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肖像画の真実

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 そうだ、そんな重大すぎる目的のものだなんて思わなかった。

 それなら多少の腕は自負しているものの、プロ画家ではない自分が描くには、だいぶ気が引けてしまうではないか。

 そう、フレイディからの依頼である肖像画は、二年ほどあとという計画になっている、レノスブル家爵位の継承式典で使われるのだという。

 そして式典で使われるということは、これから『伯爵公が継承の儀を迎えたときのお姿』として、半永久的に残るということになる。

 噛み締めてしまうと、アマリアはもうくらくらするでは済まなくなりそうだった。

 あのとき伯爵公が言われた「重大なことであるから、どうか頼んだ」の本当の意味を、アマリアはやっと、遅すぎる今、知ったのであった。

「そうか。では言わなくて良かったね」

 けれどフレイディの言ったのはそれだったので、アマリアはあんぐり口を開けた。

 言わなくて良かった、なんて、つまり騙すようにして良かったということではないか。

「な、そ、そんな……! 騙したというのですか!?」

 なんて酷い。

 契約結婚なんてものまでしておいて、騙したというのだろうか。

 憤慨しそうになったアマリアだったが、今度、フレイディは焦らなかった。

 少し落ち着いたようで、説明の口調になる。

「そんなはずはないだろう。俺は肖像画になるなら、心から気に入るものが欲しいんだ」

 まずそう言われて、アマリアは黙るしかなかった。

 ひとまず説明を聞いてみよう、と思う。
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