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第十話 余波のざわめき
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ローレンス公爵が連行されてから数日。
王都はまるで嵐の後の静けさのように、張り詰めた空気をまとっていた。
だが、それは決して安堵だけの静けさではなかった。
公爵ほどの大物が失脚すれば、その権力の空白を狙って動く者たちが必ず現れる。
私は屋敷の書斎で報告書の束をめくりながら、頭を抱えた。
(案の定……あちこちで小競り合いが起きてる……! 貴族同士の派閥争い、商人ギルドの買収合戦、軍の人事混乱……)
尊き推しを守る戦いは、まだ終わっていなかった。
「アリシア」
静かな声が背後から響く。振り返れば、セリーヌ様が立っていた。
深い群青のドレスに身を包んだ彼女は、以前よりも気丈な雰囲気を漂わせている。
「あなたが頑張ってくれているのは知っているわ。でも、無理はしないで」
「無理だなんて、とんでもありません!」
私は慌てて立ち上がり、胸を張った。
「推しのためなら徹夜三日くらい余裕です!」
……思わず本音が出てしまった。
セリーヌ様は小さく笑い、首を振った。
「本当にあなたって……変わった人」
その微笑みが尊すぎて、心臓に悪い。
だが、和やかなひとときも長くは続かなかった。
突然、扉が乱暴に開かれ、執事が駆け込んでくる。
「お嬢様、緊急の知らせです! 東部の国境にて、隣国の軍が不穏な動きを……!」
「なにっ!?」
思わず声が裏返った。
どうやら、ローレンス公爵が密かに結んでいた隣国との裏取引が暴かれ、その余波で軍事的緊張が高まっているらしい。
「くっ……やっぱりあの男、国内だけじゃなく国外にまで根を張ってたのか!」
セリーヌ様は沈痛な面持ちで呟いた。
「……このままでは戦争に発展する可能性もあるわ」
その後、王城で開かれた緊急会議に、私たちも出席を命じられた。
大広間の空気は重く、貴族や軍人たちの間で罵声が飛び交う。
「公爵のせいで隣国に隙を与えたのだ!」
「責任はアルバート家にもあるのではないか! セリーヌ様が後継として力を持つから……!」
矛先がセリーヌ様に向かい始める。
私は思わず椅子を蹴って立ち上がった。
「推しに責任を押し付けるんじゃありません! セリーヌ様がいなければ、公爵の陰謀は今も続いていたんですよ!」
場の空気が一瞬止まる。
国王が咳払いをし、静かに告げた。
「……確かに、セリーヌ嬢の働きなくして、今回の件は明るみに出なかっただろう。だが、問題はその後だ。アルバート家の影響力が強まりすぎれば、また新たな不満が生じる」
私は唇を噛みしめた。
守ったはずの推しが、またもや矢面に立たされている。
(なんでだよ……推しはただ優しくて、人のために尽くしてるだけなのに! どうして尊さが理解されないんだ!?)
拳を握りしめて俯いていると、セリーヌ様の声が響いた。
「陛下。もしも私の存在が争いの種となるのなら、私は地位を返上しても構いません」
「セリーヌ様!?」
思わず叫んだ。
「そんなこと言わないでください! あなたは希望なんです! 人々にとっても、私にとっても!」
会議場がざわめく。
セリーヌ様は静かに微笑み、私を見つめた。
「……ありがとう。でもね、アリシア。私はただ、誰かの幸せの役に立ちたいだけなの」
その言葉は揺るぎなく、しかしあまりに切なく響いた。
結局その場は、王国として隣国に使節団を送り、和平交渉を試みるという決定で収まった。
だが帰り道、私は心に誓う。
(……推しを守るだけじゃ足りない。推しが本当に安心して笑える場所を作らなきゃいけないんだ!)
屋敷に戻ると、密かに動いていた騎士団の青年が私に耳打ちした。
「アリシア嬢。実はまだ、ローレンス公爵に連なる別の派閥が残っている。……連中が、セリーヌ様を再び狙う可能性がある」
胸に冷たいものが走る。
戦いは終わっていない。むしろ、新たな嵐の前触れにすぎなかった。
夜。
窓辺に座るセリーヌ様を見つめながら、私は心の中で改めて誓った。
(公爵を倒しても、戦争が迫っても、派閥が動こうとも――絶対に推しを守る。今度こそ、この手で、幸せを掴ませてみせる!)
その瞳の先には、まだ見ぬ未来の影が広がっていた。
王都はまるで嵐の後の静けさのように、張り詰めた空気をまとっていた。
だが、それは決して安堵だけの静けさではなかった。
公爵ほどの大物が失脚すれば、その権力の空白を狙って動く者たちが必ず現れる。
私は屋敷の書斎で報告書の束をめくりながら、頭を抱えた。
(案の定……あちこちで小競り合いが起きてる……! 貴族同士の派閥争い、商人ギルドの買収合戦、軍の人事混乱……)
尊き推しを守る戦いは、まだ終わっていなかった。
「アリシア」
静かな声が背後から響く。振り返れば、セリーヌ様が立っていた。
深い群青のドレスに身を包んだ彼女は、以前よりも気丈な雰囲気を漂わせている。
「あなたが頑張ってくれているのは知っているわ。でも、無理はしないで」
「無理だなんて、とんでもありません!」
私は慌てて立ち上がり、胸を張った。
「推しのためなら徹夜三日くらい余裕です!」
……思わず本音が出てしまった。
セリーヌ様は小さく笑い、首を振った。
「本当にあなたって……変わった人」
その微笑みが尊すぎて、心臓に悪い。
だが、和やかなひとときも長くは続かなかった。
突然、扉が乱暴に開かれ、執事が駆け込んでくる。
「お嬢様、緊急の知らせです! 東部の国境にて、隣国の軍が不穏な動きを……!」
「なにっ!?」
思わず声が裏返った。
どうやら、ローレンス公爵が密かに結んでいた隣国との裏取引が暴かれ、その余波で軍事的緊張が高まっているらしい。
「くっ……やっぱりあの男、国内だけじゃなく国外にまで根を張ってたのか!」
セリーヌ様は沈痛な面持ちで呟いた。
「……このままでは戦争に発展する可能性もあるわ」
その後、王城で開かれた緊急会議に、私たちも出席を命じられた。
大広間の空気は重く、貴族や軍人たちの間で罵声が飛び交う。
「公爵のせいで隣国に隙を与えたのだ!」
「責任はアルバート家にもあるのではないか! セリーヌ様が後継として力を持つから……!」
矛先がセリーヌ様に向かい始める。
私は思わず椅子を蹴って立ち上がった。
「推しに責任を押し付けるんじゃありません! セリーヌ様がいなければ、公爵の陰謀は今も続いていたんですよ!」
場の空気が一瞬止まる。
国王が咳払いをし、静かに告げた。
「……確かに、セリーヌ嬢の働きなくして、今回の件は明るみに出なかっただろう。だが、問題はその後だ。アルバート家の影響力が強まりすぎれば、また新たな不満が生じる」
私は唇を噛みしめた。
守ったはずの推しが、またもや矢面に立たされている。
(なんでだよ……推しはただ優しくて、人のために尽くしてるだけなのに! どうして尊さが理解されないんだ!?)
拳を握りしめて俯いていると、セリーヌ様の声が響いた。
「陛下。もしも私の存在が争いの種となるのなら、私は地位を返上しても構いません」
「セリーヌ様!?」
思わず叫んだ。
「そんなこと言わないでください! あなたは希望なんです! 人々にとっても、私にとっても!」
会議場がざわめく。
セリーヌ様は静かに微笑み、私を見つめた。
「……ありがとう。でもね、アリシア。私はただ、誰かの幸せの役に立ちたいだけなの」
その言葉は揺るぎなく、しかしあまりに切なく響いた。
結局その場は、王国として隣国に使節団を送り、和平交渉を試みるという決定で収まった。
だが帰り道、私は心に誓う。
(……推しを守るだけじゃ足りない。推しが本当に安心して笑える場所を作らなきゃいけないんだ!)
屋敷に戻ると、密かに動いていた騎士団の青年が私に耳打ちした。
「アリシア嬢。実はまだ、ローレンス公爵に連なる別の派閥が残っている。……連中が、セリーヌ様を再び狙う可能性がある」
胸に冷たいものが走る。
戦いは終わっていない。むしろ、新たな嵐の前触れにすぎなかった。
夜。
窓辺に座るセリーヌ様を見つめながら、私は心の中で改めて誓った。
(公爵を倒しても、戦争が迫っても、派閥が動こうとも――絶対に推しを守る。今度こそ、この手で、幸せを掴ませてみせる!)
その瞳の先には、まだ見ぬ未来の影が広がっていた。
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