6 / 13
第6話 浮気現場に遭遇して
しおりを挟む
莉緒を学校に送り出してから家事を終わらせ、昼食は何しようか考えていると携帯電話が鳴った。
夫からだろうかと思い、画面を見るとナオミさんの名前が表示されている。
いったい何の用だろう。
一昨日のことが思い出されて出るのをためらってしまう。
お気に入りの歌が鳴り続ける。
もう2度と会わないのなら、このまま出ないという選択肢もあるだろう。
だが、ナオミさんは莉緒の友だちのママ。
会わないということはありえない。
しかたない。
莉緒のためだ。
気まずい思いを押し殺して、電話に出る。
「はい」
「沙也加?」
まるで恋人にでも呼びかけるような親しげな声。
しかも呼び捨てだ。
「はい」
「今から出てこれない? 面白いものが見られるわよ」
「これから用事がありますから無理です」
別に用事などないが、うそをついた。
どうしても一昨日のことが頭から離れない。
顔を合わせるのが気まずいということもあるが、誘われるままノコノコ出て行けば、また何をされるかわからないという不安もある。
あのときの夫を裏切りかねないようなことはもうできない。
「来た方がいいと思うけど」
ナオミさんが意味ありげな言い方をする。
「どういうことですか?」
なんとなく気になった。
「編集者と打ち合わせがあって、Tホテルのロビーラウンジにいるんだけれど沙也加のよく知っている人がいるのよ。どうも泊っているみたい」
「私のよく知っている人って誰ですか?」
心当たりがない。
「それは来てのお楽しみ。きっとビックリするわよ」
気になる言葉を残してナオミさんとの電話は切れた。
Tホテルは一番安い部屋でも1泊数万円はする高級ホテルだ。
そんな高級ホテルに泊まるような知り合いはいないはずだが。
でも、ナオミさんがわざわざ電話してきたということは私の身近な人なんだろう。
ママ友の誰かだろうか。
私は他人のゴシップには興味がない。
無視しようかと思ったが、ナオミさんの声がなにか面白がっているように聞こえたのが気になった。
行ってみるだけ行ってみようか。
大したことなければさっさと帰ってくればいい。
私は高級ホテルでも恥ずかしくないように、できる限りの格好をして家を出た。
ホテルのロビーに入ると、すぐにナオミさんが近づいてきた。
「あら、今日は気合が入っているわね」
ナオミさんは冷やかすように言う。
私はいつもより念入りに化粧をし、持っている服の中で唯一のブランド品であるワンピースを着ていた。
「それより誰なんですか」
私はロビーを見まわした。
知っているような顔はどこにも見えない。
「こっちよ。間に合うかしら」
ナオミさんはホテルのフロントに向かって歩き出す。
フロントの前を通り過ぎると、エレベーターホールがあり数人がエレベーターを待っていた。
知っている顔はいないみたいだが。
「ほら、あそこ」
ナオミさんが指さす人を見た。
「えっ、まさか」
私は固まってしまった。
エレベーターを待っている人ごみの中に隠れるようにしている夫の横顔が見えた。
それも女の人とまるで恋人のように腕を組んでいる。
私は、目の前の光景がどうしても信じられなかった。
夫によく似た別人ではないだろうか。
きっと、見間違いだ。
家族思いの夫が私や莉緒を裏切るはずがない。
夫は出張に行っている。こんなところにいるはずがない。
私はそう思い込もうとした。
だが、何度見返してもその横顔は夫にしか見えない。
「ご主人でしょ」
私と夫が近くのスーパーで買い物をしているときに、ナオミさんと何度か会ったことがあった。
だから、ナオミさんは夫の顔を知っている。
夫らしき人は女の人と腕を組んだままエレベーターに乗り込み上がっていった。
どうやら泊っているみたいだ。
急にめまいがしてふらついた。
「大丈夫?」
ナオミさんが支えてくれる。
「締め切りがせまっているから、部屋を取っているの。少し休んでいったら」
とてもすぐに帰られるような気分ではない。
ナオミさんに支えられてエレベーターに乗った。
部屋に入ると、ナオミさんは私をソファーに座らせた。
「飲み物を持ってくるわね」
ナオミさんが冷蔵庫のほうに向かった。
部屋はスイートルームだ。
執筆のためとはいえ高級ホテルのスイートルームを取れるなんてすごい。
ナオミさんがどんな小説を書いているかは知らないが、きっと相当な売れっ子なんだろう。
「どうぞ。沙也加の好きな赤ワインよ」
テーブルの前にワイングラスが置かれる。
私は文句も言わずに無言で口をつける。
「でも、びっくりしたわ。まさか沙也加のご主人の浮気相手が志保さんだなんて」
夫と一緒にいた女の人は私とナオミさんがよく知っている人だった。
三崎志保さん。
莉緒の友だちマコちゃんのママ。
マコちゃんのパパは2年前に交通事故で亡くなっている。
志保さんはマコちゃんが生まれた後も仕事を続け、今は一流企業の三友物産本社で若くして営業課長になったバリバリのキャリアだ。
志保さんが忙しくて帰りが遅いときは、マコちゃんを預かったことは何度もあった。
さらにナオミさん、志保さん、ふうちゃんのママ裕子さんとママ友で何度かランチをしたこともある。
それなのに夫と浮気していたなんて信じられない。
やはり私の見間違いだ。
よく似た人を見てそう思っただけ。
夫が浮気なんかするわけがない。
そうに決まっている。
夫の会社に電話しようと思い立って、スマホを取り出し電話帳から以前の勤め先を選択する。
きっと夫は会社にいるはず。
「どこに電話するの?」
前のソファーに座ったナオミさんが私を見ている。
「夫の会社にです」
「そう」
ナオミさんはそれ以上は何も言わず、優雅に足を組んでワインを口に含んだ。
呼び出し音が鳴る。
心臓がバクバクしてくる。
お願い。会社にいて。
私は心から祈った。
「はい。新日光商事です」
交換の女性の声がした。
「営業部の柳井様をお願いします」
「営業部の柳井ですね。しばらくお待ちください」
ピアノの優しいメロディがしばらく流れて、「営業部です」という声が聞こえた。
「わたくし、柳井様の加入されている保険会社のものですが、契約のことで確認したいことがございまして、お電話を差し上げました。柳井様はいらっしゃいますか」
妻だと下手に名乗ると、あとでどんな噂が立つかわからない。
私も勤めていた会社なので電話を切ったあとの様子はだいたい想像ができる。
私のことを覚えている人がまだいるかもしれない。
当たり障りのない保険会社を名乗った。
「今日は休暇ですね」
「出張に行かれるようなことも聞いていたのですが、休暇ですか?」
夫は明日まで出張だと私に言っていた。電話に出た人の勘違いなのではないか。
「出張は昨日までです。今日と明日は休暇です」
「そうですか」
お礼の言葉も言わずに電話を切ってしまった。
夫は言っていたよりも早く出張から帰ってきている。
だが、家にはまだ帰ってきていない。
いや。ひょっとしたら、家に帰っているかもしれない。
一縷の望みをかけて、家に電話してみる。
呼び出し音は鳴るが、やはり誰も出ない。
夫のスマホにも電話をしたが、すぐに留守電に変わった。
会社の人が嘘をついているとは思えない。
嘘をついているのは夫だろう。
やっぱり、ホテルにいたのは夫だったんだと思い知らされた。
不思議と怒りの感情は沸いてこない。
ただ悲しいだけ。
私は夫を愛しているし、信じてもいる。
夫も私を愛してくれていると思っていた。
セックスがないのも本当に疲れているからだと信じていた。
夫は絶対に浮気をしない。そう信じていたから我慢もできた。
「それでどうだったの?」
ナオミさんがワイングラス片手に聞いてきた。
「出張からは帰ってきているそうです」
「会社にいたの?」
「いえ。今日は休暇だそうです」
「じゃあ、やっぱりあれはご主人だったのね」
「……」
夫はずっと私を裏切っていた。表向きはいい夫を演じながら、私を欺いていた。
『愛している』『君が一番大切だ』とか言っていたのも全部偽り。
私のことをもう愛していないんだ。
夫は私のことを女ではなく、家政婦ぐらいにしか思っていないのだろう。
志保はキャリアウーマンらしくスーツ姿が似合うキリっとした美人だ。
参観日のときに志保が教室に入ってくると、パパたちの視線を一斉に集めるぐらいに目を引く容姿をしている。
夫と志保がどこで知り合ったか、どうやって連絡を取り合っているのかはわからない。
だが、私に出張だと言っていながら、志保とホテルで会っているのだから夫が浮気をしていることは確実だ。
「どうする? 部屋を探し出して浮気現場に乗り込む?」
ナオミさんがなぜか楽しそうに言う。
人の不幸は蜜の味ということか。
私は首を横に振る。
このまま感情に任せて部屋に乗り込んでもいい結果にはならないような気がする。
まだ頭は混乱していて、どうしていいかよく分からない。
「これで沙也加も気が楽になったんじゃない」
「えっ」
ナオミさんが何を言いたいのか分からない。
「ご主人が楽しんでいるなら、沙也加も楽しまなくちゃ損ということよ」
ナオミさんが立ち上がって、私の手を引っ張った。
夫からだろうかと思い、画面を見るとナオミさんの名前が表示されている。
いったい何の用だろう。
一昨日のことが思い出されて出るのをためらってしまう。
お気に入りの歌が鳴り続ける。
もう2度と会わないのなら、このまま出ないという選択肢もあるだろう。
だが、ナオミさんは莉緒の友だちのママ。
会わないということはありえない。
しかたない。
莉緒のためだ。
気まずい思いを押し殺して、電話に出る。
「はい」
「沙也加?」
まるで恋人にでも呼びかけるような親しげな声。
しかも呼び捨てだ。
「はい」
「今から出てこれない? 面白いものが見られるわよ」
「これから用事がありますから無理です」
別に用事などないが、うそをついた。
どうしても一昨日のことが頭から離れない。
顔を合わせるのが気まずいということもあるが、誘われるままノコノコ出て行けば、また何をされるかわからないという不安もある。
あのときの夫を裏切りかねないようなことはもうできない。
「来た方がいいと思うけど」
ナオミさんが意味ありげな言い方をする。
「どういうことですか?」
なんとなく気になった。
「編集者と打ち合わせがあって、Tホテルのロビーラウンジにいるんだけれど沙也加のよく知っている人がいるのよ。どうも泊っているみたい」
「私のよく知っている人って誰ですか?」
心当たりがない。
「それは来てのお楽しみ。きっとビックリするわよ」
気になる言葉を残してナオミさんとの電話は切れた。
Tホテルは一番安い部屋でも1泊数万円はする高級ホテルだ。
そんな高級ホテルに泊まるような知り合いはいないはずだが。
でも、ナオミさんがわざわざ電話してきたということは私の身近な人なんだろう。
ママ友の誰かだろうか。
私は他人のゴシップには興味がない。
無視しようかと思ったが、ナオミさんの声がなにか面白がっているように聞こえたのが気になった。
行ってみるだけ行ってみようか。
大したことなければさっさと帰ってくればいい。
私は高級ホテルでも恥ずかしくないように、できる限りの格好をして家を出た。
ホテルのロビーに入ると、すぐにナオミさんが近づいてきた。
「あら、今日は気合が入っているわね」
ナオミさんは冷やかすように言う。
私はいつもより念入りに化粧をし、持っている服の中で唯一のブランド品であるワンピースを着ていた。
「それより誰なんですか」
私はロビーを見まわした。
知っているような顔はどこにも見えない。
「こっちよ。間に合うかしら」
ナオミさんはホテルのフロントに向かって歩き出す。
フロントの前を通り過ぎると、エレベーターホールがあり数人がエレベーターを待っていた。
知っている顔はいないみたいだが。
「ほら、あそこ」
ナオミさんが指さす人を見た。
「えっ、まさか」
私は固まってしまった。
エレベーターを待っている人ごみの中に隠れるようにしている夫の横顔が見えた。
それも女の人とまるで恋人のように腕を組んでいる。
私は、目の前の光景がどうしても信じられなかった。
夫によく似た別人ではないだろうか。
きっと、見間違いだ。
家族思いの夫が私や莉緒を裏切るはずがない。
夫は出張に行っている。こんなところにいるはずがない。
私はそう思い込もうとした。
だが、何度見返してもその横顔は夫にしか見えない。
「ご主人でしょ」
私と夫が近くのスーパーで買い物をしているときに、ナオミさんと何度か会ったことがあった。
だから、ナオミさんは夫の顔を知っている。
夫らしき人は女の人と腕を組んだままエレベーターに乗り込み上がっていった。
どうやら泊っているみたいだ。
急にめまいがしてふらついた。
「大丈夫?」
ナオミさんが支えてくれる。
「締め切りがせまっているから、部屋を取っているの。少し休んでいったら」
とてもすぐに帰られるような気分ではない。
ナオミさんに支えられてエレベーターに乗った。
部屋に入ると、ナオミさんは私をソファーに座らせた。
「飲み物を持ってくるわね」
ナオミさんが冷蔵庫のほうに向かった。
部屋はスイートルームだ。
執筆のためとはいえ高級ホテルのスイートルームを取れるなんてすごい。
ナオミさんがどんな小説を書いているかは知らないが、きっと相当な売れっ子なんだろう。
「どうぞ。沙也加の好きな赤ワインよ」
テーブルの前にワイングラスが置かれる。
私は文句も言わずに無言で口をつける。
「でも、びっくりしたわ。まさか沙也加のご主人の浮気相手が志保さんだなんて」
夫と一緒にいた女の人は私とナオミさんがよく知っている人だった。
三崎志保さん。
莉緒の友だちマコちゃんのママ。
マコちゃんのパパは2年前に交通事故で亡くなっている。
志保さんはマコちゃんが生まれた後も仕事を続け、今は一流企業の三友物産本社で若くして営業課長になったバリバリのキャリアだ。
志保さんが忙しくて帰りが遅いときは、マコちゃんを預かったことは何度もあった。
さらにナオミさん、志保さん、ふうちゃんのママ裕子さんとママ友で何度かランチをしたこともある。
それなのに夫と浮気していたなんて信じられない。
やはり私の見間違いだ。
よく似た人を見てそう思っただけ。
夫が浮気なんかするわけがない。
そうに決まっている。
夫の会社に電話しようと思い立って、スマホを取り出し電話帳から以前の勤め先を選択する。
きっと夫は会社にいるはず。
「どこに電話するの?」
前のソファーに座ったナオミさんが私を見ている。
「夫の会社にです」
「そう」
ナオミさんはそれ以上は何も言わず、優雅に足を組んでワインを口に含んだ。
呼び出し音が鳴る。
心臓がバクバクしてくる。
お願い。会社にいて。
私は心から祈った。
「はい。新日光商事です」
交換の女性の声がした。
「営業部の柳井様をお願いします」
「営業部の柳井ですね。しばらくお待ちください」
ピアノの優しいメロディがしばらく流れて、「営業部です」という声が聞こえた。
「わたくし、柳井様の加入されている保険会社のものですが、契約のことで確認したいことがございまして、お電話を差し上げました。柳井様はいらっしゃいますか」
妻だと下手に名乗ると、あとでどんな噂が立つかわからない。
私も勤めていた会社なので電話を切ったあとの様子はだいたい想像ができる。
私のことを覚えている人がまだいるかもしれない。
当たり障りのない保険会社を名乗った。
「今日は休暇ですね」
「出張に行かれるようなことも聞いていたのですが、休暇ですか?」
夫は明日まで出張だと私に言っていた。電話に出た人の勘違いなのではないか。
「出張は昨日までです。今日と明日は休暇です」
「そうですか」
お礼の言葉も言わずに電話を切ってしまった。
夫は言っていたよりも早く出張から帰ってきている。
だが、家にはまだ帰ってきていない。
いや。ひょっとしたら、家に帰っているかもしれない。
一縷の望みをかけて、家に電話してみる。
呼び出し音は鳴るが、やはり誰も出ない。
夫のスマホにも電話をしたが、すぐに留守電に変わった。
会社の人が嘘をついているとは思えない。
嘘をついているのは夫だろう。
やっぱり、ホテルにいたのは夫だったんだと思い知らされた。
不思議と怒りの感情は沸いてこない。
ただ悲しいだけ。
私は夫を愛しているし、信じてもいる。
夫も私を愛してくれていると思っていた。
セックスがないのも本当に疲れているからだと信じていた。
夫は絶対に浮気をしない。そう信じていたから我慢もできた。
「それでどうだったの?」
ナオミさんがワイングラス片手に聞いてきた。
「出張からは帰ってきているそうです」
「会社にいたの?」
「いえ。今日は休暇だそうです」
「じゃあ、やっぱりあれはご主人だったのね」
「……」
夫はずっと私を裏切っていた。表向きはいい夫を演じながら、私を欺いていた。
『愛している』『君が一番大切だ』とか言っていたのも全部偽り。
私のことをもう愛していないんだ。
夫は私のことを女ではなく、家政婦ぐらいにしか思っていないのだろう。
志保はキャリアウーマンらしくスーツ姿が似合うキリっとした美人だ。
参観日のときに志保が教室に入ってくると、パパたちの視線を一斉に集めるぐらいに目を引く容姿をしている。
夫と志保がどこで知り合ったか、どうやって連絡を取り合っているのかはわからない。
だが、私に出張だと言っていながら、志保とホテルで会っているのだから夫が浮気をしていることは確実だ。
「どうする? 部屋を探し出して浮気現場に乗り込む?」
ナオミさんがなぜか楽しそうに言う。
人の不幸は蜜の味ということか。
私は首を横に振る。
このまま感情に任せて部屋に乗り込んでもいい結果にはならないような気がする。
まだ頭は混乱していて、どうしていいかよく分からない。
「これで沙也加も気が楽になったんじゃない」
「えっ」
ナオミさんが何を言いたいのか分からない。
「ご主人が楽しんでいるなら、沙也加も楽しまなくちゃ損ということよ」
ナオミさんが立ち上がって、私の手を引っ張った。
1
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる