上 下
4 / 125
バレエとの出会い

2

しおりを挟む
「そうねぇ、もうちょっと早く見に行ってればよかったわね」

「早く?」

 首をかしげた莉瀬に、やはりなんでもないようにお母さんは言った。

「バレエっていうのはね、幼稚園くらいから習うものなのよ。そうじゃないと体ができないんですって」

 幼稚園。

 莉瀬はだまってしまった。

 自分は小学四年生だ。

 幼稚園に通っていたのなんて、もう五年近く前になる。

 つまりもう遅すぎるってこと?

 やりたいと思った直後、がけからつき落とされたようなものだった。

 それはもう、きれいな舞台から落っこちたような。

「どうして? 体力とか? それなら私だって」

 莉瀬にその理由はわからず言いつのった。

 莉瀬は体育が得意だった。

 運動会では毎回リレーの選手に選ばれていたし、ドッジボールでも毎回ボールをつかまえては華麗に投げていた。

 そんな自分が『体ができない』という謎の理由で『無理だ』と言われるなんて信じがたかった。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

側妃ですが、陛下との幸せはございません。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

「花のカプセル ~私だけの花を咲かそう~ 」

児童書・童話 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

藁色の令嬢とストーカー気質の伯爵の話

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:5

処理中です...