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落とし物の中には?
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さて、美雪の拾ったハンカチ。
それはハンカチではなかった。
確かに見た目はハンカチだ。薄紫色で、端は濃紫で縁取ってある。装飾はそれだけの随分シンプルなもので、いかにも男子高校生が持っているものらしかった。
美雪はそれをしげしげと見たのだが、ハンカチでないらしいのは、拾ったときに感じていた。
何故ならそれは、手に取ってすぐにわかるほどはっきりと、布の重さではなかったのだから。ハンカチにしては明らかにおかしい。
それの表面を見たあと、ひっくり返してみて、美雪は理解した。
そこには開き口があった。ティッシュケースのような形、布が重なってそれだけが蓋になっているようなもの。特にファスナーなどでしっかり閉まるものではなさそうだ。
多分、ここになにか、ちょっとしたものを入れられるのだ。ハンカチ型ミニポーチ、ともいえるかもしれない。
そういえば友達がこういうものを持っていた、と思い出した。絆創膏とか、あるいは板ガムとか。そのような、小さくてかさばらないものを入れるらしい。
ハンカチ型ポーチ。
それの形状と、重さと、そして手に触れている感触。美雪が今感じているそれはなにかというと、タオル地の本体ではなく、中に入っているなにか、の感触である。
なにか、硬いものが入っていそうだった。だけど尖ってはいない。美雪は力を入れないように、中のものの形を辿っていった。
しかし、複数入っているのか、なにか、重なっているような感触がした。見えない場所でものが重なり合っていたら、それの正体を探るのはそれだけ難しくなる。
それでもなんとなくわかった。硬い板のようなもの。それが何枚か入っているようだ。
板のようなもの?
そこから美雪は考えた。そこから電車が降りる駅に着くまで、その考えに耽ることになった。
なにかのケースとか。
いや、それならもっと厚みがあるだろう。
文房具。比較的薄いもの……付箋とかがまとめて入っているとか。
いや、それなら紙のやわらかな感触もするのではないだろうか。
もしかしてポイントカードとかメンバーズカードとか……そういうもの。
これは案外近いような気がした。
けれど、よく財布に入れるようなサイズではないようだ。もう少し小さめだと……思うのだけど。
色々思考を巡らせるのは案外楽しかった。すぐに駅についてしまうような感覚がしたほどに。
「次は……────駅……」
アナウンスが入って、美雪はちょっと顔を上げた。ドアの上の表示を見る。そこには確かに降りる駅の名前が表示されていた。
もう着いてしまうらしい。普段ならこの狭い空間から解放されることに嬉しくなるものだったが、今はなんだか惜しくなってしまった。
正解にはまだ辿り着けていないし、このまま延々と中を見ないまま考えていても、答えなどわからない。
けれど、楽しいものだったのだ。それはこのハンカチ型ポーチの謎がというよりは、ちょっと気にかけるようになっていた彼の持ち物が手の中にあるということが。
話しかけるきっかけになるだろう。
そう思ってしまい、美雪は、はっとする。これではまるで、話しかける口実を作るために、その場でわざわざ拾って押し付けに行かなかったようだ。
今の状況はまさに、学校の廊下で気になる男子の落とし物を拾って、嬉々として届けに行くようなものではないか。
その思考に恥じ入りながら、美雪はそのハンカチ型ポーチをサブバッグに入れた。タオル地なので、特別に保護しなくとも傷つく心配はあまりないと思ったので。
元々サブバッグに入っているのも、体操着の入った布の袋と、あとフェイスタオル。その程度なのだ。
美雪は保護したポーチを持ち物に追加させて、席を立って、電車が駅に停まるのをドアの前で数秒待った。
それはハンカチではなかった。
確かに見た目はハンカチだ。薄紫色で、端は濃紫で縁取ってある。装飾はそれだけの随分シンプルなもので、いかにも男子高校生が持っているものらしかった。
美雪はそれをしげしげと見たのだが、ハンカチでないらしいのは、拾ったときに感じていた。
何故ならそれは、手に取ってすぐにわかるほどはっきりと、布の重さではなかったのだから。ハンカチにしては明らかにおかしい。
それの表面を見たあと、ひっくり返してみて、美雪は理解した。
そこには開き口があった。ティッシュケースのような形、布が重なってそれだけが蓋になっているようなもの。特にファスナーなどでしっかり閉まるものではなさそうだ。
多分、ここになにか、ちょっとしたものを入れられるのだ。ハンカチ型ミニポーチ、ともいえるかもしれない。
そういえば友達がこういうものを持っていた、と思い出した。絆創膏とか、あるいは板ガムとか。そのような、小さくてかさばらないものを入れるらしい。
ハンカチ型ポーチ。
それの形状と、重さと、そして手に触れている感触。美雪が今感じているそれはなにかというと、タオル地の本体ではなく、中に入っているなにか、の感触である。
なにか、硬いものが入っていそうだった。だけど尖ってはいない。美雪は力を入れないように、中のものの形を辿っていった。
しかし、複数入っているのか、なにか、重なっているような感触がした。見えない場所でものが重なり合っていたら、それの正体を探るのはそれだけ難しくなる。
それでもなんとなくわかった。硬い板のようなもの。それが何枚か入っているようだ。
板のようなもの?
そこから美雪は考えた。そこから電車が降りる駅に着くまで、その考えに耽ることになった。
なにかのケースとか。
いや、それならもっと厚みがあるだろう。
文房具。比較的薄いもの……付箋とかがまとめて入っているとか。
いや、それなら紙のやわらかな感触もするのではないだろうか。
もしかしてポイントカードとかメンバーズカードとか……そういうもの。
これは案外近いような気がした。
けれど、よく財布に入れるようなサイズではないようだ。もう少し小さめだと……思うのだけど。
色々思考を巡らせるのは案外楽しかった。すぐに駅についてしまうような感覚がしたほどに。
「次は……────駅……」
アナウンスが入って、美雪はちょっと顔を上げた。ドアの上の表示を見る。そこには確かに降りる駅の名前が表示されていた。
もう着いてしまうらしい。普段ならこの狭い空間から解放されることに嬉しくなるものだったが、今はなんだか惜しくなってしまった。
正解にはまだ辿り着けていないし、このまま延々と中を見ないまま考えていても、答えなどわからない。
けれど、楽しいものだったのだ。それはこのハンカチ型ポーチの謎がというよりは、ちょっと気にかけるようになっていた彼の持ち物が手の中にあるということが。
話しかけるきっかけになるだろう。
そう思ってしまい、美雪は、はっとする。これではまるで、話しかける口実を作るために、その場でわざわざ拾って押し付けに行かなかったようだ。
今の状況はまさに、学校の廊下で気になる男子の落とし物を拾って、嬉々として届けに行くようなものではないか。
その思考に恥じ入りながら、美雪はそのハンカチ型ポーチをサブバッグに入れた。タオル地なので、特別に保護しなくとも傷つく心配はあまりないと思ったので。
元々サブバッグに入っているのも、体操着の入った布の袋と、あとフェイスタオル。その程度なのだ。
美雪は保護したポーチを持ち物に追加させて、席を立って、電車が駅に停まるのをドアの前で数秒待った。
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