宮廷画家令嬢は契約結婚より肖像画にご執心です!~次期伯爵公の溺愛戦略~

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!

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想い出になったひと

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「それで……、新しい婚約だの、結婚だの、到底考えられなかった。そもそも一年近く、まともに生活できなかったくらいだ」

 アマリアから視線を外して、フレイディは軽くうつむくような姿勢になる。

 地面に視線を落とした。

 フィオナから聞いたことではあったけれど、本人の口から聞かされれば、余計にその傷の度合いや苦しさがダイレクトに伝わってくる。

 アマリアの胸まで痛んだ。

 喉に熱いものが込み上げそうになったくらいだ。

 ここで自分が泣いていいところではないので、なんとか呑み込んで、ただ続きを待つ。

「だから、急にエルシーとのことが蘇ってきて、動揺したんだ」

 話は元の場所へ戻ってきた。

 あのとき、アマリアが軽い気持ちで、見つけたエルシーの絵の資料について話してしまったときのこと。

 フレイディが衝撃を受けて当然だった。

 ここまでの説明をすべて聞いては、むしろあの程度で済んだのは軽いほうだろう。

 ひとによっては激高してもおかしくないことだった。
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