義姉をいびり倒してましたが、前世の記憶が戻ったので全力で推します

一路(いちろ)

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第九話 裁きの舞踏会

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煌びやかな音楽が、王宮の大広間に鳴り響く。
各地の貴族たちが集い、国王陛下の御前にて開かれる華やかな舞踏会――その中心に、セリーヌ様は立っていた。

宝石を散りばめた淡青のドレスに、夜空のように澄んだ瞳。
その姿に、誰もが息を呑む。

(ああ……やっぱり、推しは世界一だ……)

私は遠目から彼女を見つめながらも、心の奥底に渦巻く緊張を抑え込んでいた。
今日、この場こそ――黒幕ローレンス公爵の罪を暴き、彼女を狙う陰謀を打ち砕く舞台なのだから。

「諸君」

壇上に立ったのは、その当のローレンス公爵だった。
朗らかな笑みを浮かべ、穏やかに語り出す。

「本日は陛下に感謝を捧げるとともに、この国の未来を語り合うために集った。……しかし、未来を守るためには、不要な芽を摘まねばならぬ」

会場にざわめきが走る。
公爵はゆっくりと視線をセリーヌ様に向けた。

「アルバート家の元令嬢、セリーヌ。……その光は強すぎる。王家すら凌ぐほどの才を持つ彼女は、秩序を揺るがしかねない。諸君、どう思う?」
「なんと……」
「秩序を揺るがす、だと……?」

貴族たちがざわめく中、公爵の言葉は毒のように広がっていく。
――このままでは、彼女が「国を乱す危険因子」として糾弾される。

私は胸元に隠した文書を握りしめ、一歩前へ進んだ。

「お待ちくださいませ!」

私の声が響き、視線が一斉に集まる。
足が震える。それでも、退くわけにはいかなかった。

「公爵の言葉は、すべて欺瞞です!」

場の空気が凍りつく。
公爵がゆっくりと私を見下ろした。

「……アリシア嬢。何を根拠にそんな暴言を?」

私は懐から羊皮紙を取り出し、高らかに掲げた。

「証拠はここにございます! 資金の流れ、密輸の記録、軍備の不正拡充――すべてあなたが裏で糸を引いていた証です!」

会場にどよめきが広がった。
国王の瞳が鋭く光り、側近が証拠を受け取る。

「これは……確かに、公爵の署名が……!」

証拠が読み上げられるたびに、貴族たちの表情が変わっていく。
さきほどまでセリーヌ様を疑っていた視線が、今度は公爵へと突き刺さる。

「……ほう」

それでもローレンス公爵は、微笑を崩さなかった。

「随分と調べてくれたものだ。だが、これらは全て偽造だとしたら?」
「偽造ではありません!」

私は声を張り上げる。

「公爵の配下アルノー卿が残した記録とも一致しています。あなたが国を我が物にしようと動いていたことは明白!」

さらに、騎士団長が前に出た。

「陛下、この場にて証人をお連れしました!」

扉が開き、拘束されたアルノー卿が引き立てられてくる。
会場に再びざわめきが走った。

「私は……すべて、公爵の命令で……!」

その言葉が突き刺さった瞬間、公爵の表情にわずかな影が走った。

「……裏切ったか、アルノー」

低い声に、会場が息を呑む。
温厚な仮面が剥がれ落ち、冷酷な本性が滲み出る。

「いいだろう。認めてやる。私はこの国を導くつもりだった。……だが、凡庸な王とその取り巻きが国を腐らせるくらいなら、私が支配する方がましだ」

堂々とした言葉に、会場は一瞬混乱した。
だが、国王が立ち上がり、厳然とした声を放つ。

「ローレンス公爵! 汝の野望は明らかに国家への反逆! この場で拘束する!」

騎士たちが一斉に取り囲み、公爵の兵たちも押さえ込まれる。
ローレンスは最後に、私を一瞥した。

「……小娘一人に、ここまで翻弄されるとはな」

その瞳に、かすかな憎悪と……そしてわずかな興味が混じっていた。
次の瞬間、鎖に縛られ、彼は連行されていった。

会場に重苦しい沈黙が落ちる。
やがて、誰かが拍手を始めた。
次第にその音は広がり、ついには大広間を埋め尽くした。

「セリーヌ様万歳!」
「アルバート家に栄光あれ!」

推しを称える声が響き渡る。
セリーヌ様は驚いたように瞬きをし、やがて私を見つめた。

「……アリシア。本当に……ありがとう」

その瞳には、確かな信頼が宿っていた。
胸が熱くなる。

(ああ……推しに感謝された……尊すぎて死にそう……!)

私は全身で歓喜をかみしめつつ、心の中で固く誓った。

(これで終わりじゃない。推しが幸せでいられるよう、私はこれからも全力で推し活する!)
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