「深淵のサラ」 〜極限の潜水パフォーマンスに挑む金髪の美姫。独占欲に溺れるCEOと、立ちはだかる女帝たち〜

Mina_Underwater

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第2章 硝子の禁域

2-8.狙われた無垢

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ケアンズの街の灯りがいつもより白々しく見えたその夜、黒崎はまだ知らなかった。年が変わっただけで、何かが決定的に動き始めているという事実を。

しかし……黒崎のライバル、ポール・白石率いる「ホワイトキャット」では、すでに静かで、そして恐ろしい計画が組み上げられつつあった。

ホワイトキャット本社地下2階。窓のない会議室に、低い換気音だけが響く。
長机の中央に置かれた一枚の写真 -- 無防備な笑みを浮かべるサラの姿に、誰も視線を落とそうとしなかった。

ポール・白石は、ゆっくりと眼鏡を外し、指先でレンズを拭いた。その仕草は几帳面で、穏やかですらあったが、次に発せられた声には、一切の温度がなかった。

「黒崎は、いつも“守る側”にいると思い込んでいる」

静かな口調で、彼は言った。

「なら -- 奪われる痛みを、先に教えてやるべきだ」

隣にいたカイ・安藤が唾を飲み込む音がした。計画は単純だった。だが、その単純さこそが恐ろしかった。痕跡を残さず、“誰も悪くない事故”として終わらせる。

その中心に置かれた名前が、サラだった。彼女が何を知っているのか。いや、何も知らないからこそ、狙われた。

「実行はまだだ」

ポールはそう付け加え、写真を裏返した。

「恐怖は、熟成させてから使う。黒崎が安心しきった、その瞬間にな」

誰も反論しなかった。ホワイトキャットでは、それが忠誠の証だった。

その頃、サラは、なぜか胸騒ぎを覚えて手を止めていた。理由はない。ただ、名前を呼ばれた気がしただけだ。
2023年は、静かに、だが確実に歯車を噛み合わせていく。
愛する者を守るために戦う男と、それを利用し、破壊しようとする男。

まだ誰も、この1年が「選択の年」になることを知らなかった。そして白石は、心の中でこう呟いていた。
(ゲームは、ようやく始まった)
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