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トウシューズは宝物

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 それはともかく、莉瀬は乙津先生の微笑みが好きだった。

 学校の先生と同じ種類の、見守る優しさがたっぷり入った微笑み。

 確かに乙津先生のレッスンは厳しい。

 どなられたり、ましてや、ぶたれたりなどそんなことは絶対にないけれど、勝手なおしゃべりをしたり、危ないことをすれば注意がとぶ。

 それにレッスン中のアドバイスだって、ぴしり、ぴしりという言葉のムチで、叩かれているように、鋭くはっきりとしたものだ。

 どうしても背筋は、しゃんとするし、心も張りつめる。

 レッスン開始までにはもう少しあったので、莉瀬はフロアのかたすみで柔軟運動をはじめた。

 これは学校の体育の時間とまったく同じである。

 ストレッチがメイン。

 腕、肩、背中……。

 教室でも習ったけれど、学校の授業で習ったものも試してみる。

 レッスンの中にもストレッチや筋トレがあったり、バレエは本当にスポーツの一種である。

 ゆっくり、ひとつずつ進めていくうちに、時間ぴったりにくるような子たちもやってきて更衣室へ入っていく。

 もうすぐはじまるというころには、用具の準備。

 倉庫へ入って、鉄筋でできたまっすぐなスタンドと、木でできたバー。

 バレエのレッスン『長い木の棒に掴まって、アン・ドゥ・トロワ』というイメージにあった、バレエスタンド。

 あれは、組み立てて作るのだということを初めて知った。
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