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帰り道は、思いのほか穏やかだった。
買い物袋を手にして並んで歩く篤の姿は、行きのときよりも少し軽やかに見える。
悠人はそれに気づき、胸の奥でひそかに安堵を覚えていた。
――晴れの日でも、篤さんは大丈夫だったんだ。
そう思うと、理由もなく嬉しくなる。
夕暮れの光が街路樹を朱に染め、足元に長い影を落としている。
日が傾くにつれて風は涼しくなり、歩道を行き交う人々の足取りもいくらか急ぎ足になる。
そのざわめきの中で、篤の表情はどこか不思議そうだった。
普段なら、晴れの日に外に出れば疲労がにじみ出るのに、今日は違う――そんな戸惑いが、その横顔にわずかに浮かんでいるように見えた。
シェアハウスの屋根が視界に入ると、篤の足取りがふっと緩んだ。
玄関まではもう数十歩。
それなのに、彼はなぜかその場に留まり、袋を持ち替えては口を結んだ。
悠人は隣に立ち止まり、静かに待つ。
声をかけたい気持ちはあったが、それ以上に篤の沈黙を邪魔してはいけないように感じた。
「……今日」
かすかな声に、悠人の心臓が小さく跳ねた。
篤は視線を足元に落とし、言葉を選ぶように間を置いてから続けた。
「今日、思ったより……平気だった。晴れの日は苦手なのに」
悠人は自然に笑みをこぼした。
「それは、よかったです」
返事は短く、それ以上余計なことは言わない。
だが、その目は篤の心の揺れをきちんと受け止めていることを示していた。
篤はしばらく黙っていたが、やがて深く息を吐いた。
その呼吸には、諦めではなく決意の色があった。
「……だから」
声は低く、ためらいがちだった。
「また一緒に、晴れの日に……出かけてもいいか」
その瞬間、悠人の胸は熱で満たされた。
耳に届いた言葉が信じられず、一拍遅れて意味を理解する。
――篤さんの口から、次の約束が出てくるなんて。
驚きと喜びが一気に込み上げ、顔に出るのを抑えきれなかった。
「もちろんです」
声は思わず弾んでしまい、悠人は慌てて抑えようとした。
だが、笑みまではどうしても隠せなかった。
篤はその表情をちらりと見て、わずかに目を細めた。
ほんの小さな変化だったが、悠人にはそれがはっきりと分かった。
安心と照れくささが同居した、不器用な笑み。
「……そうか」
その一言に込められた安堵が、夕暮れの空気に溶けていく。
二人は再び歩き出し、玄関へ向かう。
家の窓からこぼれる灯りが、だんだんと近づいてくる。
玄関前に立ったとき、悠人の胸にはまだ熱が残っていた。
篤の横顔を思い返すだけで、心臓の鼓動が早まる。
――また一緒に。
それはただの約束の言葉ではなかった。
篤が自分を必要としてくれている、その証だった。
その実感が、悠人にとって何よりの温もりとなって胸に広がっていた。
買い物袋を手にして並んで歩く篤の姿は、行きのときよりも少し軽やかに見える。
悠人はそれに気づき、胸の奥でひそかに安堵を覚えていた。
――晴れの日でも、篤さんは大丈夫だったんだ。
そう思うと、理由もなく嬉しくなる。
夕暮れの光が街路樹を朱に染め、足元に長い影を落としている。
日が傾くにつれて風は涼しくなり、歩道を行き交う人々の足取りもいくらか急ぎ足になる。
そのざわめきの中で、篤の表情はどこか不思議そうだった。
普段なら、晴れの日に外に出れば疲労がにじみ出るのに、今日は違う――そんな戸惑いが、その横顔にわずかに浮かんでいるように見えた。
シェアハウスの屋根が視界に入ると、篤の足取りがふっと緩んだ。
玄関まではもう数十歩。
それなのに、彼はなぜかその場に留まり、袋を持ち替えては口を結んだ。
悠人は隣に立ち止まり、静かに待つ。
声をかけたい気持ちはあったが、それ以上に篤の沈黙を邪魔してはいけないように感じた。
「……今日」
かすかな声に、悠人の心臓が小さく跳ねた。
篤は視線を足元に落とし、言葉を選ぶように間を置いてから続けた。
「今日、思ったより……平気だった。晴れの日は苦手なのに」
悠人は自然に笑みをこぼした。
「それは、よかったです」
返事は短く、それ以上余計なことは言わない。
だが、その目は篤の心の揺れをきちんと受け止めていることを示していた。
篤はしばらく黙っていたが、やがて深く息を吐いた。
その呼吸には、諦めではなく決意の色があった。
「……だから」
声は低く、ためらいがちだった。
「また一緒に、晴れの日に……出かけてもいいか」
その瞬間、悠人の胸は熱で満たされた。
耳に届いた言葉が信じられず、一拍遅れて意味を理解する。
――篤さんの口から、次の約束が出てくるなんて。
驚きと喜びが一気に込み上げ、顔に出るのを抑えきれなかった。
「もちろんです」
声は思わず弾んでしまい、悠人は慌てて抑えようとした。
だが、笑みまではどうしても隠せなかった。
篤はその表情をちらりと見て、わずかに目を細めた。
ほんの小さな変化だったが、悠人にはそれがはっきりと分かった。
安心と照れくささが同居した、不器用な笑み。
「……そうか」
その一言に込められた安堵が、夕暮れの空気に溶けていく。
二人は再び歩き出し、玄関へ向かう。
家の窓からこぼれる灯りが、だんだんと近づいてくる。
玄関前に立ったとき、悠人の胸にはまだ熱が残っていた。
篤の横顔を思い返すだけで、心臓の鼓動が早まる。
――また一緒に。
それはただの約束の言葉ではなかった。
篤が自分を必要としてくれている、その証だった。
その実感が、悠人にとって何よりの温もりとなって胸に広がっていた。
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