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第5章 緋色の龍宮(饗宴)
5-6.プレミアム・ダイブ
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重厚な静寂が支配するリビングに、リーの声だけが絹のように滑らか、かつ冷徹に響き渡っていた。
彼女の語る言葉はもはや事業計画ではなく、美しき地獄の設計図だった。
「『海洋研究所』という看板は、各国の煩わしい規制を潜り抜けるための最高の盾に過ぎません。ですが、その深淵に隠された真の目的は、選ばれし者のみが到達できる極致――『プレミアム・ダイブ』です」
リーはゆっくりと、挑発するように脚を組み替えた。
その動作に伴い、鍛え上げられた大腿部の筋肉が、薄いワンピースの生地越しに力強く躍動する。
無駄な脂肪を削ぎ落とした彼女の肢体は、猛獣のようなしなやかさを湛えていた。
「水深50メートル。そこには、サラ様という至高の女神を選んだゲストだけが入室を許される、プール付きの個室……いわば聖域を設けます」
彼女が身を乗り出すと、タイトなワンピースの胸元が深く波打ち、豊満ながらも張り詰めた乳房の谷間が、黒崎の視線を誘うように覗いた。
その肌は湿り気を帯びた真珠のような光沢を放ち、鎖骨から肩にかけてのラインには、日々の鍛錬を感じさせる繊細な筋肉の筋が浮き出ている。
「想像してみてください。水底という、完全なる無酸素の空間で過ごす1時間。ゲストは、サラ様のリードなしには1秒たりとも生き長らえることはできない。命の主導権を完全に握られた極限状態で受ける寵愛……。恐怖と恍惚が混ざり合うその瞬間、世界中の富豪たちは、全財産を投げ打ってでも列をなすことになるでしょう」
黒崎は手元のタブレットに視線を落とした。
そこに映る「龍宮」の赤い3Dモデルは、まるで深海に沈む巨大な心臓のように、不気味な脈動を繰り返している。
「場所が場所だ。あの入江から、何メートル掘るつもりだ。これほどの深度での建設、維持は容易ではないぞ」
黒崎の低い問いに対し、リーは満足げに目を細めた。
彼女が動くたび、背中の広背筋がかすかにうねり、その存在そのものが捕食者であることを誇示している。
「だからこそ、赤龍の資本と技術が必要なのです。黒崎さん、あなたにはそのすべての『管理人』になっていただきたい。誰に生を与え、誰を絶望の底へ突き落とすのか……その審判を下すのは、あなた以外にいないのです」
リーは赤いネイルが施された指先を、自らの濡れた唇に当てた。
その視線は熱く、黒崎の魂を絡め取ろうとする蛇のように執拗だ。
「……今日も、先行調査のダイバーを数名放っています。サラ様にも、そろそろ現場の『味見』をしていただかないと」
島の西側――。
かつて自分が白石によって沈められた忌まわしき処刑場を、今は自らの庭として優雅に、そして力強く泳ぎ回っているサラ。
彼女の強靭な心筋が刻む鼓動は、海流を通じてこのリビングまで響いてくるかのようだった。
密室で交わされる冷徹な野心と、深海で研ぎ澄まされる肉体の躍動。
黒崎は確信していた。
この「龍宮」という名の檻が完成したとき、アール島は世界から隔絶された、美しくも残酷な「エデンの園」へと進化を遂げる。
そこは、力ある者だけが呼吸を許される、青い地獄の入口だった。
彼女の語る言葉はもはや事業計画ではなく、美しき地獄の設計図だった。
「『海洋研究所』という看板は、各国の煩わしい規制を潜り抜けるための最高の盾に過ぎません。ですが、その深淵に隠された真の目的は、選ばれし者のみが到達できる極致――『プレミアム・ダイブ』です」
リーはゆっくりと、挑発するように脚を組み替えた。
その動作に伴い、鍛え上げられた大腿部の筋肉が、薄いワンピースの生地越しに力強く躍動する。
無駄な脂肪を削ぎ落とした彼女の肢体は、猛獣のようなしなやかさを湛えていた。
「水深50メートル。そこには、サラ様という至高の女神を選んだゲストだけが入室を許される、プール付きの個室……いわば聖域を設けます」
彼女が身を乗り出すと、タイトなワンピースの胸元が深く波打ち、豊満ながらも張り詰めた乳房の谷間が、黒崎の視線を誘うように覗いた。
その肌は湿り気を帯びた真珠のような光沢を放ち、鎖骨から肩にかけてのラインには、日々の鍛錬を感じさせる繊細な筋肉の筋が浮き出ている。
「想像してみてください。水底という、完全なる無酸素の空間で過ごす1時間。ゲストは、サラ様のリードなしには1秒たりとも生き長らえることはできない。命の主導権を完全に握られた極限状態で受ける寵愛……。恐怖と恍惚が混ざり合うその瞬間、世界中の富豪たちは、全財産を投げ打ってでも列をなすことになるでしょう」
黒崎は手元のタブレットに視線を落とした。
そこに映る「龍宮」の赤い3Dモデルは、まるで深海に沈む巨大な心臓のように、不気味な脈動を繰り返している。
「場所が場所だ。あの入江から、何メートル掘るつもりだ。これほどの深度での建設、維持は容易ではないぞ」
黒崎の低い問いに対し、リーは満足げに目を細めた。
彼女が動くたび、背中の広背筋がかすかにうねり、その存在そのものが捕食者であることを誇示している。
「だからこそ、赤龍の資本と技術が必要なのです。黒崎さん、あなたにはそのすべての『管理人』になっていただきたい。誰に生を与え、誰を絶望の底へ突き落とすのか……その審判を下すのは、あなた以外にいないのです」
リーは赤いネイルが施された指先を、自らの濡れた唇に当てた。
その視線は熱く、黒崎の魂を絡め取ろうとする蛇のように執拗だ。
「……今日も、先行調査のダイバーを数名放っています。サラ様にも、そろそろ現場の『味見』をしていただかないと」
島の西側――。
かつて自分が白石によって沈められた忌まわしき処刑場を、今は自らの庭として優雅に、そして力強く泳ぎ回っているサラ。
彼女の強靭な心筋が刻む鼓動は、海流を通じてこのリビングまで響いてくるかのようだった。
密室で交わされる冷徹な野心と、深海で研ぎ澄まされる肉体の躍動。
黒崎は確信していた。
この「龍宮」という名の檻が完成したとき、アール島は世界から隔絶された、美しくも残酷な「エデンの園」へと進化を遂げる。
そこは、力ある者だけが呼吸を許される、青い地獄の入口だった。
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