『「嘘つき令嬢」と婚約破棄された私、真実しか言えない「呪いの首輪」のせいで聖女だとバレて冷徹公爵に執着されています』

恋守あい

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「……はぁ。昨夜の甘い悪夢が、まだ脳裏に焼き付いて離れませんわ……」

二人きりの朝、私は誰もいないキッチンのテーブルに突っ伏していました。
昨夜は、アッシュ様と一緒にシチューを作るという、悪女にあるまじき「睦まじい共同作業」を強制(?)させられ、私の精神的なHPはゼロ。
ですが、まだ一週間は始まったばかりですわ!

(落ち着くのよ、クロエル。家事の中でも、洗濯は重労働……。特にこの屋敷の巨大な絨毯や、私の重たいドレスの数々。これらをすべてアッシュ様に手洗いで命じれば、流石に『もう勘弁してくれ』と泣き言を漏らすはずですわ!)

私は鼻息荒く、洗濯物が山積みになっている裏庭の洗い場へと、アッシュ様を呼び出しました。

そこには、爽やかな朝の光を浴びて、なぜか既にやる気満々でシャツのボタンを二つほど外したアッシュ様が立っていました。

「待っていたぞ、クロエル。次は洗濯だな? 私に何を洗ってほしい? 君の汚れはすべて、私がこの手で白く清めてやろう」

「あら、アッシュ様。ご機嫌よう。……ふん、その余裕がいつまで続くかしら。いいですか、今日洗っていただくのは、この屋敷で一番重くて汚れのひどい、広間の大絨毯ですわ! それを機械を使わず、このタライで、人力で洗いなさい! 私はそれを見て、あなたが腰を痛める姿を高笑いしながら見物してあげますわ!」

(よしっ! 公爵に絨毯を足踏み洗いさせるなんて、身分不相応な屈辱ですわ! さあ、冷徹な仮面を剥がしなさい!)

アッシュ様が、おもむろに靴を脱ぎ、ズボンの裾を膝まで捲り上げました。
剥き出しになった逞しい足、そして動くたびに浮き上がるふくらはぎの筋肉。……あら、意外と野性的で素敵……なんて思っている暇はありませんわ!

――ググッ。

喉の奥で、真実の熱が噴火しました。
チョーカーの紫色の光が、水しぶきと太陽光に反射して、虹色の慈愛を放ちます。

「……高笑いしながら見物してあげますわ! ……なんて、本当は、あなたのその力強い脚の筋肉を、至近距離で心ゆくまで堪能したいんですの! 水に濡れて透けたシャツから覗くあなたの胸筋……、私、それを見ながらお茶を飲めば、三日はおかずがいりませんわ!! さあ、アッシュ様! もっと激しく、その肉体美を私に見せつけてちょうだい!!」

「「…………」」

アッシュ様が、タライの中でピタリと動きを止めました。
彼の耳が、みるみるうちに沸騰した薬缶(やかん)のように真っ赤に染まっていきます。

(あああああ! 私の口! 私は悪女見習いのはずなのに、なんでただの『筋肉フェチの変態令嬢』みたいな発言をしているのよ!!)

「……クロエル。君がそこまで私の身体を求めていたとは、気づかなかった」

アッシュ様が、濡れた手で前髪をかき上げ、私を射抜くような情熱的な視線で見つめました。

「……おかずがいらない、か。……ならば、洗濯が終わった後、もっとじっくりと私のすべてを『試食』させてやろうか? 絨毯だけでなく、私の理性の汚れまで、君のその愛で洗い流してほしいものだ」

「ひ、ひぃいいいい! 試食なんて不潔ですわ! 私はただの比喩として……っ!」

――ググッ。

「……比喩なんて嘘ですわ! ……本当は、今すぐそのシャツを脱ぎ捨てて、私をその逞しい腕で抱き上げてほしいんですの! 二人きりのこの屋敷で、誰の目も気にせず、あなたの獣のような愛に溺れてしまいたいですわ!!」

「…………っ、……承知した。洗濯は中止だ。……もっと優先すべき『重労働』が、私たちにはあるようだからな」

アッシュ様が、濡れた脚のままタライを飛び出し、私をガバッと抱き上げました。

「ちょ、ちょっと待ってください! 絨毯がまだ汚れたままですわ! アッシュ様、離して、離してくださ……っ(本当は:寝室までダッシュしてくださいまし!)」

(終わりましたわ……。家事で苦労させるはずが、公爵様の『野生の独占欲』を完全解禁させてしまいましたわーーー!!)

私の悪女への返り咲きは、またしても華麗な「筋肉鑑賞会(と、その後の熱い抱擁)」によって阻止され。
誰もいない静かな屋敷に、アッシュ様の低い笑い声と、私の不本意な(?)歓喜の悲鳴が響き渡るばかりなのでした。
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