと思った矢先であったので、彼女の反応に安堵する。

 これは学園最初の知り合いができたということで良いのであろうか?もちろん御子柴君と愉快な仲間たちはカウントに入れていない。

「……小鳥遊君は外部生?」

「うん。中学校はこことは違う学校に通ってたよ」

「それじゃあ、私と一緒」

 一言二言話す霜月さんと返事をする僕。会話が盛り上がっているとは言えないかもしれないが、学園で初めての知り合いとの会話を楽しむ。それにしても彼女の会話は独特のテンポを持っている。

 霜月さんとお喋りを楽しんでいると、マイクを通してホール全体に落ち着いた雰囲気の大人の女性の声が響く。

「皆さんお静かに。これより冒険者育成学園高等部の入学式を始めます。まずは校長より挨拶があります」

「ご紹介に与かりました校長の田中です。まずは皆さん冒険者育成学園高等部にご入学おめでとうございます」

 壇上に上がってきた校長のそのような挨拶から冒険者育成学園高等部の入学式と僕の学園生活は始まった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜

鮒捌ケコラ
ファンタジー
入学式から3週間目にして『退学」を言い渡された。 (早くない?RTAじゃないんだからさ。) 自分で言うのもアレだけど、入学してからは結構真面目に通ってた。 けど、どうやら教員の不況を買ってしまったらしい。 幸か不幸か、退学まで1週間の執行猶予が与えられた。 けど、今更どう足掻いても挽回する事は不可能だろうし、 そもそも挽回する気も起こらない。 ここまでの学園生活を振り返っても 『この学園に執着出来る程の魅力』 というものが思い当たらないからだ。 寧ろ散々な事ばかりだったな、今日まで。 それに、これ以上無理に通い続けて 貴族とのしがらみシミッシミの薬師になるより 故郷に帰って自由気ままな森番に復職した方が ずっと実りある人生になるだろう。 私を送り出した公爵様も領主様も、 アイツだってきっとわかってくれる筈だ。 よし。決まりだな。 それじゃあ、退学するまでは休まず毎日通い続けるとして…… 大人しくする理由も無くなったし、 これからは自由気ままに、我儘に、好き勝手に過ごす事にしよう。 せっかくだし、教員達からのヘイトをカンストさせるのも面白そうだ。 てな訳で……… 薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。 …そう息巻いて迎えた執行猶予満了日、 掲示板に張り出された正式な退学勧告文を 確認しに行ったんだけど…… どういう事なの?これ。

畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜

グリゴリ
ファンタジー
 木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。  SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。  祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。  恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。  蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。  そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。  隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた