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第7章 緋色の龍宮(深絆)
7-1.深海への身投げ
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「龍宮」の最期を告げるカウントダウンは、慈悲のかけらもない冷徹なビートを刻み続けていた。
ヘンリーは震える指先で携帯電話を握りしめ、荒れる海上で待機する黒崎へと声を絞り出した。
その叫びは、崩落の予兆に震える施設内に虚しく反響する。
「黒崎さん! リーが、リーがまだ中にいるんだ! 地下の『プレミアム・ダイブ』のプール……監視カメラに映ってる、彼女、そこにいます!」
「あとはこっちで引き受ける。ヘンリー、お前は死ぬ気か! 早くそこを離れろ!」
黒崎の怒号が鼓膜を打つ。
ヘンリーは断腸の思いで通信を切ろうとしたが、吸い寄せられるように、最後の一目だけモニターに視線を走らせた。
そこには、死の静寂に包まれたプールの光景が広がっていた。
トレードマークだった鮮烈な赤のビキニは、冷たい床に無造作に脱ぎ捨てられている。
プールの縁に立っていたのは、一切の虚飾を剥ぎ取った、一振りの名刀のようなリーの後ろ姿だった。
天井の非常灯が明滅し、彼女の背中を妖しく照らし出す。
広背筋は翼を広げるように逞しく、脊柱起立筋の両脇を走る深い溝は、彼女がこれまで潜り抜けてきた修羅場の数を示していた。
水に濡れ、硬質に引き締まった大腿部の筋肉が、爆発の予動に揺れる床を力強く掴んでいる。
彼女は、自分を縛るすべてを脱ぎ捨てていた。
死を目前にした極限状態にあって、その肉体は神々しいまでの闘争本能と静謐さを湛えている。
ヘンリーの喉は恐怖ではなく、そのあまりにも孤高で美しいシルエットへの感嘆で凍りついた。
ヘンリーは震える指先で携帯電話を握りしめ、荒れる海上で待機する黒崎へと声を絞り出した。
その叫びは、崩落の予兆に震える施設内に虚しく反響する。
「黒崎さん! リーが、リーがまだ中にいるんだ! 地下の『プレミアム・ダイブ』のプール……監視カメラに映ってる、彼女、そこにいます!」
「あとはこっちで引き受ける。ヘンリー、お前は死ぬ気か! 早くそこを離れろ!」
黒崎の怒号が鼓膜を打つ。
ヘンリーは断腸の思いで通信を切ろうとしたが、吸い寄せられるように、最後の一目だけモニターに視線を走らせた。
そこには、死の静寂に包まれたプールの光景が広がっていた。
トレードマークだった鮮烈な赤のビキニは、冷たい床に無造作に脱ぎ捨てられている。
プールの縁に立っていたのは、一切の虚飾を剥ぎ取った、一振りの名刀のようなリーの後ろ姿だった。
天井の非常灯が明滅し、彼女の背中を妖しく照らし出す。
広背筋は翼を広げるように逞しく、脊柱起立筋の両脇を走る深い溝は、彼女がこれまで潜り抜けてきた修羅場の数を示していた。
水に濡れ、硬質に引き締まった大腿部の筋肉が、爆発の予動に揺れる床を力強く掴んでいる。
彼女は、自分を縛るすべてを脱ぎ捨てていた。
死を目前にした極限状態にあって、その肉体は神々しいまでの闘争本能と静謐さを湛えている。
ヘンリーの喉は恐怖ではなく、そのあまりにも孤高で美しいシルエットへの感嘆で凍りついた。
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