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第三話
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わたしは、ほかの子と少し違う。
それは、昔からなんとなくわかっていた。ケガも、病気もしたことがない。転んで擦りむいても、気づけば血は止まり、痛みもすぐに消えてしまう。風邪が流行っても、わたしだけは平気だった。いつでも、まるで何かに守られているようだった。
だけど、それだけじゃない。
──あの日のこと。
まだわたしが四歳の頃だった。朝食のスープに入っていたキノコが、なんだか黒くモヤモヤと煙のように見えて、不思議な感じがした。でも、誰も気にしていないみたいだったから、わたしも黙っていた。
スプーンですくって、口に入れた。味は、ふつう。苦くも辛くもない。ただ──嫌な感じだけが、喉の奥に残った。
その日の午後、年上の子たちが次々と具合を悪くした。熱が出て、手足がしびれると言って、ベッドに伏せってしまった。
ノエル先生が薬草を煎じ、看病に走り回る中、わたしだけはケロリとしていた。
(あの黒いもや……あれが、なにか関係してるのかな)
でも、誰にも言えなかった。変だと思われたくなかったし、自分でもよくわからなかったから。
しばらくして、ノエル先生が、庭の隅で草花について教えてくれた日のことだった。
「ルミナ。野草には、食べられるものと、食べてはいけないものがある。間違えたら、大変なことになるんだ。」
先生は、一枚の紙にいくつかの草の名前と特徴を書き込んでいった。その中に、見覚えのある文字があった。
『毒』
それを見た瞬間、胸がざわっとした。
「せんせい、この字……見たことある」
「うん? どこで見たんだい?」
「……このまえ、キノコに黒いもやといっしょに浮かんでた。お皿の上で、すこしだけ……」
ノエル先生は一瞬だけ目を細め、それから静かに頷いた。
「そうか。君には、そう見えていたんだね。ルミナ、それはね、とても特別なことなんだ。」
「とくべつ……?」
「うん。君には、“毒”を見分ける力があるのかもしれない。ただ目で見るだけじゃなく、何か──もっと深いところで、感じ取っている。」
わたしは、先生の言葉を反芻しながら、紙の文字をもう一度見つめた。
たしかに。あの時のモヤモヤの中に、この字があった。
「じゃあ……わたし、この力で……みんなを守れる?」
「もちろんさ。君がそれを望むなら、その力はきっと、誰かの希望になる。」
先生は、わたしの肩に手を置いて、静かに微笑んだ。
その日から、わたしは草花や薬草にもっと興味を持つようになった。
毎朝、ノエル先生と一緒に庭を歩き、葉の形や茎の色、花の咲き方を観察した。ノートに絵を描いたり、草の匂いを比べたり。何かを知るたびに、心の奥があたたかくなる。
ある日、近くの森に散歩に行ったとき、道端に咲いていた赤い花の茂みに、また黒いもやが見えた。わたしは近づいて確認すると、あの『毒』の字がふわっと浮かび上がった。
「せんせい、この花……たぶん、食べたらダメ」
「……おお、正解だ。これは“レッドナイト”っていう有毒の草花だ。君の感覚は、本物だね」
先生が感心したように言ってくれたとき、胸がじんと熱くなった。
(わたし……やっぱり、ちょっと変わってるのかもしれない。でも、変わってることが、悪いことじゃないなら──)
たまに、黒くもやもやとした影が見えるときがある。でも今は、怖くない。
だって、それが「毒」だとわかったから。
もし、わたしがそれに気づけたら、誰かが困る前に助けられるかもしれない。
その力が、特別であっても。
わたしは、わたしのままで、生きていきたい。
先生が言ってくれた。「君がそれを望むなら、その力はきっと、誰かの希望になる」って。
だからきっと、大丈夫。
その言葉がある限り、わたしは前を向いて歩ける気がする。
たとえ、これからもっと「違う」と思うことが増えても、わたしはわたしの光を信じていきたい──
それは、昔からなんとなくわかっていた。ケガも、病気もしたことがない。転んで擦りむいても、気づけば血は止まり、痛みもすぐに消えてしまう。風邪が流行っても、わたしだけは平気だった。いつでも、まるで何かに守られているようだった。
だけど、それだけじゃない。
──あの日のこと。
まだわたしが四歳の頃だった。朝食のスープに入っていたキノコが、なんだか黒くモヤモヤと煙のように見えて、不思議な感じがした。でも、誰も気にしていないみたいだったから、わたしも黙っていた。
スプーンですくって、口に入れた。味は、ふつう。苦くも辛くもない。ただ──嫌な感じだけが、喉の奥に残った。
その日の午後、年上の子たちが次々と具合を悪くした。熱が出て、手足がしびれると言って、ベッドに伏せってしまった。
ノエル先生が薬草を煎じ、看病に走り回る中、わたしだけはケロリとしていた。
(あの黒いもや……あれが、なにか関係してるのかな)
でも、誰にも言えなかった。変だと思われたくなかったし、自分でもよくわからなかったから。
しばらくして、ノエル先生が、庭の隅で草花について教えてくれた日のことだった。
「ルミナ。野草には、食べられるものと、食べてはいけないものがある。間違えたら、大変なことになるんだ。」
先生は、一枚の紙にいくつかの草の名前と特徴を書き込んでいった。その中に、見覚えのある文字があった。
『毒』
それを見た瞬間、胸がざわっとした。
「せんせい、この字……見たことある」
「うん? どこで見たんだい?」
「……このまえ、キノコに黒いもやといっしょに浮かんでた。お皿の上で、すこしだけ……」
ノエル先生は一瞬だけ目を細め、それから静かに頷いた。
「そうか。君には、そう見えていたんだね。ルミナ、それはね、とても特別なことなんだ。」
「とくべつ……?」
「うん。君には、“毒”を見分ける力があるのかもしれない。ただ目で見るだけじゃなく、何か──もっと深いところで、感じ取っている。」
わたしは、先生の言葉を反芻しながら、紙の文字をもう一度見つめた。
たしかに。あの時のモヤモヤの中に、この字があった。
「じゃあ……わたし、この力で……みんなを守れる?」
「もちろんさ。君がそれを望むなら、その力はきっと、誰かの希望になる。」
先生は、わたしの肩に手を置いて、静かに微笑んだ。
その日から、わたしは草花や薬草にもっと興味を持つようになった。
毎朝、ノエル先生と一緒に庭を歩き、葉の形や茎の色、花の咲き方を観察した。ノートに絵を描いたり、草の匂いを比べたり。何かを知るたびに、心の奥があたたかくなる。
ある日、近くの森に散歩に行ったとき、道端に咲いていた赤い花の茂みに、また黒いもやが見えた。わたしは近づいて確認すると、あの『毒』の字がふわっと浮かび上がった。
「せんせい、この花……たぶん、食べたらダメ」
「……おお、正解だ。これは“レッドナイト”っていう有毒の草花だ。君の感覚は、本物だね」
先生が感心したように言ってくれたとき、胸がじんと熱くなった。
(わたし……やっぱり、ちょっと変わってるのかもしれない。でも、変わってることが、悪いことじゃないなら──)
たまに、黒くもやもやとした影が見えるときがある。でも今は、怖くない。
だって、それが「毒」だとわかったから。
もし、わたしがそれに気づけたら、誰かが困る前に助けられるかもしれない。
その力が、特別であっても。
わたしは、わたしのままで、生きていきたい。
先生が言ってくれた。「君がそれを望むなら、その力はきっと、誰かの希望になる」って。
だからきっと、大丈夫。
その言葉がある限り、わたしは前を向いて歩ける気がする。
たとえ、これからもっと「違う」と思うことが増えても、わたしはわたしの光を信じていきたい──
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