シェアハウスの片隅で~無口な同居人と恋をしてみた~

もにもに子

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扉をノックすると、少し間を置いてから低い声が返ってきた。

「……何?」

悠人は一度深呼吸し、扉を押し開けた。
篤の部屋は、色んなものが置いてあった。
本、ゲーム、大きなパソコン。
なんとなく想像通り。

篤はベッドに腰かけて髪をタオルで拭いていた。
視線をこちらに向けるでもなく、ただ「そこに座れ」とでも言いたげに顎をしゃくる。
悠人はベッドの端に腰を下ろし、心臓がうるさいほど鳴るのを必死で抑え込んだ。

沈黙に耐えかね、口を開く。

「……さっき」

声は自分でも驚くほど小さかった。

「さっき、なんで……キスしたんですか」

篤の手が止まる。
だが、困ったように眉を寄せただけで、すぐにまたタオルを動かした。

「別に」

「べ、別にって……!」

思わず声が大きくなる。

「だって……だって、僕、まだ何も答えてなくて……」

篤は顔を上げ、真っ直ぐに悠人を見た。
その瞳には迷いも焦りもなく、ただ当たり前のことを言うような静けさがあった。

「返してほしいとか思ってない」

「じゃあ、なんで」

「……好きだから」

さらりとした声が部屋に落ちた。
それは雨音でもかき消されないほど、確かな重みを持っていた。

悠人の頭が真っ白になる。

――好きだから。

こんなに簡単に言えるものなのか。
いや、言える人だからこそ、本気なんだ。

「……っ」

胸の奥が熱くなり、気持ちが溢れてどうにもならなかった。
返答を求めていないと言われても、このまま黙っていられるはずがない。
ぐるぐると渦を巻く感情に耐えきれず、思わず声を荒げた。

「じゃあ……じゃあ、僕も篤さんのことが好きだって言ったらどうしますか!」

叫んだ瞬間、部屋の空気が張りつめた。
篤が目を見開く。
その驚いた表情を見るのは初めてだった。
普段は何を言われても揺れない無表情を崩して、ぽかんと口を開けている。

悠人は耳まで真っ赤になりながら視線を逸らした。

「べ、別に……たっ、たとえばの話で……」

しどろもどろになりながら必死に取り繕おうとするが、声が裏返り、余計に惨めになる。

篤はまだ黙ったまま悠人を見つめていた。
さっきまで平然としていた男の、不意を突かれたような顔。
それがまた悠人の胸をかき乱す。

――ああもう! なんで僕はこんなこと言っちゃったんだ!

頭を抱えたくなるほどの後悔と恥ずかしさ。
けれど同時に、初めて見る篤の驚いた顔が胸を締めつけるほど愛おしく感じられてしまう。

悠人の心臓は、もうどうにかなってしまいそうだった。
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