許せなかった僕たちへ

古川ゆう

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一章

1.1 遭逢

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〇〇県〇〇市の小さな町

7月21日 正午

小学4年、1学期の終業式が無事に終了し
僕達は夏休みに入った。

夏の日差しで熱を帯びているアスファルトの上を僕達はだらだらと横並びで歩きながら帰っていた。

「なあぁぁぁ~~‼︎ 今日暑過ぎねぇか⁉︎」

清水蓮しみずれんは教科書とプリント類が入った手提げバッグを右手で振り回しながら大声で2人に言った。

蓮は、真冬に半袖半ズボンで登校してくるほど元気で血気盛んな性格だ。

喧嘩が強く、現在通っている小学校には蓮に歯向かってくる者は1人もおらず上級生をも屈服させている程だ。

正義感も強く
蓮にとって弱い者虐めなど
もってのほかである。

だが、そんな蓮にも1つだけ弱点があった。

それはあおいだ。

蓮は葵に好意を抱いている。

男には滅法強い蓮
だが、葵だけには滅法弱く

好意を悟られない様
必死に隠している。

蓮は、自分が1番偉いと思っている節があり
他の2人からは自己中心的な性格と言われている。

そんな2人はいつも蓮に振り回され
行動を共にしている。

蓮、曰く、2人を振り回している自覚は
ない…らしい。

これでも3人の中で
リーダー的な存在である。


「もー、バッグ振り回さないでよ!危ない!」

「しかも、うるさいし~、大声出さないでよね~!」

福田葵ふくだあおいは迷惑そうに
左を歩いている蓮に向かってそう言った。

左手をうちわの様にひらひらとさせ
「仕方ないでしょー、夏なんだから。」と自らを扇いだ。

葵はスタイルが良く整った顔をしており学校では1位、2位を争うほど人気が高い。

男女問わず周りにとても優しく、細い気遣いもできる。人一倍努力家で人を惹きつける魅力がある。

その姿に魅了される男子は多く
蓮もその1人だ。

未だに、複数人の男子から告白が続いているが全て断ったという噂を蓮は耳にしていた。

「もしかして…」
と思っている蓮であったが
真実は悲しいほどに残酷で、葵、曰く
彼氏がいると何かと面倒で振っただけだと
語っているのを蓮の耳には未だ入っていない。

そんな、蓮との出会いは去年の冬頃だった。

葵には2つ下の弟
あつしがいた。

淳は複数人のクラスメイトからイジメを受けていた。

当時、淳が虐められていると知り

「男が負けるな!」

「明日、姉ちゃんがやり返してやる!」

と自分の事の様に腹が立っていた葵だった。

だが、次の日、見知らぬ男の子が複数人の男子に囲まれ虐められている現場をたまたま目撃した蓮は怒り狂い歳下だろうがお構いなく蹴散らしたのだった。

蓮はその後、虐められていた男子の名前を聞くと福田淳ふくだあつしと名乗った。

蓮はその時、聞いたことのある苗字だとは思ったがまさか福田葵の弟だとは気づかなかった。

淳はその日ボロボロになった姿で家に帰り
「蓮って人に助けてもらった。」
と涙を流しながら葵に伝えた。

葵は
「まさか…」
と予感していた。

葵は次の日の早朝
他のクラスにいる蓮の元へ向かった。

この時初めて2人は会話を交わす。

葵は蓮に対し
「ねえ、昨日さ、男の子助けた?」
真面目な顔で葵は聞いた。

すると蓮は

「あんな事する奴ら絶対許せんからなぁ。」

「あいつ、あの時泣いてなかったし、淳の勝ちだなぁ。俺は何もしてないよ。」

教室の窓から外を見て蓮は言った。

「ありがとう、友達になろう。」
葵は蓮に言葉を返した。

「え⁉︎待って⁉︎」

「淳っておまえの弟⁉︎」

蓮はそう言うと座っていた椅子から転げ落ち
その時理解したのだった。

それからというもの淳はその後虐められる事も無くなり平和に暮らしていた。

その件もあって、葵は蓮に感謝しており
一緒に遊ぶようになっていったのだった。


「もう、2人共仕方ないなぁ~、近くの駄菓子屋でアイスでも買って帰る?」
葵の右を歩いている渡辺結人わたなべゆいとは涼しそうな顔で2人に言った。

結人は温厚な性格であり、平和を好む。

何事も冷静に考え、見極める事ができる。

眼鏡をかけていて真面目男子なのだ。

頭が非常に良く学校のテストでは
いつも高得点を叩き出している。

結人、曰く「あまり勉強は好きじゃない。」
と語っている。

蓮とは同じクラスではあったが会話はあまりしなかった。

けれどそんなある日の事。

結人が教室で黙々と次のテストに向け予習をしていた時の事だった。

「渡辺~ちょっといい?」
蓮は困った顔で結人の苗字を呼んだ。

「なに?」
視線をノートから蓮の方へ移した。

蓮は自らの教科書を開き解らないところを指刺しながら
「あのさ、ごめん、ここ教えて。」
申し訳なさそうに聞いてきた。

「いいよ~、ここはね~。こうでね。」
結人はすらすらと問題を蓮に分かり易い様に伝えた。

「渡辺、すげえなああああ‼︎」

「めっっちゃわかりやすい‼︎」

結人は素直にその言葉が嬉しかったのだ。

誰かに認められた気がしたから。

目をキラキラとさせ半ば強引に「友達になってくれ‼︎」そう言って蓮は結人の手を握った。

それから2人は話すようになり
遊ぶようにもなった。

葵も結人と直ぐに意気投合し、クラスは違えど3人で毎日の登下校を一緒に帰るようになったのだ。


「で、駄菓子屋行くの?」
結人はもう一度2人に尋ねた。

蓮と葵は顔を見合わせ満面の笑みで
結人の方を見て頷いてきた。

「この関係がずっと続けば良い。」

3人は、そう思いながら駄菓子屋へと歩みを進めるのだった。
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