異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜

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第153話 ナンパ男はストーカー男

「まだ付いてきてる!おにぃ!あれ、何とか追い払えないの?」

 妹の声に後ろを振り向くと、先ほど声を掛けてきたキザ男は距離を置いて僕たちの後ろをついてきている。妹にかなり強い口調で拒絶されたのだが、何食わぬ顔で付いてきている姿を見るとかなりの強心臓なのかもしれない。……もしかするとナンパをする人間というのは、あの程度でへこたれるようではだめなのかもしれないな。

 辺り一面が草原となっているリブレダンジョンで、向かう先が同じという可能性は少ない。つまり彼は意図的に僕たちの後ろをつけ回してきているのだろう。……これではナンパ男というよりは、ただのストーカーである。

「まぁ……言葉で注意してもダメだったし、流石に力づくで追い払うこともできないからな……」

「もう!感じ悪いよね!」

 意図的に付いてきているのを察して先ほど口頭で注意を促しはしたのだが、彼は僕の言葉に聞く耳を持たず、妹たちに熱心に声を掛けていた。その際に魔法は使われていなかったようだが、彼女たちは一切目を合わせることなく厳しめに対応していた。しかしながら、そんな拒絶の態度や言葉を聞いた彼は何故か嬉しそうに微笑むという、まるで変態チックな反応をしていたのだ。

 恐らく僕たちは高校生と中学生という見た目からして若いので、口頭で注意しようとも彼に対する圧力は少ないのだろう。簡単に言うと、舐められているというわけである。

 こうなると力づくで追い払うことも視野に入れなければならないが、例えダンジョンの中だとしても、こちらに直接危害を加えてきていない人物を排除するのはよろしくないと判断して保留にしている。

 そのような一連の流れを経験したので、口頭での説得は諦め、無視をすることに決めたのだが、妹はただひたすらこちらを追いかけまわしてくる彼が気になってしまうようであった。まぁ、確かにストーカー行為をされて気分の良くなる人間はいないだろう。

 ここが街中であれば、周りの人に助けを求めるなり警察に通報をするなりしてストーカー行為に対応することが出来る。しかしここはダンジョン内であり、冒険者同士のトラブルは当事者同士で解決をしなけばならないのだ。

「……皆も気になるようなら今日はこれで終わりにして帰ろうか」

「えっ!?でも……」

「別に皆で探索できるのは今日が最後ってわけでもないんだし、また日を改めるのがいいんじゃないか?」

 僕の提案を聞いた妹はあからさまに残念そうな表情を浮かべる。恐らくこのメンバーで探索する時間をもっと楽しみたかったのだろう。しかし安全面で考えても、注意散漫になっている今の状態で探索を続けるよりは、仕切り直した方が良いので何とか妹を説得する。……なんだかんだ言ってこの4人で探索をする機会は直ぐに訪れる予感がするのは気のせいじゃないだろう。

「……わかった。今日は終わりにしよ。……次はいつ探索に来る?来週?」

「いや、それは皆の都合を聞いてから……」

「私は、来週も大丈夫……」

「私も予定はないので行けますよ」

「やった~!それじゃあ来週もこのダンジョンを探索ね!」

 あれよあれよという間に女性陣によって次回のダンジョン探索の予定が立てられていく。……僕の都合は誰も気に留めてくれないようだが、落ち込んでいた妹が元気になったので、まぁいいだろう。

 今日の探索はこれで終わりにするということで話がまとまったので、残念ではあるが帰路に就くため進行方向をUターンさせる。すると当然ではあるが、元凶となった男と顔を合わせることになり、彼は顔に笑みを浮かべてこちらに声を掛けてくる。

「やはり僕のことが気になるのかい?それならそこの男の子は放って僕と一緒に遊ばないかい?」

「私たちはもう帰るのでお一人でどうぞ!」

 若干自意識過剰ナルシストが入っているストーカー男に、妹は今までの鬱憤をぶつけるように言葉を返す。先ほどもこのようなやり取りをしているのに、よくぞ彼は心が折れないものである。

 そのまま足を止めずに彼の横を通り抜け、ダンジョンの出口に向かって進み続ける。この後に彼が付いてこようがこまいが僕たちには関係がないので、何を言われようが気にしないつもりであった……が、彼の口から出てきた言葉に僕は足を止めてしまうことになる。

「……それは困るな。僕の……いや、俺の魔法の秘密を知った人間はここでいなくなってもらおうか!」

 そう言葉を発した後、武器を構えたストーカー男がいきなり僕たちの背後から襲い掛かってくる。狙いは一番後ろにいたすみれちゃんのようで、両手で握られた長剣が上段から振り下ろされ、彼女の背中に吸い込まれていく。

「なにっ!」

 しかし、凶刃がすみれちゃんの柔肌を切り裂く直前でバックラーで長剣を横に弾き、相手の鎧を蹴り飛ばすことで無理やり彼女との距離を空ける。

「女性を背後から襲うなんて、やっぱりナンパ男じゃなくてストーカーだったのかな?」

「ぐっ……。何故奇襲に気が付いた!?」

「え?いや、だって最初に声を上げてたし……」

 どうやら彼は奇襲攻撃を止められたことに驚いていたようだが、初めに声を出していた時点で奇襲の意味を成していないことに気が付かなかったのだろうか。そうであれば少し残念な頭をしているのかもしれない。

「多分……速くて驚いただけ。……すみれちゃん大丈夫?」

「はい、何とか。……全く反応できませんでした」

 後ろから霜月さんの冷静な声とすみれちゃんのか細い声が聞こえる。僕も声を掛けてあげたいが目の前の男との戦闘に集中するべきだろう。

(先に仕掛けてきたのはそっちだからな……)

 こちらに対して明確に危害を加えようとしてきた男をこのまま見逃すわけにはいかない。崩れた態勢を立て直している男を僕の中で敵と見定めて、これから始まる戦闘に備え集中をしていくのであった。
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