異世界移転したので魔法を使いまくりたい

佐藤 すみれ

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2.店番ニート

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 セレナさんのところでお世話になってずいぶん経った。セレナさんは薬剤師をしていてあの日は薬草をとりに森まで来ていたそうだ。なかなか目当ての薬草がなくて森の奥まで入ってしまったら、あの赤いオオカミもどきことレッドウルフに遭遇してしまったらしい。

 俺が移転してしまった場所の国は王様がいて貴族がいる階級社会だし、剣と魔法もある。一攫千金を夢見て冒険者になる人間が数多くいる。

 俺はまずはこの世界に慣れろと言われて、恥ずかしながらセレナさんの家でニートのような暮らしをさせていただいている。ニートというと語弊があるか、家事手伝いかな。でも現代社会にいた俺は家事といったら家電で行っていたものがホウキや手洗いでの洗濯など、慣れないものが多くあまり役になっていない。魔法で簡単にできるものじゃないんだな。魔道具というのがあるらしいが、まだそんなに普及していないそうだ。

「今日はいい天気だな。シーツがよく乾くだろう」

「ユーマ、ちょっと奥で薬の調合しているから、何かあったら呼んでね」

「はーい、わかった」

 セレナさんとは、くだけた口調で話すようになった、丁寧に喋るのをやめろと言われてしまったからだ。それでもお世話になっているのでさん付はさせてもらっている。俺のケジメというかこだわりというか…。

 シートを伸ばして物干し竿にかける。濡れていると結構な重労働になる。洗濯機が恋しい。
 俺がこの世界に来た時の服はあまりにも目立ちすぎるので、麻で作られた簡単な服を買ってもらった。すごくファンタジーやRPGに出てくる村人って感じの服だ。衣食住を全てセレナさんに頼ってしまっている。申し訳ない。

「俺も魔法が使えるんだし、早くここに慣れて冒険者にでもなろうかなぁ」

「へー、にいちゃん冒険者になりたいの?」

 いきなり声をかけられてびっくりする。声の主は近所のパン屋さんの息子のゼンだった。ゼンは12歳くらいの少年だ。

「にいちゃん冒険者って体力がいるんだよ。家事でヘロヘロになってるにいちゃんじゃ難しいんじゃない?」

「うっ。冒険者をやっていくうちに体力だってつくだろ」

「流石に限度ってものがあるでしょ」

 ゼンは呆れた顔で言ってくる。

「それより、ゼン。今日はどうしたんだよ。薬でも必要になったのか?」

「あぁ、そうそう。火傷の薬がもうなくなっちゃったから買いに来たんだ、いつもの中位の大きさのをお願い」

「わかった。今、用意するから待ってろ」

 この辺のお店はほとんど住居とお店がつながっていて家族経営がほとんどだ。セレナさんは一人で薬局のようなお店を経営している。一人暮らしと聞いて、居候させてもらっていいのだろうかと葛藤したが、行く場所がないのでそのままお世話になっている。居住スペースとは区切られているお店に行き火傷薬を梱包する。ゼンは薬が珍しいのか、よく周りを見渡していた。お店には薬草やセレナさんが作った薬がいろいろと置いてある。

「パン作りの修行しているのか?」

 ゼンの腕には何箇所か火傷のアトがある。パンを焼くのもかまどで焼くので焼き加減を学ばなければならない。それを聞いて俺はオーブンも恋しくなった。

「そう!ちょっと今回は失敗しちゃったんだけど、次回はうまいパンを焼いてやるぜ」

「おう、楽しみにしてるよ。はい、火傷の薬。使い方はいつもと同じだからな」

 ゼンは礼をいうと笑顔で帰って行った。12歳でも見習いとして働いているんだ。俺も何かしなくちゃと焦ってしまう。

 セレナさんが薬を調合している時、俺が店番をしている。そんな頻繁にお客さんがくることがないので、ゆっくりとした時間が流れている。午後もまったりとお店のカウンターに座っていると小柄な冒険者の女性が入ってきた。

「いらっしゃいませ。何をお求めですか?」

「あれ?君、だれ。セレナはどうしたの」

「俺は最近こちらでお世話になってるユーマです。セレナさんなら今お薬を作っているので席を外しています。ご用でしたら呼んできますが…」

「あぁ、買えるのならいいんだ、呼ばなくても。また来るし。で、セレナの恋人なの?あ、傷薬あるかな、携帯タイプがいいんだけど」

「こ、恋人!?いえ、違いますっ」

 冒険者の女性はこちらの反応をうかがいながら、ふーんと信じてなさそうな返事をする。

「き、傷薬ですね、少々お待ちくださいっ」

 いじられてなんとなく恥かしくなる。携帯タイプ、携帯タイプ…とやることに集中する。セレナさんはわかりやすくまとめてくれているので、簡単に見つけられる。

「傷薬の数は何個ですか」

「あ~、そうだな、2個ちょうだい」

 部屋の奥からカタンと音が聞これて扉が開いた。セレナさんの薬の調合が終わって薬を置きにきたんだろう。

「おや、珍しい客だね。ライラ、久しぶり」

「あ、セレナ、久しぶり。今回はちょっと遠くまで行っていたから帰ってくるの大変だったよ。でもねランクが上がったの~。なんとBランクになりました」

「おめでとう。ソロでBランクなんてすごいじゃないか」

「え!?ソロでBランクなんですか!?」

 小柄の女性なので勝手に、後方支援の回復とか魔法とかをしている人かと思っていた。ソロで活躍している人だなんてすごい。筋肉隆々でもないし、一体どうやって活動してるんだろう、秘訣を俺も知りたい。

「あ!あの、俺を弟子にしてください!!」


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