「深淵のサラ」 〜極限の潜水パフォーマンスに挑む金髪の美姫。独占欲に溺れるCEOと、立ちはだかる女帝たち〜

Mina_Underwater

文字の大きさ
70 / 155
第6章 緋色の龍宮(龍墜)

6-8.崩壊の前触れ

しおりを挟む
ドローンに襲われたあと、サラは、島を時計回りに泳ぎ、家の前のビーチに辿り着いた。
そして、潮の香りを纏ったまま、裏手の勝手口から滑り込むように自宅に入った。

リビングの隅、デスクに広げられた複数のモニターに向かっていた黒崎が、キーボードを叩く手を止めて振り返った。
彼は、サラの少し乱れた呼吸と、濡れた髪から滴る水滴が床に小さな染みを作っているのを見て、怪訝そうに眉を寄せた。

「お帰り。……どうした、随分と慌てた様子だな。サメにでも襲われたのか?」

サラはバスタオルを肩にかけ、そのまま黒崎のデスクの隣にある椅子に深く腰を下ろした。まだ心臓の鼓動が耳の奥で鳴っている。

「……エドワード、信じられないことが起きたわ。海底で、殺されかけた」

黒崎の目が鋭く細まった。彼は椅子の向きを変え、完全にサラと向き合った。

「殺されかけた? だれに?」

「機械よ。水中ドローン、それも8機も。岩影から突然現れて、網で私を絡めとったの。龍宮の近くにある深い溝に引き摺り込まれて……身動きが取れなくなった」

サラの話を聞くにつれ、黒崎の表情から余裕が消えていった。

「ドローン……? どこのメーカーだ。龍宮の警備か?」

「わからない。でも、あんな攻撃的な動き、普通の警備用じゃない。それに、溝の底で私を押し込めたまま、急に全てのドローンが停止したの。まるで誰かが糸を切ったみたいに。おかげで逃げ出せたけど……」

サラはそこまで一気に話すと、思い出したように自分の目を指先で押さえた。

「それと、もう一つ。溝の底でドローンが止まる直前、目が焼けるように沁みたの。パニックになりそうなくらい激痛で……。でも、昔誰かに聞いたことがあるわ。火山性ガスとかメタンが噴出してる海域では、目が沁みることがあるって。あの辺り、ガスが噴き出してるのかしら?」

黒崎は黙ってサラの言葉を咀嚼するように、しばらく顎に手を当てて考え込んだ。
モニターには複雑な数式やデータが並んでいるが、彼の意識は今、サラが語った海底の光景に向けられていた。

「ガスか……。地質調査の結果では、あの海域に活発な噴出孔があるという報告はなかった。だが、龍宮の建設による大規模な掘削が、地殻の深部に干渉した可能性は否定できないな。メタンハイドレートの層を突いたのかもしれん」

黒崎の声は低く、慎重だった。

「ドローンの突然の停止も不可解だ。システムエラーか、あるいは……」

彼は何かを言いかけて、言葉を飲み込んだ。
そして、サラの肩を優しく叩いた。

「まずはシャワーを浴びて落ち着け。その間に、俺の方でも最近の龍宮周辺のドローン稼働ログを洗ってみる。……サラ、悪いが今日はもう海には近づくな。何かが動いている」

サラは小さく頷き、立ち上がった。温かいシャワーを浴びれば、あの深淵の冷たさと目の痛みの残像を洗い流せるだろうか。
しかし、黒崎の厳しい横顔を見た彼女の胸には、拭いきれない不安が澱のように沈んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...