眠り王子と恋の夢

白妙スイ@1/9新刊発売

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幼なじみは少々困りもの②

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「じゃ、明日プリンパンおごって」
 ちょっと考えて、つむぎは要求した。
 プリンパン、はつむぎの好物である。パンの中にプリンが丸ごとひとつ入った、スイーツパン。
 昼休み、購買で売っているものだ。
 ただ、ちょっと入手難易度が高い。人気のパンなので、早く行かないと売り切れてしまうのだ。
「えー、明日の昼前、体育なんだけど。ムリムリ」
 空も顔をしかめた。だがここで引く気はない。プリンパンが食べたい以上に、今日の気持ちを晴らさなければ。
「そんなことないでしょ。体育なら一階の購買にすぐ行けるじゃない」
「それはそうだけど……めんど、……」
 言いかけた空。つむぎは追い打ちをかけるように、じっとりした目で見つめた。
 空が、う、と詰まる。数秒後、今度、肩を落とすのは空だった。
「……わかったよ」
「よろしい」
 つむぎは満足した。ほっとしてちょっとふざけるように言う。
 空は教科書を忘れたり、おまけにそれを放課後にまで返しに来なかったりと、ルーズなところはあるものの、決して悪人ではない。むしろ、昔からつむぎには優しくしてくれるし、なにかと助けてくれた。その甘えがこの『ルーズ』になっていると言えたかもしれないけれど。
「はぁ……もう帰るのか? 一緒に帰る?」
 ため息をついた空。誘われて、つむぎはちょっと考えたけれど、うなずいた。
「そうだね、いいよ。今日は部活もないし」
 言った通り、今日は部活がない。つむぎが所属しているのは手芸部なのだが、元々あまり活動熱心な部活ではない。週に三日しか活動がないし、それも絶対に参加しなければいけないというものではない。ゆるいほうである。
 だから今日はもう帰ろうと思っていたのだし、友達に声をかけようかと思っていたのだ。その一緒に帰る相手が空になったところでかまわない。
 帰り支度も終えて、つむぎは教室の中のひとたちに「じゃぁねー」と軽く声をかけた。
 教室に残っていた子たちが「つむぎちゃん、また明日ねー」などと手を振ってくれる。
「また一緒に帰るのかよー、仲いいよなお前ら」
 その中で、かけられた言葉。ある男子生徒からだったけれど、まぁもうなれっこである。小学校の頃……いや、幼稚園か。その頃から空とは一緒なのであるし、一緒に帰るのだってもう何百回あったか。
「まぁなー、幼なじみだからな!」
 空がその子に答えたけれど、なんだかその言葉は誇らしそう、だとつむぎは思った。理由はよくわからなかったけれど。
 そのまま教室を出て、学校を出て、歩いて十五分ほどの家へ……。
 帰る間、空はいつも通り明るく話をしていた。つむぎもそれに答えて、今日の授業のことやらを話した。まったく穏やかな、いつも通りの時間であった。
 空と一緒に帰って良かったかな、とつむぎは帰宅してから思った。
 歩いて三分のところに住んでいる空と別れて、「ただいま」と家に入って、自室へ入っても、今日の昼休みの『事件』からのムカつきはだいぶ薄れてくれていたのだから。
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