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第2章 硝子の禁域
2-7.終わらない深淵
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1年後、狂気と芸術が交錯した「Abyss Cathedral」が幕を閉じた。サラの肉体は、週1回(月3回:年間36回)の過酷なステージをこなし、もはや人間という枠組みを超越した「海の女神」へと進化を遂げていた。
2022年12月31日の真夜中。ケアンズの海岸から3キロほど離れた洋上に、一艘のヨットが静かに浮かんでいた。
黒崎はキャビンで書類を整理していたが、ふと、水面を叩く微かな音に顔を上げた。甲板に出ると、そこには月光を浴びて真珠色に輝く、全裸のサラがいた。
彼女は服を砂浜に脱ぎ捨て、3キロの海路を、愛欲という名のエンジンだけで泳ぎ切ってきたのだ。
「サラ……アール島に戻ったんじゃなかったのか?」
「……レヴェイヨン・ドゥ・ラ・サン・シルヴェストル 今日で今年もおしまいなのよ。一緒にいさせて」
その後、海水に濡れた彼女の肢体が、黒崎の温かなベッドを濡らす。2人は夜が明けるまで、波の揺らぎに身を任せて、貪るように愛し合った。
翌朝10時。
澄み渡る青空の下、黒崎は甲板のチェアに座り、ブラックコーヒーを啜っていた。
「おはよう」
少し遅れて起きてきたサラが、眩しそうに目を細めて現れる。彼女は裸のまま、碇(いかり)のチェーンが吸い込まれていく海面を見つめた。
「水深、30メートルくらいね」
サラはふと、甲板の隅に転がっていた酸素ボンベを指差した。
「それ担いで、すぐ付いてきて。今年初の……」
「おい、サラ……」
黒崎の制止を聞くより早く、彼女は美しい弧を描いて海へとダイブした。水飛沫ひとつ立てず、そのまま吸い込まれるように垂直に海底を目指していく。
黒崎は苦笑しながらも、プロの手際で潜水器材を装着し、彼女の後を追った。
水深30メートル。砂紋が広がる蒼い静寂の世界。
そこには、砂地に仰向けに横たわり、手招きをして彼を待つサラの姿があった。重い装備を纏った黒崎が辿り着くと、2人の朝の営みが始まる。
上下が逆転し、互いの官能を貪り合う**「水中69」**。この1年の興行で培われた阿吽の呼吸。サラは酸素を持たないまま、黒崎の放つ気泡の中で妖しく、力強く腰を振る。
5分後、濃厚な膣内射精とともに、彼女の肉体が砂地で跳ねた。
絶頂の余韻に浸る中、サラは悪戯っぽく微笑むと、黒崎の口元にあるレギュレーターを外そうと手をかけた。
(……な、これ外されたら、死ぬ!)
泡を吹き出し、本気で焦る黒崎の様子を見て、サラは鈴を転がすような笑い声を(泡とともに)上げ、一気に浮上を開始した。
2人が水面に顔を出すと、どちらからともなく激しく、海水と混じり合った濃厚なキスを交わす。
「……さあ、もう一回よ」
サラはそう言い残すと、鮮やかなジャックナイフで再び群青の深淵へと消えていった。
「おい、勘弁してくれよ……!」
黒崎は肩で息をしながらも、その瞳には抗いがたい歓喜が宿っていた。彼は再びマスクを直し、愛すべき怪物を追って、光の届かない海の下へと潜っていった。
2人の呼吸が続く限り、この深淵の遊戯に終わりはない。
2022年12月31日の真夜中。ケアンズの海岸から3キロほど離れた洋上に、一艘のヨットが静かに浮かんでいた。
黒崎はキャビンで書類を整理していたが、ふと、水面を叩く微かな音に顔を上げた。甲板に出ると、そこには月光を浴びて真珠色に輝く、全裸のサラがいた。
彼女は服を砂浜に脱ぎ捨て、3キロの海路を、愛欲という名のエンジンだけで泳ぎ切ってきたのだ。
「サラ……アール島に戻ったんじゃなかったのか?」
「……レヴェイヨン・ドゥ・ラ・サン・シルヴェストル 今日で今年もおしまいなのよ。一緒にいさせて」
その後、海水に濡れた彼女の肢体が、黒崎の温かなベッドを濡らす。2人は夜が明けるまで、波の揺らぎに身を任せて、貪るように愛し合った。
翌朝10時。
澄み渡る青空の下、黒崎は甲板のチェアに座り、ブラックコーヒーを啜っていた。
「おはよう」
少し遅れて起きてきたサラが、眩しそうに目を細めて現れる。彼女は裸のまま、碇(いかり)のチェーンが吸い込まれていく海面を見つめた。
「水深、30メートルくらいね」
サラはふと、甲板の隅に転がっていた酸素ボンベを指差した。
「それ担いで、すぐ付いてきて。今年初の……」
「おい、サラ……」
黒崎の制止を聞くより早く、彼女は美しい弧を描いて海へとダイブした。水飛沫ひとつ立てず、そのまま吸い込まれるように垂直に海底を目指していく。
黒崎は苦笑しながらも、プロの手際で潜水器材を装着し、彼女の後を追った。
水深30メートル。砂紋が広がる蒼い静寂の世界。
そこには、砂地に仰向けに横たわり、手招きをして彼を待つサラの姿があった。重い装備を纏った黒崎が辿り着くと、2人の朝の営みが始まる。
上下が逆転し、互いの官能を貪り合う**「水中69」**。この1年の興行で培われた阿吽の呼吸。サラは酸素を持たないまま、黒崎の放つ気泡の中で妖しく、力強く腰を振る。
5分後、濃厚な膣内射精とともに、彼女の肉体が砂地で跳ねた。
絶頂の余韻に浸る中、サラは悪戯っぽく微笑むと、黒崎の口元にあるレギュレーターを外そうと手をかけた。
(……な、これ外されたら、死ぬ!)
泡を吹き出し、本気で焦る黒崎の様子を見て、サラは鈴を転がすような笑い声を(泡とともに)上げ、一気に浮上を開始した。
2人が水面に顔を出すと、どちらからともなく激しく、海水と混じり合った濃厚なキスを交わす。
「……さあ、もう一回よ」
サラはそう言い残すと、鮮やかなジャックナイフで再び群青の深淵へと消えていった。
「おい、勘弁してくれよ……!」
黒崎は肩で息をしながらも、その瞳には抗いがたい歓喜が宿っていた。彼は再びマスクを直し、愛すべき怪物を追って、光の届かない海の下へと潜っていった。
2人の呼吸が続く限り、この深淵の遊戯に終わりはない。
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