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【外伝】Episode-ゼロ 真珠の起源 第3章 王の奪還
3-3.限界深度「238メートル」にかけた未来
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ケアンズに戻ってからの3ヶ月、黒崎は狂ったように仕事に没頭する傍ら、週末ごとに自家用ジェットを飛ばしてアール島へ通い詰めた。
黒崎が一番気にしていたのは、自分のために逮捕されてしまった青年、ヘンリー・西谷のことだ。
すぐニューカレドニアの首都ヌメアに飛び、国際弁護チームを結成し、なんとか不起訴の方向で話をつけるべく奔走した。
また、、アール島の中心に、ブラックドッグ社提供のWi-Fi基地を設営した。
これにより、アール島でも、携帯電話が使え、インターネットにも接続できる。
そして、サラにも携帯電話を与えた。
パソコンは「絶対使わない」と拒否されたが。
次に、町の中心街にあった飲食店の内装リニューアル。防犯カメラも付けた。
首長のジャン医師も
「これでやっと本土の人と同じような生活ができる」
とご満悦だ。
だが、ここを訪れる真の目的は、サラの異常な心肺機能とその身体能力を数値化して分析、そのためのサンプリングだ。
黒崎はアクアラングを背負い、サラの潜水に付き添った。
だが、鍛え抜かれた黒崎でさえ、耳抜きと窒素酔いの恐怖に抗いながら、水深30メートルまで辿り着くのが限界だった。
「……信じられん」
黒崎が重いタンクを背負って喘ぐ傍らで、サラは一切の衣類を脱ぎ捨てた全裸のまま、まるで無重力の宇宙を舞うように、音もなく暗緑色の深淵へと吸い込まれていく。
彼女の手首に巻かれた特注のバイオセンサーから、リアルタイムでバイタルデータが黒崎の手元のデバイスへと流れ込む。
あるときは、アール島西側の15メートルの断崖絶壁からのダイブ。サラの運動神経は大したもので、10回飛んで、10回ともほぼノースプラッシュだった。
「飛び込みもできるのか」
黒崎は唸った。
2020年の12月下旬。
ブラックドッグ本社ビル最上階。黒崎はAIに解析させた最終レポートをディスプレイに叩き出した。
『サラ・テヴァリエ:限界閉塞深度 238メートル』
「238メートル!?……正気か?」
静止した状態でどこまで潜れて、そして地上に戻ってこられるか、それは筋肉、心肺機能など、身体本来の丈夫さを表す数値だ。
オーストラリアの女性フリーダイバー上位3人にも同様のデータの提供をしてもらったが、軒並み120メートル前後だった。
トップアスリートの記録を遥かに凌駕するその数値に、黒崎は不敵な笑みを浮かべた。この分析が正しければ、200メートルで死ぬことはない。
「サラ。君はやはり、人間に化けた神の使いだったのか」
彼はケアンズ近郊の極秘の私有海岸に、2つの全く異なる施設を設計した。
1つは、一般公開を目的とした劇場「NUCLEUS」、そしてもう1つは、その隣、完全密室の動画撮影施設「HADAL」。
HADALの隅には、岩盤を垂直に貫き、水深200メートルにまで達する漆黒の円柱が据えられた。そこにあるのは、無数の超高感度4Kカメラと、黒崎の独占欲だけだった。
黒崎が一番気にしていたのは、自分のために逮捕されてしまった青年、ヘンリー・西谷のことだ。
すぐニューカレドニアの首都ヌメアに飛び、国際弁護チームを結成し、なんとか不起訴の方向で話をつけるべく奔走した。
また、、アール島の中心に、ブラックドッグ社提供のWi-Fi基地を設営した。
これにより、アール島でも、携帯電話が使え、インターネットにも接続できる。
そして、サラにも携帯電話を与えた。
パソコンは「絶対使わない」と拒否されたが。
次に、町の中心街にあった飲食店の内装リニューアル。防犯カメラも付けた。
首長のジャン医師も
「これでやっと本土の人と同じような生活ができる」
とご満悦だ。
だが、ここを訪れる真の目的は、サラの異常な心肺機能とその身体能力を数値化して分析、そのためのサンプリングだ。
黒崎はアクアラングを背負い、サラの潜水に付き添った。
だが、鍛え抜かれた黒崎でさえ、耳抜きと窒素酔いの恐怖に抗いながら、水深30メートルまで辿り着くのが限界だった。
「……信じられん」
黒崎が重いタンクを背負って喘ぐ傍らで、サラは一切の衣類を脱ぎ捨てた全裸のまま、まるで無重力の宇宙を舞うように、音もなく暗緑色の深淵へと吸い込まれていく。
彼女の手首に巻かれた特注のバイオセンサーから、リアルタイムでバイタルデータが黒崎の手元のデバイスへと流れ込む。
あるときは、アール島西側の15メートルの断崖絶壁からのダイブ。サラの運動神経は大したもので、10回飛んで、10回ともほぼノースプラッシュだった。
「飛び込みもできるのか」
黒崎は唸った。
2020年の12月下旬。
ブラックドッグ本社ビル最上階。黒崎はAIに解析させた最終レポートをディスプレイに叩き出した。
『サラ・テヴァリエ:限界閉塞深度 238メートル』
「238メートル!?……正気か?」
静止した状態でどこまで潜れて、そして地上に戻ってこられるか、それは筋肉、心肺機能など、身体本来の丈夫さを表す数値だ。
オーストラリアの女性フリーダイバー上位3人にも同様のデータの提供をしてもらったが、軒並み120メートル前後だった。
トップアスリートの記録を遥かに凌駕するその数値に、黒崎は不敵な笑みを浮かべた。この分析が正しければ、200メートルで死ぬことはない。
「サラ。君はやはり、人間に化けた神の使いだったのか」
彼はケアンズ近郊の極秘の私有海岸に、2つの全く異なる施設を設計した。
1つは、一般公開を目的とした劇場「NUCLEUS」、そしてもう1つは、その隣、完全密室の動画撮影施設「HADAL」。
HADALの隅には、岩盤を垂直に貫き、水深200メートルにまで達する漆黒の円柱が据えられた。そこにあるのは、無数の超高感度4Kカメラと、黒崎の独占欲だけだった。
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