ミニチュアレンカ

白妙スイ@1/9新刊発売

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手の中に、本

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「手元に置いておきたくて」
 美雪の言葉に、司は息を呑んだ顔をする。
 それは、司が以前自分で言ったことだ。意味は少々違えど。
『気に入ったものは、手元に置いておきたい』
 それは、本を買って、棚を圧迫しないためにすぐに売ってしまうのは嫌なので、電子版でいいから手元に置いておきたい。そういう意味だったけれど、美雪の言ったのは同じ類で、しかしもう一段階、上のことなのだ。
「大事な詩、なんでしょう?」
 続けた。
 これが核心である。
 遠回しではあるけれど、気持ちの欠片くらいは伝わってくれただろう。
 大事な詩。
 司の気持ちがこもった詩。
 文字に気持ちを込めるのは、なにも作者だけではない。読んだひともそれぞれ、自分の中に吸収して自分の感情を紛れ込ませていくものなのだ。
 そして今は、その一番あたたかい感情が、この詩の中にある。
「……ああ。そうなんだ」
 数秒して、司は肯定してくれた。笑みに変わる。
 それは、どこかはにかんだようなもので、美雪は初めて見る表情だった。
 とくりと心臓が高鳴る。
 飛び出しそうなものではなく、速くも、穏やかである感覚で鳴っていった。
 そして司は本棚に向き合って、手を伸ばした。
 そこには、抜きだして美雪に渡してくれたものとは別に、もう一冊ある。有名な一冊だから、複数入っていたのだろう。
「実は俺も欲しくなったんだ」
 それは呟くようだったけれど、隣にいるのだ。当たり前のように、しっかり聞こえた。
 まるで美雪だけに聞かせてくれるような、そういうもののように感じてしまう。
 そのもう一冊を抜き出して、手に取った。両手で支えて、開くことはなく見つめる。やはり、今ここで気軽に開けるものではないだろうから。
「大事なものは、形あるもので欲しいなって」
 本を数秒見つめて、そのあと美雪のほうへ顔を振り向けた。
 今度ははっきりとした笑みが浮かんでいた。
 それは本に対する想いだけではないだろう。
 自分の、あの詩に託した想い。
 それを表情にしたら、きっとこんな優しい笑顔になる。
「それは小さくて薄い、本を模したものじゃなくて、本物の本がいい」
 笑みと同じ、はっきりとした、その言葉。
 美雪が思って、この本を探しに来た理由と同じだった。
 電子の本もいい。プラスチックの本だっていい。
 けれど、紙の本の、しっかりとした質量。
 大事なときには、きっとそれが必要になってくる。
 そしてずっと形としてそばに在ってくれるのだ。
「私もそう思う。……だから、……感想、言っていいかな」
 自分も同じだから。
 しっかりと、ここにあるものとして。
 今度は『言葉』として。
 伝えるのだ。
 そんな美雪に、司は笑った。花のほころぶような、やさしい笑顔で。
「ああ。聞かせてほしい」
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