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知らない少女の絵

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 春の兆しが見えてきたとはいえ、まだまだ冷える季節のこと。

 アマリアはレノスブル家にある倉庫へと向かっていた。

 普段、行く機会などない場所だ。

 だが探したいものがあったのだから仕方がない。

 それは肖像画作成に使うための『あるもの』だった。

 描くために必要な道具の類はアマリアが自分で持っているし、アトリエに置いてある。

 だからそれさえあれば、描くには困らない。

 しかしわざわざ自身で倉庫に出向いてまで探しに行くことにしたのは、自分で見てみないと『それ』が役立つかわからないからであった。

「ええと、こちらね。鍵……」

 フレイディにはちゃんと許可を取っていた。

 絵のために参考として見たいものがあるから、倉庫に行きたいと。

 フレイディも絵のためと聞いたからか「うん、いいよ」と軽く許可をくれた。

 それで鍵を借りてきて、やってきた次第。

 ポケットに入れていた鍵を取り出す。

 いくつか束ねてある中で、これと教えてもらったものを選んで、鍵穴に差し込む。

 鍵は少しきしむような感触がした。

 あまりひとが入ることはないらしいから、そんなものだろう。

 それでも奥まで差し込んで回すと、カチッと音がして開錠された。

 鍵が間違っていなければ、無事に開いたことにもアマリアはほっとする。

 鍵を抜き、ドアをそっと押した。

「お邪魔いたします……」

 誰もいないとはいえ、知らない部屋に入るのだ。

 小さな声で挨拶をして、中に踏み込む。
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