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好きになってほしい

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「そうですか? ありがとうございます」

 来たるクリスマスを思わせるような濃緑色。

 小花が薄く散りばめられていて、落ち着いた中にもかわいらしさがある生地。

 フリルやレースは裾にしかついていない、大人しいものだ。

「ああ。大人っぽくも見えるね」

 フレイディはモデルの位置に立って、ポーズをつけつつも話をしてくる。

 今は大まかな塗りをしているところで、過度に集中する段階ではない。

 アマリアも特に気にすることなく、それどころか苦笑した。

「褒め過ぎですわよ」

 油絵だが、下塗りは水彩や色鉛筆でおこなうこともあるのだ。

 うっすら色を付けておいて、その次に、それらの色をガイドにして油絵の具で本塗りをする。

 フレイディの服は白と黒、差し色のワインレッドが基調。

 背景の垂れ幕もワインレッドなので、色が混ざってぼんやりした印象になってしまわないよう、質感を描き分けるのに気を使わなければ。

 本塗りに入った今から、気をつけたい点を考える。

「はい、お疲れ様でした。少し休憩にいたしましょう」

 きりの良いところまで作業がきた。

 なので少し休憩にしようと思って、アマリアはフレイディに声をかける。

 絵筆をデスクに置き、ふぅと息をついたとき、フレイディがこちらへやってきた。

 ずっと立っていたのに、あまり疲れた様子ではない。

 むしろ楽しそうだった。
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