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1.寝て起きて異世界移転
しおりを挟む「高岡さん。そろそろ一区切りつくし、ちょっと寝ない?」
「そうですね。うん、そうしましょう」
23時50分の時計をチラリと見てから、デスクの横で寝る準備をする。まだ仕事が全然終わっていないが、少し仮眠を取らないとまずいくらい、随分と睡眠を取っていない。
横になったら、すぐに眠気がやって来て、次に起きたら森の中だった。
「なんで?これまだ夢かな、仕事が嫌すぎて森林浴の願望でもあったんだろうか」
キョロキョロと辺りを見回す。木がたくさんだ、思いっきり森の中で俺の感覚だと遭難してるように思える。疲れているのかとぼんやりしながら、体育座りをする。するとポヨンポヨンとスライムらしき水色の球体が数匹、目の前を通って行った。
「ハイキングな森林浴の夢じゃなくて、ファンタジーなのかな」
就職してから時間がなくてゲームや漫画など、学生時代に好きだったものから遠ざかっていたが、深層心理では恋しかったんだろうか。夢なんだし、ちょっと遊んでみるかと考えてスライムに向けて手のひらをかざして魔法を打ってみよう。
「ファイア!!………えええええ!?」
会社の給湯室にあるミニ冷蔵庫くらいの火の玉が飛んで行きスライムが跡形もなく消え去っていた。少し照れ臭かったので小声で言っただけで魔法が使えたので驚いた。まさか本当に使えるなんて思わなかった。夢だからなんだろうか。
呆然と魔法が出てきた手を見つめる。夢だと思っているのに炎や爆風は現実で、まさかな…と冷や汗をかく。とりあえず、同じ場所にいても仕方がないので適当に歩き始める。
しばらく歩いていると、獣の鳴き声と女性の悲鳴が聞こえてきた。
「きゃー、いやぁ、助けてっ」
声のほうに進むと赤く大きなオオカミのような動物が3匹、女性を襲おうとしていた。
「え?なんだあの生き物。イヤイヤ、まず助けないと」
さっきの様に、手のひらをオオカミもどきに向けて魔法を使う。
「ファイア!!ファイア!!ファイア!!」
助けなければと慌てるあまり何回も呪文を唱えてしまう。大きな火の玉が3つ勢いよくオオカミもどきに打つかり火柱となって焼き倒した。火は勢いよく周りにも燃え上がり森を焼き始めた。
「ぎゃあ、森に燃え移ってる。これ絶対やばいじゃん」
どうしよう、どうしようと慌てながら再び手を向ける。炎が出せたのなら水も出せるんじゃないだろうか
「う、ウォーター!!!!!」
やった。大量の水が勢いよく出た。プール施設にあるスプラッシュバケツみたいだ。バケツに水が溜め込まれてたくさん溜まったらバッシャーンと出てくるアレ。
森の火は消えたけど、辺り一面水浸しだ。
「まぁ焼け野原になるよりかはいいだろ」
「助けてくれたから文句は言えないけれど、もう少し穏便に助けて欲しかったわ」
オオカミもどきに襲われそうになっていた女性も近くにいたので、ずぶ濡れになっていた。びしょ濡れの女性は背中まである茶色の長い髪にシンプルな黒のワンピース。手には草が入ったカゴを持っていて、ぱっと見て魔女のようなスタイルをしていた。俺が知っている有名な黒ワンピース魔女より年齢は上で20代前半に見える。全身びしょ濡れなのでワンピースが体に張り付いていて、身体のラインがハッキリしてとわかってしまう。とても素晴らしいプロポーションのため、目を奪われそうになるが失礼だと思い、意識して目を逸らす。
「あ~えーと、すみません。威力の調整できなくて、怪我はありませんでしたか」
「大丈夫よ。ありがとう、レッドウルフに囲まれた時は死を覚悟したわ。こんな森の中に人がいると思わなかったから助けてくれてありがとう。…あなた装備がほとんどないけど、本当に冒険者なの?」
人に会えて嬉しいのは俺もなので今、自分に起こっていた出来事を目の前の女性に全部打ち明けた。
「なるほどね。それは【世界のイタズラ】かもしれないね。稀に別の世界から人間がやってきたりするんだよ。あなたみたいな」
「それって元の場所に帰れるんでしょうか」
「うーん、そこまで詳しくはないからわからないや、ごめんなさいね」
「いぇ、教えてくれてありがとうございます」
これは夢だと思っていたけれど、火の爆風といい水飛沫といい現実だ。俺は本当に異世界移転してしまったんだ。これからどうしよう。
途方にくれていると濡れネズミの女性が苦笑いして小声で仕方ないと言っているのが聞こえた。
「あんた行くところがないなら、私のところにおいで。あんた命の恩人だし、そんな悪いやつには見えないからね」
「いいんですか、ありがとうございます」
「とりあえず、私はセレナ。あんたの名前は?」
「俺は高岡優馬です」
「ターオカユーマか。苗字持ちなんだね。と言ってもあんたはこの世界の人間じゃないから貴族って訳じゃないだろ?」
「いい辛かったら優馬でいいです。貴族?違いますね。ここは階級があるんですか」
「色々と教えた方がいいだろうが、とりあえず家に帰ろうか。私もびしょ濡れだし」
セレナさん濡れたままだった、着ていたジャケットを渡す。セレナさんはちょっと笑って肩に羽織った。
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