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仲たがい

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 その場に沈黙が落ちた。

 どうしよう、なにを言ったらいいのでしょう。

 アマリアは内心、ひやひやする感覚を覚えたのだけど、不意にその沈黙は破られた。

「関係のないものを手に取るのは、あまり褒められたことではないね」

 静かな口調で言われて、アマリアの胸の中は、今度、ひやひやどころか、ひゅっと冷たくなった。

 フレイディの口調は静かで、そして固くて冷たいとすらいえるものだった。

 内包されているのは怒りか、不快か……。

 両方かもしれない。

「も、申し訳ございません。同じ類のものとばかり……」

 アマリアは肩がすくんでしまう。

 フレイディがどんな表情をしているかも見られない。

 テーブルの上、少しだけ残ったハーブティーの水面に視線を落とした。

 こちらも固くなった声で謝る。

 でもフレイディはいつものようににこやかに許してはくれなかった。

 声は固いままだった。

「表紙を見れば、関係のないものとわかっただろう」

「……はい」

 もっと縮こまるしかなくなったアマリア。

 やはり良くなかったのだ。

 話題にしたことか、見てしまったことか、これも両方だろう。

 フレイディにとっては触れられたくないことだった。

 それはもう、明らかだった。
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