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お礼はキャラメル
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その日のレッスンは普通に終わったし、終わって帰り道についても莉瀬は特に『おつかい』のことは思い出さなかった。
だって乙津先生を呼んできたというだけの『おつかい』だ。
そうたいしたことでもなかった。
それより帰り道の莉瀬はちょっと落ちこんでいた。
乙津先生にちょっときつめに注意されてしまったからだ。
前のレッスンと同じ失敗をした自分が悪いのだけど、うっかりしていたのだ。
なんて、言いわけだけど。
落ちこむやら、次の自主練習で取りもどさないと、と目標を立てるやらしていたら駅についてしまったし、電車に乗る頃には持ち前の切りかえのよさで、夕ご飯のことを考えるようになってしまっていた。
その日の夕ご飯は莉瀬をなぐさめてくれるかのように、大好きなハンバーグだったのだけど、それはともかく。
『彼』に再会したのは、土曜日のことだった。
出会っておつかいをした前回のレッスンが火曜日だったので、四日ほどが経ったことになる。
土曜日のレッスンはお昼すぎにはじまって、夕方にならないうちに終わってしまう。
ちょっと不便な時間だけど、なにしろCクラスの子たちは莉瀬以外がまだ小学生なのだ。
早い時間にレッスンが終わったほうがなにかと都合がいいからだと思う。
その夕方四時頃、莉瀬が教室を出て、建物も出るとそこに彼がいたのである。
「……こんにちは」
なんだかまた、気まずそうな顔をしていた。
「……はい。こんにちは」
莉瀬もシンプルにあいさつしてしまった。
数秒、彼も莉瀬もなにも言わなかった。
「ええと、またご用ですか? それなら……」
前回のことを思い出して莉瀬は言いかけたのだけど、彼が「いや」とそれを制した。
「そうじゃなくて、その……こないだはありがとうございました。お手数かけまして」
「え、……そんなことは、ないです」
お手数かけまして、なんて、かしこまったふうに言われるほどのことをしたわけではないのだ。
莉瀬はちょっと慌てた。
だって乙津先生を呼んできたというだけの『おつかい』だ。
そうたいしたことでもなかった。
それより帰り道の莉瀬はちょっと落ちこんでいた。
乙津先生にちょっときつめに注意されてしまったからだ。
前のレッスンと同じ失敗をした自分が悪いのだけど、うっかりしていたのだ。
なんて、言いわけだけど。
落ちこむやら、次の自主練習で取りもどさないと、と目標を立てるやらしていたら駅についてしまったし、電車に乗る頃には持ち前の切りかえのよさで、夕ご飯のことを考えるようになってしまっていた。
その日の夕ご飯は莉瀬をなぐさめてくれるかのように、大好きなハンバーグだったのだけど、それはともかく。
『彼』に再会したのは、土曜日のことだった。
出会っておつかいをした前回のレッスンが火曜日だったので、四日ほどが経ったことになる。
土曜日のレッスンはお昼すぎにはじまって、夕方にならないうちに終わってしまう。
ちょっと不便な時間だけど、なにしろCクラスの子たちは莉瀬以外がまだ小学生なのだ。
早い時間にレッスンが終わったほうがなにかと都合がいいからだと思う。
その夕方四時頃、莉瀬が教室を出て、建物も出るとそこに彼がいたのである。
「……こんにちは」
なんだかまた、気まずそうな顔をしていた。
「……はい。こんにちは」
莉瀬もシンプルにあいさつしてしまった。
数秒、彼も莉瀬もなにも言わなかった。
「ええと、またご用ですか? それなら……」
前回のことを思い出して莉瀬は言いかけたのだけど、彼が「いや」とそれを制した。
「そうじゃなくて、その……こないだはありがとうございました。お手数かけまして」
「え、……そんなことは、ないです」
お手数かけまして、なんて、かしこまったふうに言われるほどのことをしたわけではないのだ。
莉瀬はちょっと慌てた。
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