にくしょく青春!犬と狼編

赤田作

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7th-contact

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梅雨入りから1週間たっても、空は暗い雲に覆われていて、しばらく陽の光を浴びていない。
校舎の中はジメジメした空気が漂っていて、みんな沈んでいる。僕を除いては、だけど。
そんな中、僕のいる教室の前では、小堀さんが女の子達からの質問の嵐を受けていた。漏れ聞こえてくる話題は多分僕のことだろうか。
そうして怒涛どどうの質問タイムが終わると、いつも疲れきった様子で帰ってくる。

「大変だね─」

「りっくん」

食い気味にそう名前を呼ばれる。
うつむいているためか、表情は伺えない。

「ギュッて、して?」

そこから唐突の上目遣いに、心臓を鷲掴わしづかみにされてしまった。
こんなに可愛い生き物が存在してもいいんだろうか。顔が火照るのを感じる。
落ち着かなくてドギマギしていると、小堀さんはこちらへにじり寄ってくる。

「ちょ、ちょっと小堀さ……」

「今回だけでいいから……ダメ、かな」

ついには泣き出しそうな顔で、切実に頼み込まれる。こういった頼まれ事を断るのが、僕はめっぽう苦手だ。

「ちょっと……疲れちゃって」

光の灯らない瞳で、僕を見つめる。
そうだ、周りの目を気にする事なんてない。だって、彼女が助けを求めているんだから。

「い、いいよ」

その返事を待つ前に、僕の胸に飛び込んでいた。

                      ✲✲✲

まともに返事を聞くよりも先に、体が動いていた。彼の体は外見よりずっとしっかりしている。
りっくん、温かい。
それと、すごい心臓の音。
少し無理やりすぎただろうか。
あぁ、でも幸せ。

「大好き……」

「こ、小堀さん?!急にどうしたの?」

りっくんが慌てている。
こんな時でも、声は優しい。

「……ちょっと、疲れちゃって」

全く同じセリフを言って、強く抱き締める。りっくんはそのあいだ、静かに頭を撫でていてくれた。

「ありがとう。もう大丈夫だよ」

落ち着いてすっと離れる。見上げた顔はまだ赤らんでいる。

「ビックリしたよ」

「あはは、ごめん……」

前が暗くなった。
あれ?
今度はりっくんが、私を抱き締めていた。
はぁ……幸せ。

「……なぁ、いちゃつくのはいいんだが、場所を選んでくれませんかねぇ?」

咄嗟とっさにりっくんから離れる。
海堂さんに恥ずかしいところを見られちゃった。
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