ばらがき辰の祓い道

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激闘

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 まさか、辰さんを連れ去るつもり。

 私はひやっとしたのだけど、次の瞬間、目を見開いていた。
 ぶわっと広がった霧は、蛇が襲い掛かるように私に飛んできたのだから。辰之助の肩口を通り越して、こちらへ。
 そう、この男が狙ってきたのは……私。
 辰之助を倒してからゆっくりどうこうしようと考えていたのかもしれないが、なかなか決着がつかなかったから、きっと……。
 だがそんな呑気なことを考えている余裕などない。
 私は体を固まらせた。逃げ場などない。
 今は窓から逃げたって、受け止めて助けてはもらえないのだから。

「畜生!」

 辰之助の声が鋭く響いた。
 私に襲い掛かる黒くて長い、黒色。
 それに向かって、刃を一閃した。
 そこから飛んできたのは、今度、光。
 光の弧のようなものだった。

 パァンッ!

 私の目の前で、強い衝撃がぶつかり合い、弾けた。
 弾けたものは四散する。びりっとした痛みが体に振ってきて私はうめいた。
「うぁ……っ!」
 まるで針をたくさん浴びたようだった。
 けれど、きっとそれはまだましであった。黒い蛇がこのまま直撃していたら、体を貫かれていたであろう。
「うう……!」
 それでも細かな痛みが体を襲い、私は立っていられなくなった。しゃがみこんでしまう。
 ずきずきと、あちこちに痛みが跳ねる。
「くそっ、夜留子!」
 辰之助がそれを見て、一旦男を放置してこちらへ駆けてきてくれる。肩に触れられた。
 男に背中を見せないような体勢にはなったが、私の様子を見てくれた。
「大丈夫か!」
 ぐいっと肩を持ち上げられて、顔を覗き込まれるので、私はなんとか笑みを浮かべた。
「だ、……大丈夫、……ありがとう……」
 直撃をまぬがれたことのお礼を言ったけれど、辰之助は顔を歪めた。
「わりぃ、夜留子……」
 右手の刃を握り、かざし、こちらに黒い剣を向けている男を牽制するような仕草を見せつつも、私の様子を見て……不意に、一ヵ所に視線を留めた。さっと顔が強張る。
 なに、どこか、怪我でも……。
 私はその視線を追って、びくっとした。

 胸元。
 首すじをかすめられたのか、たらりと血が流れていたのだから。

 さっと血の気が引く。
 急にずきんっと痛みも跳ねた。
 が、次に聞こえたのは、ごくっと唾を飲むような音であった。
 辰之助のほうから聞こえてきた。

「わりぃ、……ちっと、もらうぜ!」
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