『「嘘つき令嬢」と婚約破棄された私、真実しか言えない「呪いの首輪」のせいで聖女だとバレて冷徹公爵に執着されています』

恋守あい

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「……あ、あ、足腰が……。パン作りの後の『教育』が、まさかお昼過ぎまで続くなんて聞いておりませんわ……!」

二人きりの自給自足生活も五日目。私はフラフラと壁を伝いながら、次なる作戦を練っていました。
アッシュ様の体力は底なし、愛の深さは底知れず。もはや私の「悪女」としてのアイデンティティは、あの方の寝室のシーツのシワの中に消えてしまったようなものですわ。

(ですが、諦めませんわよ! 今日の舞台は、屋敷の地下深く……一年中氷のように冷え切った『ワインセラー』ですわ! あそこの重たい樽をすべて並べ替えさせ、凍えるような寒さの中で労働を強行すれば、流石のアッシュ様も『もう勘察してくれ、お前は本当に悪女だ』と愛想を尽かすはずですわ!)

私は厚手のショールを羽織り、冷気が漂う地下の扉の前でアッシュ様を待ち構えました。

「アッシュ様、ご機嫌よう。見ての通り、ここのワインセラーは管理がなっておりませんの。さあ、今すぐこの数百キロもあるオーク樽をすべて年代順に並べ替えなさい! 私はこの入り口で、あなたが凍えて鼻水を流す無様な姿を、ワインを片手に見物させていただきますわ!」

(よしっ! 公爵に力仕事をさせ、自分だけ暖を取る……まさに悪女の極みですわ! さあ、寒さに震えて私を嫌いなさい!)

アッシュ様は、暗いセラーの奥を一瞥した後、私を捕食者のような瞳で見つめました。
彼はシャツのボタンをさらに外し、冷気など微塵も感じていないような熱いオーラを放っています。

「……ワインセラーか。……なるほど、クロエル。君は、私と『誰にも見つからない暗闇』で、芳醇な香りに包まれながら酔いしれたいのだな」

「は、はぁ!? 私はあなたが凍えるのを見たいと言って……っ!」

――ググッ。

喉の奥で、芳醇なヴィンテージワインのような「本音」が溢れ出しました。
チョーカーの紫色の光が、ひんやりとしたセラーの空気を妖艶なピンク色に染め上げていきます。

「……凍えるのを見たいと言って……っ、……なんて、本当は、この狭くて暗い場所で、あなたと密着して暖め合いたいんですの! 樽なんてどうでもいいわ! あなたのその熱い身体を、私という名のワインでたっぷりと酔わせて、二度とここから出られないように閉じ込めてしまいたいんですのよ!! 私、あなたの香りとワインの香りが混ざり合ったこの空間で、あなたの理性が壊れる瞬間を一番近くで見ていたいんですの……!!」

「「…………」」

アッシュ様が、重たい樽を片手で軽々と脇へどけ、私への「道」を作りました。
彼は冷たい空気の中で、私の熱を奪い去るかのような情熱的な笑みを浮かべています。

(あああああ! また! 私の口が、アッシュ様の『独占欲・リミッター』を木っ端微塵にしてしまいましたわ!!)

「……私というワインで酔わせる、か。……いいだろう。最高のヴィンテージよりも甘く、強い君を、一滴残らず味わい尽くすとしようか」

アッシュ様の手が私の腰を掴み、冷たい石壁へと押し込みました。
極寒のセラーのはずなのに、彼と触れ合っている場所から、火傷しそうなほどの熱が全身に広がっていきます。

「……クロエル。君がそこまで望むなら、樽の整理など必要ないな。……今、ここで、私を存分に酔わせてみせろ」

「ひ、ひぃいいいい! 酔わせるなんて……っ、私はただの比喩で……っ!」

――ググッ。

「……比喩なんて嘘ですわ! ……本当は、今すぐその熱い唇で、私の思考を麻痺させてほしいんですの! 寒さなんて感じないくらい、あなたの愛で私を真っ赤に染め上げてちょうだい!! アッシュ様、もう待てませんわ……!!」

「…………っ、……承知した。……君を、一生覚めない酔いの中へ連れて行ってやろう」

アッシュ様は、年代物のワインの栓を抜くかのように、私の抵抗を優しく、けれど強引に解き放ちました。

(終わりましたわ……。寒さで追い出すはずが、地下の密室を『特大の蜜月ルーム』に変えてしまいましたわーーー!!)

私の悪女への返り咲きは、またしても華麗な「極寒のセラーでの熱烈な逢瀬」によって阻止され。
誰にも見つからない地下深くで、私たちの愛は、どの最高級ワインよりも深く、甘く、熟成されていくのでした。
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