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「……あ、頭が割れそうですわ。昨夜の図書室での出来事、あれはきっと古い本のインクに含まれた成分による幻覚ですわ。そうですわ、そうに決まっていますわ!」
二人きりの監禁生活四日目。私は乱れた髪を掻き乱しながら、キッチンの隅で震えていました。
昨夜、図書室でアッシュ様に「貪ってちょうだい」なんて……!
悪女の仮面どころか、淑女の矜持まで埃と一緒にゴミ箱へ放り込んでしまったようなものですわ。
(落ち着きなさい、クロエル! 今日こそは、今日こそはアッシュ様の体力を限界まで削り、私への愛を『疲労』と『怨嗟』に変えてみせますわ!)
私は鼻息も荒く、まだ日が昇りきらない早朝のキッチンにアッシュ様を呼び出しました。
目の前には、巨大なボウルに入った大量の小麦粉と水。
「アッシュ様、ご機嫌よう。今日の朝食は、我が家系に伝わる『超重圧・百回練りパン』ですわ! さあ、この十キロはある生地を、一滴の汗も漏らさず、腕が上がらなくなるまで練り上げなさい! 私はそれを見ながら、あなたが苦悶の表情を浮かべるのを優雅に楽しませていただきますわ!」
(よしっ! 重労働の代表格、パン作り! 公爵家の当主にパンを練らせるなんて、これ以上の侮辱はありませんわ! さあ、その逞しい腕をぷるぷると震わせなさいな!)
アッシュ様は、おもむろにシャツの袖を肩まで捲り上げました。
朝日を浴びて浮き上がる上腕二頭筋、そして生地に体重をかけるたびに強調される広背筋。……あら、パン生地になりたい……なんて思っている暇はありませんわ!
――ググッ。
喉の奥から、沸騰したシロップのような「本音」が溢れ出しました。
チョーカーの紫色の光が、白い粉が舞うキッチンを聖なる空間へと変えていきます。
「……苦悶の表情を浮かべるのを優雅に楽しませていただきますわ! ……なんて、本当は、あなたのその力強い腕が生地を押し潰すたびに、私、ドキドキして心臓が止まりそうですの! あなたが私のために、一生懸命に愛を込めてパンを練ってくれる……。そんな健気なあなたの姿を、一生隣で眺めていたいんですのよ!! さあ、アッシュ様! その筋肉で、私への愛をたっぷり生地に練り込んでちょうだい!!」
「「…………」」
アッシュ様が、真っ白な粉にまみれた手で顔を覆いました。
指の間から見える瞳には、もはや隠しきれない、狂おしいほどの愛着が渦巻いています。
(あああああ! また! また私の口が、アッシュ様の『スパダリ・エンジン』を全開にしてしまいましたわ!!)
「……愛を練り込む、か。……承知した。君がこれほどまでに望むなら、世界で一番甘くて、重いパンを焼き上げてやろう」
アッシュ様が、さらに力を込めて生地を練り始めました。
その動きは、まるで私の心をじっくりと解きほぐすかのように、丁寧で、それでいて強引です。
「……クロエル。パンが焼き上がるまで、まだ時間がかかるな。……その間、私の『腕の筋肉』をもっと近くで観察したいと言っていただろう?」
「は、はい!? そんなこと……っ!」
――ググッ。
「……そんなこと……っ、……なんて、本当は、その汗ばんだ腕に今すぐ抱きつきたいんですの! パン生地なんてどうでもいいわ! あなたのその熱い身体を、私というオーブンでじっくりと焼き上げたいんですのよ!! アッシュ様、朝から私を誘惑しないでくださいまし……!!」
「…………っ、……焼き上げる、か。……いいだろう。どちらが先に溶けてしまうか、勝負だな」
アッシュ様は、粉のついた手のまま私の腰を引き寄せ、早朝のキッチンで二度目の「教育」を開始しようとしました。
(終わりましたわ……。パン作りで体力を削るはずが、私の本音がアッシュ様のスタミナを無限に回復させてしまいましたわーーー!!)
私の悪女への返り咲きは、またしても華麗な「朝のキッチンでの熱烈な抱擁」によって阻止され。
屋敷中に広がる香ばしいパンの香りと共に、私たちの愛(と私の羞恥心)も、こんがりと、甘く焼き上がっていくのでした。
二人きりの監禁生活四日目。私は乱れた髪を掻き乱しながら、キッチンの隅で震えていました。
昨夜、図書室でアッシュ様に「貪ってちょうだい」なんて……!
悪女の仮面どころか、淑女の矜持まで埃と一緒にゴミ箱へ放り込んでしまったようなものですわ。
(落ち着きなさい、クロエル! 今日こそは、今日こそはアッシュ様の体力を限界まで削り、私への愛を『疲労』と『怨嗟』に変えてみせますわ!)
私は鼻息も荒く、まだ日が昇りきらない早朝のキッチンにアッシュ様を呼び出しました。
目の前には、巨大なボウルに入った大量の小麦粉と水。
「アッシュ様、ご機嫌よう。今日の朝食は、我が家系に伝わる『超重圧・百回練りパン』ですわ! さあ、この十キロはある生地を、一滴の汗も漏らさず、腕が上がらなくなるまで練り上げなさい! 私はそれを見ながら、あなたが苦悶の表情を浮かべるのを優雅に楽しませていただきますわ!」
(よしっ! 重労働の代表格、パン作り! 公爵家の当主にパンを練らせるなんて、これ以上の侮辱はありませんわ! さあ、その逞しい腕をぷるぷると震わせなさいな!)
アッシュ様は、おもむろにシャツの袖を肩まで捲り上げました。
朝日を浴びて浮き上がる上腕二頭筋、そして生地に体重をかけるたびに強調される広背筋。……あら、パン生地になりたい……なんて思っている暇はありませんわ!
――ググッ。
喉の奥から、沸騰したシロップのような「本音」が溢れ出しました。
チョーカーの紫色の光が、白い粉が舞うキッチンを聖なる空間へと変えていきます。
「……苦悶の表情を浮かべるのを優雅に楽しませていただきますわ! ……なんて、本当は、あなたのその力強い腕が生地を押し潰すたびに、私、ドキドキして心臓が止まりそうですの! あなたが私のために、一生懸命に愛を込めてパンを練ってくれる……。そんな健気なあなたの姿を、一生隣で眺めていたいんですのよ!! さあ、アッシュ様! その筋肉で、私への愛をたっぷり生地に練り込んでちょうだい!!」
「「…………」」
アッシュ様が、真っ白な粉にまみれた手で顔を覆いました。
指の間から見える瞳には、もはや隠しきれない、狂おしいほどの愛着が渦巻いています。
(あああああ! また! また私の口が、アッシュ様の『スパダリ・エンジン』を全開にしてしまいましたわ!!)
「……愛を練り込む、か。……承知した。君がこれほどまでに望むなら、世界で一番甘くて、重いパンを焼き上げてやろう」
アッシュ様が、さらに力を込めて生地を練り始めました。
その動きは、まるで私の心をじっくりと解きほぐすかのように、丁寧で、それでいて強引です。
「……クロエル。パンが焼き上がるまで、まだ時間がかかるな。……その間、私の『腕の筋肉』をもっと近くで観察したいと言っていただろう?」
「は、はい!? そんなこと……っ!」
――ググッ。
「……そんなこと……っ、……なんて、本当は、その汗ばんだ腕に今すぐ抱きつきたいんですの! パン生地なんてどうでもいいわ! あなたのその熱い身体を、私というオーブンでじっくりと焼き上げたいんですのよ!! アッシュ様、朝から私を誘惑しないでくださいまし……!!」
「…………っ、……焼き上げる、か。……いいだろう。どちらが先に溶けてしまうか、勝負だな」
アッシュ様は、粉のついた手のまま私の腰を引き寄せ、早朝のキッチンで二度目の「教育」を開始しようとしました。
(終わりましたわ……。パン作りで体力を削るはずが、私の本音がアッシュ様のスタミナを無限に回復させてしまいましたわーーー!!)
私の悪女への返り咲きは、またしても華麗な「朝のキッチンでの熱烈な抱擁」によって阻止され。
屋敷中に広がる香ばしいパンの香りと共に、私たちの愛(と私の羞恥心)も、こんがりと、甘く焼き上がっていくのでした。
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