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㉑
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傘の中、二人並んで歩いていた。
雨粒がポツポツと弾ける音だけが耳に届き、会話はなくても空気は不思議と穏やかだった。
しかし悠人の胸はざわめき続けている。
隣にいる篤が発する体温が、雨に濡れた冷たい空気と混ざって、妙に鮮明に感じられるのだ。
――今、聞かなきゃ。
ずっと頭を占めていた問い。
あの日、リビングで篤が言った「好き」の意味。
真意を知りたいのに、怖くて聞けずにいた。
けれどこの雨の夜、相合傘で並ぶ距離の近さが背中を押した。
「……あの」
勇気を振り絞って声を出すと、篤がちらりとこちらを見た。
「この前のことなんですけど」
「この前?」
「……リビングで……その……僕のこと、好きだって」
心臓が破裂しそうなほど脈打っている。
頬が熱くなり、声がかすかに震えた。
しかし篤は首を傾げるだけで、まるで何のことか分かっていないような顔をした。
「言ったな」
「い、言ったなじゃなくて! どういう意味で……」
言葉が喉に詰まる。
友達としてなのか、それとも――。
悠人は自分でもわかるくらい顔を赤くしながら、必死に言葉を探した。
「友達として……ですか? それとも……」
最後の部分は小さくなり、雨音にかき消されそうだった。
篤は歩みを少し緩め、考えるように視線を前に向ける。
しばしの沈黙。
悠人の心臓はその間にも暴れ続け、全身に血が巡って熱くなっていった。
篤が少し困ったように眉を寄せる。
そして――そのまま悠人の方へ身を寄せ、短く触れるだけのキスをした。
「……こういう意味」
耳元でさらりと告げる。
その声音は穏やかで、何でもないことを言うかのように軽やかだった。
悠人の頭は真っ白になった。
「っ……!?」
声にならない声が喉に引っかかる。
顔は一瞬で真っ赤に染まり、足元さえ覚束なくなる。
篤は平然として歩を進めていた。
何事もなかったかのように、雨粒を受け止める傘の下で並んでいる。
悠人は必死に心を落ち着けようとしたが、無駄だった。
胸の奥から込み上げる鼓動と熱は、抑えようがなかった。
雨粒がポツポツと弾ける音だけが耳に届き、会話はなくても空気は不思議と穏やかだった。
しかし悠人の胸はざわめき続けている。
隣にいる篤が発する体温が、雨に濡れた冷たい空気と混ざって、妙に鮮明に感じられるのだ。
――今、聞かなきゃ。
ずっと頭を占めていた問い。
あの日、リビングで篤が言った「好き」の意味。
真意を知りたいのに、怖くて聞けずにいた。
けれどこの雨の夜、相合傘で並ぶ距離の近さが背中を押した。
「……あの」
勇気を振り絞って声を出すと、篤がちらりとこちらを見た。
「この前のことなんですけど」
「この前?」
「……リビングで……その……僕のこと、好きだって」
心臓が破裂しそうなほど脈打っている。
頬が熱くなり、声がかすかに震えた。
しかし篤は首を傾げるだけで、まるで何のことか分かっていないような顔をした。
「言ったな」
「い、言ったなじゃなくて! どういう意味で……」
言葉が喉に詰まる。
友達としてなのか、それとも――。
悠人は自分でもわかるくらい顔を赤くしながら、必死に言葉を探した。
「友達として……ですか? それとも……」
最後の部分は小さくなり、雨音にかき消されそうだった。
篤は歩みを少し緩め、考えるように視線を前に向ける。
しばしの沈黙。
悠人の心臓はその間にも暴れ続け、全身に血が巡って熱くなっていった。
篤が少し困ったように眉を寄せる。
そして――そのまま悠人の方へ身を寄せ、短く触れるだけのキスをした。
「……こういう意味」
耳元でさらりと告げる。
その声音は穏やかで、何でもないことを言うかのように軽やかだった。
悠人の頭は真っ白になった。
「っ……!?」
声にならない声が喉に引っかかる。
顔は一瞬で真っ赤に染まり、足元さえ覚束なくなる。
篤は平然として歩を進めていた。
何事もなかったかのように、雨粒を受け止める傘の下で並んでいる。
悠人は必死に心を落ち着けようとしたが、無駄だった。
胸の奥から込み上げる鼓動と熱は、抑えようがなかった。
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