グレート・プロデュース  〜密かに国をコントロールする最強のエージェントは、恋に落ちた王女を大帝王に即位させることができるのか?〜

青波良夜

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第六章

No.074

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 俺たちが連れて行かれたのは、ニュールミナス市沿岸の小島にある古城のような建物だった。
 世間的には秘密にされてるが、ここが帝国魔法取締局マトリの本部だ。

 帝国魔法取締局マトリは魔法の守護者を気取っていることもあり、本部内では現代的な技術が排除されている。

 取調室として連れ込まれた部屋も、周りはごつごつとした岩壁だし、明かりもランタンしかなく薄暗い。
 そして何より寒かった。

「へっくしょん!」

 たまらずクシャミが出てしまった。
 ブルッと全身が震える。

 俺のそんな様子を見て、スネイルは嬉しそうな笑みを浮かべていた。

「お得意の魔法で、火でもつけたらどうだ、元腐れ探偵」
「いい加減、名前で呼んでくれないか、ライって言うんだからさ」
「では、腐れ野郎のライ。そろそろ認めるか。『メリーナ・サンダーブロンド殿下暗殺未遂』の容疑を」

 また罪状がランクアップしていた。
 この狭い部屋に入れられてそろそろ一日は経つが、スネイルが休憩から戻るたびに俺の罪状が増えてる気がする。
 このままだと、そのうち国家転覆罪くらいにはなりそうだな。

「おい、聞いてるのか!」

 ゴッ!

 スネイルに髪を掴まれ、机に顔を叩きつけられた。
 奴はさらに体重をかけ、上から押さえつけてくる。

「認めないと、どんどん状況が悪化するぞ」
「はっ……認めて何か変わるのか?」

 俺は余裕ぶって尋ねてやる。
 それが気に食わなかったらしく、スネイルは俺の頭を何度も机に叩きつけてくる。

 ゴンッゴンッゴンッゴンッ!

「馬鹿な奴だ! ならば、好きなだけ苦しめ!」

 頭への衝撃と、激しい痛みがリズミカルに何度もくり返される。

「ぐっ――」

 さすがにうめき声が漏れた。だんだんと意識も遠のいてくる。
 これはちょっとまずいかもしれない……。

 そう思い始めたところで、ようやく俺の頭部は解放された。

「はぁはぁ……チッ、ゴミのくせにいつまで意地を張る気だ……」

 スネイルは悪態をつき、部屋を出て行く。俺は机に突っ伏したまま、横目でその後ろ姿を見送った。

 この一日、スネイルは俺に自供を促し、拒否すれば痛めつける。やることといえば、それくらいだった。
 まともに取り調べる気があるようには思えない。

 明らかに、奴は誰かの指示によって動いている。恐らく、俺に自供させることが目的なのだろう。

 しかし、なぜそこまで自供にこだわるのか。俺を犯人に仕立て上げたいなら、すでに目的は達成してるはずだ。捏造とはいえ、監視カメラの映像という決定的な証拠がある。

「フィラデルか……タツミか……」

 特に怪しい二人の顔が脳裏に思い浮かぶ。
 ただ、あの二人が、証拠を捏造してまで俺をハメるだろうか?

 あいつらは俺の能力を理解してるはずだ。だから、こんな回りくどいことなんてしないで、チャンスがあれば殺しにくる気がする。

「なんのつもりなんだか……」

 こうして捕まり、帝国魔法取締局マトリの本部にでも来れば、多少は情報が手に入ると思ったんだが、謎は増えるばかりだ。

 やはり帝国魔法取締局マトリはただのコマに過ぎないということか。
 そうなると、枢密十三議会で俺を拘束するよう提案した奴を突き止める必要があるな。
 もちろん、そいつは13人いる継王つぐおうの誰かということになるが……。

「はぁ……わからん」

 これ以上ここにいても、あまり意味はないような気がしてきた。
 とりあえず、他のみんなが無事かどうか確認してみるか。

 正直、コレはあまり使いたくないが、緊急事態ということで……。

不義理な覗き見スニークビジョン

 俺は目を閉じ、魔法を発動させた。
 するとすぐに、まぶたの裏に映像が浮かんでくる。


 ◆◆◆


 ここと似たような石造りの狭い部屋に、派手な服を着た赤髪の女がいる。ロゼットだ。
 俺の視界は、彼女の斜め後ろの頭上から、部屋全体を見下ろす形になっている。それに加えて、音もちゃんと聞こえてくる。

「何度言えばわかるの? ライライは無実よ!」

 ロゼットが怒りに満ちた声で叫んでいた。
 彼女の前に座っているのは、ローブを着た捜査官だ。スネイルとは違う。中年のイカつい男だ。
 そいつがロゼットに、俺を犯人だと証言するように迫っているところらしい。

 それをロゼットは、頑なに拒否していた。
 ただ、彼女の悪い癖で、相手を挑発するようなことも付け加えてしまう。

「あたしは証言しないっていうのに、しつこいわね。もしかしてあんた、あたしと話したいだけなんじゃないの? 勘弁してよね。視線がイヤらしいんだけど」
「なんだとこのアマッ!」

 さすがにそこまで言われれば、相手も黙っていられない。
 イカつい男は勢いよく立ち上がり、ロゼットの肩に掴みかかる。ちょうど肌が露出している部分だった。

 その直後――。

「ぎゃああぁぁぁ!」

 男は叫び声をあげて、床に転がった。
 よく見れば、奴の手が焼けただれている。

「あらあら、前の担当者から引き継いでなかったの? あたしに触れたら火傷するって」

 ロゼットは男を見下ろして不敵に笑う。
 一方、男は信じられないと言わんばかりの顔をしている。
 魔法を使ったようには見えなかったのに、なぜなのかと思っているのだろう。

 今のは魔法ではなく、ロゼットの体質のせいだ。
 彼女は自分の体温を急激に上げることができる。正確には知らないが、一瞬で肉を焦がす程度までには上げられるらしい。

 昔はそのことで悩んだりもしてたが、今はうまくコントロールできるので、こうして身を守るのに役立っている。

 そのことを知らず、手を焼かれてしまった男は、尋問を続ける気力が失せたらしい。
 彼は這いつくばったまま部屋の外に出ていった。

「はぁ……人が焼ける臭いって、いつ嗅いでも嫌なものね」

 ロゼットが恐いことをつぶやいていた。
 不義理な覗き見スニークビジョンでは、臭いまでは感じられなくてよかったよ。

 ともかく、まあロゼットは大丈夫だろう。
 というわけで、俺はまぶたの裏に浮かぶ映像を切り替えた。


 ◆◆◆


 次は、紫髪の派手な服装の男が映った。

「勘弁してくださいよ~。もう全部話したじゃないですか~」

 ジーノの情けない声が、狭い部屋に響く。どうやら、こいつは白状した後らしい。
 だろうと思ったよ……。

 しかしジーノの前に座る、メガネをかけた捜査官は、まるで納得してない様子だ。

「お前の話は信用できない。もっとちゃんと話せ」
「だから、元々あの人とはただのギャンブル仲間なんよ。そんでオレが使い捨てのコマになると思ったんでしょ。ギャンブル中毒はどこの組織にもいるじゃん? そいつらに接触して、情報抜いてただけだって」
「そんな話は聞いてない! 奴は何者だ? 本当の目的はなんだ?」
「だから知らねーって。オレは一方的にあの人に情報渡してただけ。しかも、ショッボイのばっかよ? それがなんの役に立つのかも知らねーし」
「どんな情報を渡してた?」
「1年前に継王になったピンクコイン家の当主が、男にフラレまくってるとか?」
「ふざけるな!」

 捜査官が机を叩いて立ち上がる。
 それと同時にジーノもイスから降りて地面に這いつくばった。

「すんません! すんません! ホントそれしか知らないんす! だから痛いのはやめて! お願いします! もっと思い出せることがあったら、なんでも話しますんで!」

 ジーノはジーノで必死に身を守っていた。
 これなら大丈夫だろう。相手を煙に巻く話術が一番の取り柄だからな……。

 そんなわけで、俺は次の人物に映像を切り替えることにした。
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