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学園祭名物メイドカフェ②

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「おー、おかえりなさいませ、つむぎ」
 奥からいばら先輩も出てきたのだけど、今度はぱちくりでは済まなかった。どきんっと心臓が高鳴ってしまう。
 いばら先輩も男子生徒が着ている執事服を身に着けていた。身長が高くてスタイルもいいので、大人っぽく見える姿だ。
 おまけに髪を持ち上げていた。きりっとしていて、まさに『執事さん』。
 なんとカッコイイ姿。思わず見とれてしまったけれど、なんとか言った。
「あっあの!? 先輩、これは……」
 言ってからはっとした。昨日、お昼に焼きそばなどを食べながら先輩が「明日がいい」と言った意味。にやっと笑ってきたこと。
 この格好でつむぎをおどろかせるために決まっていた。
「メイド&執事カフェだ。素敵だろう」
 いばら先輩はしれっと言う。そういえば、看板にもそう書いてあった気がする。入るとき気づかなかった自分をうかつすぎると今さら思った。

 確かに素敵だけど!

 つむぎは心の中で叫んだ。
 確かに素敵だけど、「わぁ、すごいですね!」なんて言える状況なものか。想像と違いすぎて。
 そしてそんなことを叫んでいる場合でもなかったのである。
「それで、予定外だがちょうど良かった。ちょっとこっちに来てくれ」
 手をがしっと掴まれる。そのまま引っ張られた。
「え、え……っ!?」
 あわあわしたが、振り払うことは思い付きもしなかった。つむぎは手を掴んだいばら先輩によって、バックヤードへ連れ込まれてしまった。
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