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トウシューズは宝物

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 着がえ終わったら、髪の支度。

 鏡台の前に座ってポーチを開けた。

 下でふたつにくくっていた髪を下ろして、高い位置でポニーテールに結び直す。

 くるくると、巻いてまとめて、そこへネットをかぶせて、ピンで固定しておだんごに。

 バレエの基本スタイルである。


 はじめは謎だった。

 どうしておだんごなのか。

 ほかの髪型ではいけないのか。

 でも先生に聞いて納得した。


 ダンスではあるが、バレエは激しく動く、ほぼスポーツである。

 そんなときに、髪がゆらゆらゆれたりしては邪魔になる。

 おまけに悪くすれば、近くで踊っているひとの目に当たったりしてしまうこともあり、危険なのだ。

 なので結ぶだけではなく、きっちりまとめておだんごにするのだと教えられた。

 莉瀬ははじめこそ手間取ってお母さんに手伝ってもらったりしていたものの、不器用ではないのでそのうち自分でまとめられるようになった。

 今では数分で完成してしまう。

 ちょっと手間はかかるけれど、こうして準備をしていくうちに、心も『踊るモード』に入っていくので嫌いではなかった。

 最後にシューズをはけば、準備は終わり。

 手にしたシューズ用の、布の袋に入っているのは、莉瀬の宝物といってもいい一足、トウシューズである。
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