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【外伝】Episode-α 氷華の女王 第6章 カムチャッカの審判
6-6.暴かれた嘘
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14時50分。
原子力潜水艦「カムチャッカ」のハッチが閉まり、巨大な推進器が回転を始めた。
その振動が止まったことを確認し、黒崎は海底から力強く蹴り出した。
(勝った……!)
海面に顔を出し、太陽の光を浴びた黒崎は、岸で待つサラとヘンリーに右手を掲げた。
しかし、その時。
潜水艦「カムチャッカ」の艦橋では、地獄のような光景が広がっていた。
そこは外界の熱気とは無縁の、油とオゾン臭が混じり合う鋼鉄の静寂に包まれた中、収容されたコナミは、濡れた黄色い紐ビキニのまま、水滴を滴らせて通路の冷たい床に膝をついていた。
強力な冷房の冷気が、剥き出しの肌に容赦なく突き刺さり、産毛が逆立つ。
彼女は細い両腕で己を抱きしめるようにして、ガタガタと激しく震えていた。
その震えは寒さゆえか、あるいはこれから始まるであろう凄惨な結末への恐怖ゆえか。
「よくやった、と言いたいところだが……。なんだ、この映像は、ん?」
指揮官イワン・ヴォルコフの低く、湿った声が響く。
彼は壁一面に並ぶ20枚の監視ディスプレイのうちの1つを、まるで獲物を追い詰める鞭のように指差した。
そこには、黒崎とコナミが、抱き合って水深20メートルの海底まで潜り、少し離れた岩陰に、金髪ロングの全裸の女も潜行している映像が映っていた。
そのコナミが脚を黒崎の首にまわし、黒崎がぐったりしたところに、金髪ロングの女が黒崎のすぐそばに酸素ボンベをもってきて、黒崎にレギュレーターを咥えさせ、黒崎がその後悠々と呼吸をする姿が、逃げ場のない鮮明さで記録されていた。
「……あ」
コナミの喉が小さく鳴る。絶望が全身の血を凍らせた。
「今朝、サラという女がトンネルを潜航していたこと、そして我々の潜水艦が目撃されていたことは知っていたよ。だが、あの時、この海域に20個の小型監視カメラが設置していたなんて、彼女にもわからなかったみたいだな。まあカメラは小さいからな、無理もないか」
ヴォルコフは、仕組まれた茶番を暴いた愉悦に浸り、肩を揺らして笑った。
彼は艦橋の通信士に向き直ると、冷酷な眼光を放ちながら、地獄の宣告を下した。
「両舷前進微速。進路そのまま。島の西側に移動する。……あとで黒崎と一緒にたっぷりいたぶって殺してやるから楽しみにしてろ」
コナミは、そのまま床に崩れ落ちた。
自分の裏切りが、かつての恋人を救うどころか、彼を死の淵へ引きずり出すための最悪の口実になったことを悟り、焦点を失った瞳で虚空を見つめていた。
原子力潜水艦「カムチャッカ」のハッチが閉まり、巨大な推進器が回転を始めた。
その振動が止まったことを確認し、黒崎は海底から力強く蹴り出した。
(勝った……!)
海面に顔を出し、太陽の光を浴びた黒崎は、岸で待つサラとヘンリーに右手を掲げた。
しかし、その時。
潜水艦「カムチャッカ」の艦橋では、地獄のような光景が広がっていた。
そこは外界の熱気とは無縁の、油とオゾン臭が混じり合う鋼鉄の静寂に包まれた中、収容されたコナミは、濡れた黄色い紐ビキニのまま、水滴を滴らせて通路の冷たい床に膝をついていた。
強力な冷房の冷気が、剥き出しの肌に容赦なく突き刺さり、産毛が逆立つ。
彼女は細い両腕で己を抱きしめるようにして、ガタガタと激しく震えていた。
その震えは寒さゆえか、あるいはこれから始まるであろう凄惨な結末への恐怖ゆえか。
「よくやった、と言いたいところだが……。なんだ、この映像は、ん?」
指揮官イワン・ヴォルコフの低く、湿った声が響く。
彼は壁一面に並ぶ20枚の監視ディスプレイのうちの1つを、まるで獲物を追い詰める鞭のように指差した。
そこには、黒崎とコナミが、抱き合って水深20メートルの海底まで潜り、少し離れた岩陰に、金髪ロングの全裸の女も潜行している映像が映っていた。
そのコナミが脚を黒崎の首にまわし、黒崎がぐったりしたところに、金髪ロングの女が黒崎のすぐそばに酸素ボンベをもってきて、黒崎にレギュレーターを咥えさせ、黒崎がその後悠々と呼吸をする姿が、逃げ場のない鮮明さで記録されていた。
「……あ」
コナミの喉が小さく鳴る。絶望が全身の血を凍らせた。
「今朝、サラという女がトンネルを潜航していたこと、そして我々の潜水艦が目撃されていたことは知っていたよ。だが、あの時、この海域に20個の小型監視カメラが設置していたなんて、彼女にもわからなかったみたいだな。まあカメラは小さいからな、無理もないか」
ヴォルコフは、仕組まれた茶番を暴いた愉悦に浸り、肩を揺らして笑った。
彼は艦橋の通信士に向き直ると、冷酷な眼光を放ちながら、地獄の宣告を下した。
「両舷前進微速。進路そのまま。島の西側に移動する。……あとで黒崎と一緒にたっぷりいたぶって殺してやるから楽しみにしてろ」
コナミは、そのまま床に崩れ落ちた。
自分の裏切りが、かつての恋人を救うどころか、彼を死の淵へ引きずり出すための最悪の口実になったことを悟り、焦点を失った瞳で虚空を見つめていた。
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